一件落着?
その後、2時間ぐらいして家に戻った。
その露出狂はまだ泣き崩れたまんまだった。
「さっさと泣きやめよ!」と突っ込みたくなったが、それをグッと抑えておれは自分の部屋に閉じこもった。
それからさらに4時間してやっと落ち着いたのか、おれの部屋に顔を出して来た。
目はパンパンに腫れており、服も涙を拭ったせいかびしょびしょになっていた。
床が濡れてないことを祈ろう。
それにしても6時間は泣きすぎじゃないか?
露出狂は「迷惑をかけてしまうので帰ります」と言ったが、もうすでにかなりの迷惑を被っているし、目もまともに開いてなく足もふらついているのでこれから帰らせるのは怖く、リビングで寝させることにした。
そんな感じでほとんどおれの出る幕はなく、大変な1日が終わった。
次の日、おれは起きてリビングに向かうと露出狂は正座をして座っていた。
「おはようございます」
「おはよう」
おれが部屋から出るなり、そう挨拶をしてくる露出狂。
昨日のように泣いていたり、暗い表情なわけではなく吹っ切れたかのような笑顔だった。
「起きるのかなり遅いですね」
「そうだな。あまり寝る時間が短すぎると授業中に眠くなるからな。ギリギリまで睡眠は取るようにしている」
確かに家を出る30分前に起きるというのは一人暮らしでは遅い方なのか。
でも、実際これで間に合っているし、1日色々なことがあるので相当疲れるから、これくらいがちょうどいいのだ。
「でも、今から学校の準備や朝食、弁当を作っていては学校に間に合わなくなりませんか?」
「ギリギリだが、弁当は昨日のおかずを詰めるだけだし、朝食はパンで済ませてるから大丈夫だ」
朝食なんてパンで十分だし、それより睡眠を取る方が大事だ。
「それじゃ体に良くありませんよ」
「お前が気にするようなことではねぇよ」
「いえ、ヤンキー君にはいろいろお世話になったので、少しながら恩返しとして朝食を作っても大丈夫ですか?」
「そうか、まぁ作ってくれるのは正直ありがてぇから頼んでもいいか?」
確かに朝からパンというのはそこまで体にいいわけではない。
作ってくれるというのであれば、好意に甘えようかなと思った。
そういうと、露出狂は台所へと向かい、冷蔵庫を漁り始めた。
取り出してはこれを使っていいかこれは消費期限切れているから捨てろと色々なことを言っていた。
まさかの意外と家庭的なのかもしれない。
料理は少しはできるが詳しいわけではなかったのですべて任せることにした。
いく準備をしながら、料理を作っている様子を見たが、かなり手際が良かった。
当然、出て来た料理もうまかった。
「かなりうめぇな」
「よかったです」
「いやぁ、今までの様子から料理も下手なような印象を持っていたが外れるもんだな」
「満足してくれたなら嬉しいです」
実際、そこまで美味しいと最初は期待していなかった。
毎日パンばっかりだと良くないからという理由で頼んだだけなのだが、手つきを見ているうちにすごいと思うようになったのだ。
「おう。それでこれからどうするつもりだ?もう露出しない約束したんだろ」
この人は露出に生きがいを感じていたのだ。
それをしないでちゃんと守れるのか、これから何を生きがいとして生きるのかが気になったのだ。
「それは普通にサラリーマンなんで仕事しながら、あのシャッター街を盛り上げるためになんかできたらなって思ってます」
「そうか、わかった。余計なことを聞いて悪かった」
しかし、その回答におれの心配は無用だったなと思った。
「いえ、ヤンキー君が僕を疑うのは別におかしいことではありませんから」
「まぁ、頑張ってな。あのシャッター街が賑わうことを楽しみにしてるぞ」
シャッター街が賑わっていたのは小学生の時だ。
それから、暴力団の動きが活発になり、シャッター街にも人が寄り付かなくなってしまったのだ。
一緒に両親とそこであった祭りに行ったのを思い出して、俺はそう言った。
「ありがとうございます。じゃあ、あまり長居しても良くないのでそろそろ私は帰ります」
「そうか」
「今日はシャッター街にどうすればいいか考えるために一通りもう一度見てこようかなって思ってます」
「まぁ、頑張れよ。出会いがどうであれちゃんとした目標ができたならおれは応援する。もう道を誤るなよ」
俺はこの露出狂に頑張って欲しいと思っている。
最初はあんな出会いからだったが、改心してこれからこの街をよくしようと努力しようとしている。
そんな姿に俺は少しすごいなと思ってしまった。
「その時はまた唯華ちゃんに会いに来ますね」
「その時は必ずおれを通せよ」
「もちろんです。」
そういうと、露出狂、いやたかしさんはお辞儀をしながら俺の家を出て行った。
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