己の弱さと向き合う時

どうする?」


 あかりさんは俺の方を向いて確認してきたのに対し、俺はだまったまま、首を縦に振った。


 ここで逃げてはいかないような気がしたのだ。


 行動はともかくおっさんの言ってることは間違ってはいないのだ。


「そうか、じゃぁ言っていいぞ。その代わり変なことを言ったら強制終了だからな」


「わかった。まず、一つ目はお前は人のせいにしすぎだ。逃げたい、怖い、そう思うのは当然だ。別にそれを我慢しろなんて言うことは言わない。だからと言って、それを人のためだからって、人のせいにするのは違う。自分の行動に責任を持て。

 二つ目は失敗してもいいことを知れ。さっき逃げてもいいとは言ったが、逃げすぎも良くない。逃げは結局は何も残らないんだ。現状維持にしかならないんだ。状況を変えたかったら、自分で行動するしか方法はない。失敗だってするが、それで失敗したから終わりじゃない。失敗してもそれから挽回すればいいだけじゃないか。お前はまだ若いんだ。何でもできる。だから、時には思い切りも大事だ。失敗な次につながる大切な経験となる。お前だって今まで何度もつまづいてきたんだろ。それはいらない経験だったのか?それがあってのお前だろ。じゃあ、これからだってそうだ。まずは逃げる前に行動しろ。

 そして、最後は自分のことを見つめ直せ。お前はあまりにも言動がチグハグすぎる。お前は何がしたいんだ?何が欲しいんだ?そして、何を失いたくないんだ?それをもう一度考え直せ。他人のためだなんだかと言う奴は多いが結局一番大事なのは自分の気持ちだ。自分の気持ちも大事にできない奴が他の奴の気持ちを大切にできるわけがない。お前は今何がしたいと思っている!逃げることか?違うだろ!もう散々逃げたんだ。次こそは行動に移せ。わかったな。」


「わかり、ました。」


「ならいい。」


「じゃあ、もういいか。行くぞ。」


「私がヤンキーとロリとのカップルができるきっかけとなったのはとても喜ばしいことだ。だが、ヤンキー!さっきは私は言ったはずだ。失敗しても挽回のチャンスはいくらでもあると。のんびりしてたら、私に唯華ちゃんを取られるかもしれないと言うことを忘れるな。」


「お前はどうせ今からどうせ逮捕されるから、チャンスはないぞ」


「バカ言うな。俺は誘拐の未遂犯だ。大した、罪にはならない。すぐに舞い戻って唯華ちゃんを手に入れてみせるさ。今度は正攻法でな。同じ失敗なしないさ。わかったな!これが失敗から学ぶということだ!」


「はいはい、余計なことは言うな。さっさと行くぞ。」


 そう言って、あかりさんはそのおっさんを連れて行った。




 俺はそれから、学校へ一人で向かった。一人で学校に行ったのは唯華が小学校に通い始めてから初めてだった。


 静かな道を静かに歩いていく。それは寂しいものだった。


「俺がしたいようにか」





 学校についてからはいつも通りだった。


「流石に三日連続で校則違反は不味くねぇか?」


「まじでかなりやばいかもしれない」


 俺はあのあとおっさんから言われたことを考えている途中で学校つきたいかないなと遠回りを繰り返してしまった結果、遅刻してしまった。


 これは完全に自業自得だ。


「ストーカーと色、いや、考え事してて、その間に学校つきたくねぇなと思って、遠回りしてたら遅刻したわ。」


 ストーカーと色々あったからと言おうとしたが、おっさんに人のせいにするなと言う言葉を思い出し、言い直した。


 俺は結構こう言うことが多かったのかもしれねぇな。


「バカじゃねぇの?」


「これに関してはまじで言い返せねぇわ」


 呆れた様子で言う康平に俺は項垂れながらそう言った。


「まぁ、お前も色々あって大変なんだろ?ゆっくり考えたい時はあるからその気持ちはわかるぞ。でも、流石に明日もそれしたらなんか学校に言われるぞ。」


「流石に明日は大丈夫だろ」


 流石に明日まで遅刻したら流石にやばいな。


「なら、いいけどな。流石にお前がいなくなったら、学校つまらなくなるからな。」


「お前…」


「ちょうどいいネタ製造機が無くなるのは辛いからな。」


「さぁ、そう言うことだろうなとは思った。」


「実際にお前がいるおかげで学校楽しいと思えるようになったのは本当だぞ。辞めたくないと思うほどにな」


「そうか、ありがとうな」


 微妙な沈黙の時間が続いたが、康平は俺の顔を見てこんなことを言い出した。


「それにしても昨日に比べて顔色が良くなってるな。なんかあったのか?」


「しらねぇ、たくさん寝たからじゃないか。あと、ストーカー逮捕したからかもしれねぇ」


 俺は鏡とか基本的に見ない派なので、わからないがそんなに違うのだろうか。


「まじで?よかったじゃん」


「いやでも、すぐ牢屋に入れられずに出てくる可能性があるらしい。」


 肩を叩いて喜んでくれる康平を払いのけ、そう言った。


「そうなのか」


「でも、悪い人そうではなかったんだよな」


「犯罪犯す奴に悪くない奴なんていないだろ」


「それはそうだわ」


「まぁ、一件落着したなら、よかったな!安心したぞ」


 康平は乗り出していた体を元に戻し、ホッとしたかの様子をした。


「まだ、全部は終わってないんだよなぁ」


「あぁ、唯華ちゃんのことか。そうか、どうするか決心ついたのか?」


「あぁ」


 決心はついた。放課後どういうふうにすれば今までのようにならないかも自分になりに考えたつもりだ。


「じゃあ、頑張ってこいよ」


「ありがとうな」


 仲間からの最大のエールを受けて、俺は先に戻るのだった。

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