初遅刻のアドバイザー


俺は高校になって、初めて一人で昼休みを過ごしていた。


それは康平が学校に来ていなかったからだ。


俺は結局1時間くらい遅刻してついたのだが、来ていないことにすごく驚いた。


あいつは俺の知っている限り、遅刻、欠席は一回もしたことがない。


だから、俺は高校一年の初日に康平に話しかけられてから昼休みは毎日一緒に話していた。


もちろん、今日も遅刻や露出狂のことを話そうと思って、学校に着いたのだが、そこに康平はいなかった。


先生曰く、遅刻か欠席かの連絡も入れてないらしい。


先生もかなり驚いているようだった。

俺の時と違って。


康平がいないから、一人で机に座り前を向いて、静かに食べていた。


いつもは話しながら食べているからか、なんか味がそっけなく感じた。


いや、それはいつも学校に来ている康平がいきなり来なくなったことに対する心配からかもしれない。


そういえば、昨日はかなり眠そうにしていたから、倒れたのかもしれないな。


本当に大丈夫なのだろうか?


そんなことを考えていると、教室の後ろの扉がガラガラと開く音が聞こえた。


俺がそっちに目線を飛ばすと、そこには汗を流して、肩で息をしている康平がいた。


康平はその状態で俺の方へと向かってきた。


「大丈夫か?」


俺はかなり疲れている様子の康平にそう聞いた。


「はぁ、はぁ、かなり疲れた。もう立ってたくない」


康平は胸を押さえて、息を整えるとそう答えた。


「そうか、それにしても珍しいな。お前が遅刻なんて。どうかしたのか?」


「ただ寝坊」


「寝坊で着く時間が12時半ってどんだけ寝てんだよ」


寝坊したとしても普通10時くらいには学校に来るような気がするが……


「しょうがないだろ。疲れてたんだよ」


「まぁ、体は大事だからな。休息をしっかり取れよ」


12時なるまで寝てるということはそんだけ疲れてたんだろう。


そんな康平にはしっかり休むということを覚えてほしいものである。


そう思っている俺に向けられる康平の視線は若干睨んでいた。


「あぁ、俺は今疲れてるから休息取りたいんだが、さっきから邪魔してくる奴がいるんだ」


「誰のことだ?」


「君に決まってんだろ。さっさと席どけよ」


俺の座ってた席は康平の席だった。


忘れてた。だから、ずっと座りたいって言ってたのに立っていたのか


「わりぃ、まじで忘れてた」


そう言って俺は慌てて席から退くと、康平はどすっと座り机に体を任せた。


「はぁ、冷房がついた教室に椅子、もう最高すぎる」


「最近寝不足ばっかじゃねぇか。本当に大丈夫なのか?」


昨日、今日そしてその前からも眠そうにしていた。


ただ、ゲームとかで寝不足になっているだけならいいのだが…


「大丈夫だって。少し忙しいだけ」


「本当か?」


「まじだって」


「なんかあったらいつでも相談しろよ。俺もお前にはお世話になってるからな」


いつも、俺の愚痴や文句に嫌な顔もせずにどうした方がいいかなど言ってくれる康平には本当に感謝している。


その恩返しをしたいという気持ちは本当だ。


「わかったよ」


その回答に俺は満足した。


「それにしても、お前も俺みたいに無断遅刻するようになったのかと驚いたぞ」


「流石に君みたいに遅刻常習犯にはならないよ」


「だが、わざとじゃないから実質セーフみたいなもんだろ」


別に俺が悪いわけではないし、セーフだよな?


俺がそういうと康平は飽きた顔をして、ため息を吐いた。


「そんなわけないだろ。ていうか、今日もまた遅刻したのか?」


「当たり前だ」


俺は胸を張ってそう答えた。


「なんでそんなことで胸張ってんの?君、悪いことだっていう自覚ある?いやないからセーフみたいなことを言ったのか」


「いや、悪いことだって自覚はあるが、唯華が何をしてくるかわからないから対策のしようがねぇじゃねぇか」


遅刻が悪いことだってのはわかってるし、それによって大学になりそうなのもわかっているが、唯花が何するのかがわからない以上俺にはどうすることをできない。


「じゃあ、学校に浮く時間早くすればいいじゃないか」


「唯華が朝大変じゃないか」


とは言ったものの、理由はめんどくさいからだ。


なんで、遅刻しないために学校に行く時間を早めないといけないんだ。


「おい、絶対めんどくさいなと思っただろ」


「なんでわかったんだ?エスパーか?」


康平に当てられて、俺はびっくりした。


「そんな顔してたらわかるに決まってんだろ。ていうか、改善する気ないじゃん」


「ないな」


俺ってそんなにわかりやすいか?


まぁ、でも改善する気がないのは本当だ。


康平はそれにまた呆れたような顔をした。


「で、今日は何かあったの?」


そして、ため息をまた吐くとこう聞いてきた。


「そうなんだよ。昨日、今日めっちゃやばいことがあったんだよ」


それに俺は昨日今日あったことを伝えて、昼休みが終わるまで話し続けた。

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