再び登場!ストーカー(強化ver)
翌朝何とか気持ちを切り替えて、家をいつもより10分ほど早く出た。
それは昨日、ベットに転がっていたらいつのまにか寝ていたため早起きしたからというの理由もあるが、唯華のことを一人にしたくなかったため早めに行って、待ち伏せをしようと思ったからである。
昨日は年上らしい行動ができなかったから、今日は少しでも挽回しようという、考えももちろんある。
少し早歩きで向かって、やっといつもの集合場所みたいなところが見えるところまでやってきた。
何とか唯華が来る前に間に合ったかと思ったが、俺は待ち合わせの場所を見て足を止めた。
それはいつも唯華がある待ち合わせ場所に何か大きい四角いものが動いていたからだ。
駆け足で近づいてみると、そこにはかなり大きい段ボールを引きずっている唯華がいた。
なにをやっているのかは意味不明だが、とりあえず唯華の身に何も起きていないことに安心し、意味不明な唯華の行動を監視しながらスピードを落として近づいて行った。
すると、唯華は俺に気づくことがなく、その段ボールに入っていった。
俺はため息をついて、また変なことをしてる唯華にあきれていると、ちょうど曲がり角から昨日のおっさんが出てきて段ボールを持ち上げた。
そして、まわりをキョロキョロし始めると、少し離れていたが、きれいに俺と目が合った。
おっさんは目が合ったとおもうと、その段ボールを持ったまま全速力で走りだした。
「・・・・・・ちょっと待てやー!」
あまりの流れに俺は一瞬動くのが遅れてしまったが、連れ去られたのが唯華だということに気づき、俺も全速力でおっさんを追いかけた。
おっさんは唯華を抱えているためか、日ごろの運動不足のせいかはわからないが走るスピードが遅かったため、すぐに追いつくことができた。
「てめえ、さらっと誘拐してるんだ!」
「ゆ、誘拐とはなんだ言いがかりはやめろ」
追いつかれたことに気づいたおっさんはお化け屋敷にいるかのように肩を震わせながら、後ろを振り返ってそういった。
「この後にも及んで言い訳するきか?流石に言い逃れできんぞ」
「知らんもんは知らん」
「じゃあ、その手に持っている段ボールは何だ」
「こ、これは…」
「その中に唯華が入っていくのを見たから拾っていったんだろ」
おっさんを追い詰めるつもりで少し口調を強くしてそういうと、おっさんは段ボールを横に回転させてある一面を見せてきた。
「ち、違う。段ボールに拾ってくださいと書かれていたから、ネコか犬の動物かなと思ったんだ」
そこには子供が書いたようなつたない字で{拾ってください}と書いてあった。
なんでそんなことをかいてんだよ。俺は見慣れているからよくわかるがその字は明らかに唯華の書いた字であった。
「じゃあ、とりあえずおろして中身を見てみろ」
「いやに決まってんだろ」
「なんでだよ」
「俺の言ったとおりに動物が入っていたら、逃げるかもしれないだろう。」
その言葉自体なんか怪しさマックスなんだけどなぁ。
中に唯華がいることはわかっているために強気で出るのだが、あからさまな言い訳で拒否をしてくる。
無理やり奪ってもいいのだがそれで抵抗されたり、落したりしたほうが危ないため、頑張って説得するしかないのだ。
「大体、重さでわかるだろ。人と動物の見わけもつかないわけがないんだよ」
「唯華ちゃんは軽いから、犬と間違う可能性も全然あるに決まってんだろ」
「唯華ちゃん呼び気持ち悪いから今すぐやめろ!っていうか、なんで唯華の重さをお前が知ってんだよ。もうはなから嘘ついてることがバレバレなんだよ。素直に認めろ!」
「……っ!」
おじさんは焦った様子で頭をフル回転させていることが目に見えてわかる。
俺はおっさんが自爆したことで若干の心の余裕ができ、完全に追い詰めようと次の一言を言葉にした。
「鳴き声でわかるだろ、にゃーんとか一言も聞こえてないだろ。もう、おっさんがわかってて誘拐しようとしたことはわかってんだよ。さっさと唯華を下ろせ!!」
少しドラマの刑事っぽくいったのだが、その言葉を聞いた瞬間、おっさんはあきらめるのでもなくうなだれるのでもなく、救いの光が差し込んだかのように顔をいきなり合わせこう言葉を放った。
