裸が恥ずかしいならスク水!?

その次の日、俺はいつもの場所で唯華を待っていた。


いつもなら、もう唯華はついていて、なんか変なことをしているはずだが、今日はまだついていなかった。


どうせ変なことをしているから、着くのが遅れているんだろうと思い待っていたが、全然来ない。


「風邪でも引いたのか?流石にこれ以上は待てないぞ」


もうすでに待ってから、30分以上経っていた。


今から、走ってぎりぎり、学校に着くくらいの時間だ。


「まさか、昨日のお返しのつもりか?」


昨日、置いて行こうといさしたことに腹を立てて、同じようなことをしたのだろうか?


それともただの風邪なのだろうか。


どっちかはわからないが、放課後にあの女子たちに聞けばいいかと思い、俺は学校に向かって走り出した。


しばらく走っていると、前に人影が見えた。


「小学生か?いや、こんな時間にいるわけがないか」


それは昨日に比べてはかなり小さかったが、こんな時間でのんびりしていては確実に遅刻するだろう。


だんだん近づくにつれて、その人の様子が明らかになっていく。


小さい体、白くて細い手足、サラサラした髪に綺麗で緩やかな体のライン。


それはスク水を着た唯華だった。


「お前、なんて格好をしてるんだよ!」


「あ、ゆいとおそい!ちがうみちからいったのかとおもった!」


声で俺がきたことに気づくと怒った様子で近づいてきた。


「そんなのどうでもいい!どうしてそんな格好してるんだよ」


「だってゆいとがきのうすきっていってたもん」


「言ってねぇし、言ってたとしてもするなよ!」


多分、昨日露出狂が聞いてきた、裸で興奮するかどうかのことをいっているのだろう。


ろくなことにならねぇな。やっぱり、唯華とあの露出狂を合わせるべきじゃなかったんだ。


今日も唯華に言わずに断るべきもしれないな。


「どうかわいい?すきになった?」


「いいから、さっさと服を着ろ!」


そんなことを考えている俺とは違って唯華は能天気にそうなことを言ってくる。


「いやだ。ゆいとがかわいいっていうまでふくをきない!」


「めんどくせぇ」


そんな付き合いあての男女みたいなことを。


そんなことを思ったが、唯華が期待してした目で俺を見てくるし、いつまで絶対に服を着ないだろう。


「はい、かわいいかわいい」


「てきとうじゃだめ!」


「唯華はそんな格好しなくても、かわいいから服を着てくれ」


俺は少し恥ずかしかったが、唯華に服を着てもらうために勇気を出した。


「えへへ、わかった」


そんな俺を見て満足したのか、唯華は満足そうにスク水の上から服を羽織った。


「で、なんで水着を着て、道の真ん中に突っ立ってだんだよ」


俺は少し落ち着きを取り戻して、もう一度そう聞いた。


「だから、きのうゆいとがすきっていってたもん」


「だからってなんで水着を着てんだよ」


「だって、しらないひとにはだかみられるの、はずかしいもん」


「そう言うことじゃねぇ!」


大体、女子なら水着でも羞恥心感じろよ。


「ゆいと、はだかのほうがよかった?」


「唯華!いいか、よく聞け、俺にそんな趣味はない。裸とか水着とかに見て興奮したりしない。だから、するな」


ここははっきり言っとかないと、これ以上続けてしまう可能性がある。


ここはダメだとはっきり教えるべきだ。


「えー」


「えー、じゃない!わかったか!」


「じゃあ、わたしのいうことをいっこきく!」


「もう、それでいいからそんな格好をしないでくれ。誰かに見られたら、今度こそ逮捕される」


こんなところを見られたら、タダでは済まないのは確実だ。


そんな思いから、俺は唯華の言ったことを適当に許可してしまった。


しかし、その言葉を聞いた唯華は両手をあげて、

「やったーー!さくせんせいこう!」

と、喜んだ。


「おい、ちょっと待て。その作戦誰が考えた?」


俺はその喜びようを見て、察した。


「いえない。ひみつってやくそくしたもん」


「どうせ、あのひとだろ」


「お、おかあさんじゃないよ」 


噛んでるし、目は泳いでいる。


確実に黒だって言うか、わかりやすすぎる。


「お前のバレバレな嘘に騙されるわけないだろ。それにこんなことを考えるのはあの人以外にいないんだよ!」


「むむむ、バレてしまった」


「バレてしまった、じゃないんだよ。全く、毎回変な入れ知恵しやがって。おい、今度の日曜日、お前の家に行くから、お母さんに伝えおいてくれ」


これはクレームを入れるべきだ。


これ以上、エスカレートしてしまったら、何をしでかすかわからない。


その前に止めるしかないのだ。


その主な要因を。


「一緒に遊んでくれるの?」


「違う、お前のお母さんに大事な大事な話があるんだ」


「一緒に遊びたい!」


「わかった!お母さんとの話が終わったら、遊ぶから」


「やったーー!」


また、両手をあげて、喜ぶ唯華。


そんな唯華を見て、俺は疑問に思った。


まだ、両手をあげた時に脇は見えるし、ジャンプした時は太ももが見える。


よく考えたら、まだ服を着てねぇじゃねぇか!


「おい、早く服を着ろよ」


「?ふくきてるよ」


「ちげえよ、ズボンとかちゃんと着る服はどこにあるんだよ」


「それはね、ゆいとにむりやりきせられないようにいえにおいてきた!」


「……それなら、プールの授業が終わったあとどうするんだ?」


「あ、」


しまったと言うような顔をした唯華を見て俺はため息をついた。


いつもだ、いつもこうやって、なんやかんやで遅刻してしまうのだ。


最近の遅刻率は俺がトップかもしれない。


「おい!何やってんだよ。ただでさえ遅刻しそうなんだぞ!」


「だってゆいとがいつもじゃましてくるもん」


「俺のせいにするなよ!」


「それにきょうはゆいとがくるのおそかったんだもん」


「あーもう!言い争ってる場合じゃねぇ!唯華、急いで戻るぞ!」


俺は唯華を抱っこして、唯華の家まで猛ダッシュした。


急いで学校まで向かったが、はなから時間ぎりぎりだったのもあり、当然間に合うわけがなかった。

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