「もし、人だったらそれ言助けを呼ぶ声がするだろ。それがしないってことはこれはただの物だったってことだな。それなら重いのも納得がいくだろ。」
……それはそうだ。今の説得は失敗だったな。せっかく少し格好つけたのに……。
少し恥ずかしく思ったが今はそれどころじゃない。しかし、説得は無理そうなのであきらめて無理やりとることにした。
「いいからさっさとよこせ」
「キャッ」
「おい」
無理やりとったため、段ボールが大きく揺れ、中から唯華が驚いた声が聞こえてきた。
「おい、何をしている」
「物なんだったら、別に開けてもいいだろ!」
俺はゆっくりと地面に段ボールを置き、急いで開けると怖くてか震えている唯華がいた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
手を差し伸べて体を起こしながらそう聞くと、唯華はこくりとうなずいてそう答えた。
「怖かったよな」
「うんん、びっくりしたけど、もうだいじょうぶ。」
「そうか、唯華は強いなあ」
唯華の表情から少し強がっているのが分かった。そりゃそうだ。位段ボールの中に入ったらいきなり動き出して、挙句の果てに言い合いも聞こえてくるのだから。小学一年生からしたら、すごく怖いだろう。自業自得と言えば、自業自得なのだが……。
俺は唯華の頭をポンポンとしながらそう言うと立ち上がって、おっさんのほうに向きなおると、おっさんはうらやましそうな顔で俺のことを見ていた。
「で、中にいたのは唯華だったわけだが、次はどういう言い訳をするつもりだ。場合によっては今度こそ警察に突き出すぞ。」
それを無視して、おれは颯いった。すると、おっさんはまた慌てだした。
「まて、俺は知らなかっただけだ。それにおれが誘拐しようとした証拠もない。するだけ無駄だ。」
「はぁ?俺と唯華が誘拐されそうになったって言ったら捕まるに決まってるだろ。」
「いや、結局はそれ以外の証拠もない。ここら辺には防犯カメラもないんだ。そんなんで簡単に逮捕できるわけがないんだよ。」
確かにここは住宅街ではあるが、防犯カメラがあるわけでもないし、ほかに目撃者がいるわけでもない。おっさんの方が正しいだろう。それに
「警察は結局最後は役立たずだもんな。」
「そうだ。だから通報したって面倒なことになるだ。俺もわざとじゃないんだ。今回のことはなかったことにしよう。」
「その言い訳が通用するはずがないだろ」
当たり前だ。いくら面倒なことになろうがそれでストーカーを逮捕できるなら十分だ。そう思ってその言葉を一蹴したのだが
「お前だって昨日は大変だったはずだ。それなのに今日もまた警察沙汰になったっていう話が学校側に届いたら、今度こそ大変なことになるかもしれないぞ。それに唯華ちゃんだってそうだ。それで停学処分とかなったら、このお兄ちゃんと一緒に登下校できなくなるぞ。そんなリスクを払ってまで逮捕できるかもわからない俺を通報するのか」
とおっさんはさらに言ってきた。
その言葉に少しだけ悩んだ後、俺はそれを聞くことにした。
「……わかった。その代わり次はないからな」
「わかったならそれでいい、じゃあ行くからな」
おっさんはそういうと足早に去っていった。
「はやと?」
俺の顔が少し険しくなっていたからが俺の裾を唯華が引っ張って心配そうに俺の顔を見上げていた。
俺はそれに気づくとしゃがんで、目を合わせた。
「大丈夫だ。もう、唯華が怖い思いをすることはないからな。」
頭を撫でながらそう言った。
「うん、ありがとう!」
「あ、あと昨日はすまなかった。唯華が昨日困ってたのに逃げ出したりして。」
「だいじょうぶ!きょうのはやとはかっこよかった」
「そうか、ありがとうな」
それから、俺は少し気持ちを切り替えて、しゃがみ目線を合わせてそういうと、唯華は満面の笑みでそう言った。
「じゃあ、行くか。早くいかないと二日連続で遅刻するぞ。」
「うん!」
そして、手をつないで学校へと向かった。
学校について、唯華と別れた後、俺は校門の横でスマホを開いた。
「もう怖がらせないと約束したからにはきっちりと終わらせないとな」
そう呟いて、俺はある人に電話をかけた。
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