悩みとロリコンなアドバイザー
「ああ…ひどい目にあった。」
「あははははは。腹が痛い。お前誘拐犯と間違えられたのかよ。まあ、確かにお前誘拐しそうな見た目してるもんな。」
「うるせえ。」
あの後、学校についてからもいろいろあって大変だった。
まず、あかりさんは制服に書いてある名前を見て、俺が小学生を誘拐しようとしていたことを学校に伝えてしまっていたのだろう。
そのせいで朝早くから学校で俺を謹慎処分にするかが話し合われていたらしい。
まあ、俺が通っている学校が自称進学校だから、普段からヤンキーのような恰好で過ごしている俺に対し、学校側からも邪魔と思われていたのかもしれない。
処罰はあかりさんが訂正の電話を入れてくれたおかげで無くなった。いや、もともと言えばあの人のせいで謹慎処分になりかけたのだが……。
ていうか、なんで事実を確認せず学校に連絡入れたんだよ、あのくそ警官!
いい警官と思ってしまったが勘違いだったようだ。
さらに俺の担任のくそ担任が俺の遅刻理由をクラスメイトに言ってしまったため、学校に来てすぐ冷たい視線にさらされた。
別にそういう目には慣れているのだが、理由もわからずにそういう視線を浴びたためかなり戸惑った。
そんな中今話している赤岩康平だけは来てすぐに話しかけてくれた。
こいつは俺と同じであまり人に関わろうとしないのだが、なぜか、入学初日にいきなり話しかけてきてからは暇な時に話すような仲になった。
そうはいっても授業以外はほとんど暇だから、休み時間はずっと話していることになる。
しかし、康平はヤンキーみたいな格好はしていないし、顔もいいから俺と過ごすのではなくて、スクールカースト上位組といる方がアイツのためになると思うのだが、わざわざ人の都合に首を突っ込もうとは思わない。
まあ、こいつがいなかったら俺は学校でずっと一人で暇だったわけだからな。なんやかんやで感謝している。
「しかも、その唯華ちゃんはナイフまで持ってたんだろ?よく、つかまらずに済んだな。俺が警官だったら、見た目だけで事情聴かずにすぐ警察署連れて行くぞ。」
俺もつかまらずに済んだことに関しては本当に運が良かったとは思う。
事情を聴かずに見た目で判断するような頑固な警官じゃなかったことや唯華が律儀にナイフに名前を書いていたことが功を奏した。
それにもし、唯華が本に影響されて本物のナイフを持ってきていたら、絶対つかまっていただろう。いや、その前に俺が死んでいたか……。
俺は考えることをやめた。
「とりあえず、お前は絶対に警察にだけはなるなよ。」
「もし、警察になったら、真っ先に唯人を捕まえに行かないとな。」
「なんでだよ、俺何も悪いことしてないじゃねえか」
「え?小さい女の子をたぶらかしといてそんなことよく言えるね」
「ちげえよ、俺はたぶらかしてねえ、あいつがなんかなついてきてるだけだ。其れになんでそれだけで俺が罰せられないといけないんだよ」
「それはもちろん俺もロリコンだからに決まってんじゃん」
初耳だ。いや、本当に初耳なんだが?
「は?マジで?ていうか、さらっと俺もロリコン扱いにすんな」
「そのためにこの高校に来たまである、ほら、隣に小学校あるじゃん。いや~、ここからの眺めは最高だねえ。」
窓から昼休みになり運動場で騒いでいる小学生たちのほうを眺めて、そんなことを言う康平。
「キモッ」
「だから、お前も自分に正直になれよ。自分はロリコンだって認めると楽になるぞ」
振り返り、康平は俺の肩をたたいてそんなことを言ってきた。俺はすかさず立ち上がり、逃げることにした。
「俺はちょっとトイレ行ってくる」
「ま、まさか」
俺がこの場から、いち早く逃げるためにそういうと、康平はわざとらしくなにかを察したような態度をとった。
「ちげえよ」
「まだ、何も言ってないけど?」
「チッ」
「ははは、お前といたら、話が尽きないなぁ。なんかいつもいろいろなことに巻き込まれてるし。」
「俺は疲れるだけなんだが」
俺はため息を吐きながら、席に戻った。
「お前のせいで話それたじゃねえか」
「気にしないで大丈夫だぞ」
「それをお前が言うのはおかしいだろ!はぁ、で結局どうしたらいいと思う?」
俺はやっと本題に入れると思い、真面目は顔でそう問いかけた。
「それは唯華ちゃんのおかしな行動に対して?それともストーカーに対して?」
康平は温真剣さを感じ取ったのか俺の向かいの席に座って、そんなことを聞いてくる。
「両方といいたいところだが、今回のところはストーカーについてだな」
「もう解決したんだろ?そんなに気にすることか?」
「それはそうなんだが、実はな…」
俺はまた同じ人にストーカーされる可能性があることを伝えた。
「ん~、どうしたらいいも何も、まだ何も起きてないから何とも言えないな」
「そうだよな……」
あのおっさんがまたストーカーをしてくると確証があるわけではない。予想だけでどうこうするのはさすがに厳しいか。
「ま、心配なら明日から送り迎えしっかりしてあげたらどうだ?それだけでもストーカーは近づきにくくなると思うぞ。特にお前の見た目は怖いし」
「確かに、何かあったとしてもすぐに俺が対処すればいいだけだもんな」
確かにその案はとてもいいなと思って、康平の顔を見ると、康平は少し驚いた顔をしていたが、俺の顔を見るとニヤニヤしだした。
「いや~」
「うざっ」
「まだ何も言ってないんだけど?」
「顔がうざかった」
「そんなこと言うなよ~。俺はただ唯華ちゃんのこと大事に思ってるんだなって感心しただけなのに」
腕を組んで、そんなことを言う康平。誰目線なんだよ。
「なんでそうなるんだよ」
「えーだって、いっつもダルそうな表情しかしてないお前がそんな真剣な表情考えているところ見たの初めてだぞ。だから、お前がそんなに唯華ちゃんのことを大事に思ってたのかと思ってな。」
「ちげえよ。ただおれの知り合いの娘ってだけだ。そんな奴に何かあったら、胸糞悪いだろ?」
「はいはい、そういうことにしておいてあげますか」
もうすぐ昼休みが終わり、チャイムが鳴る時間だということに気が付いた康平はそう言って、前を向くと、もう一度後ろを振り返った。
「あ~あと。お前が不審者に勘違いされないようにだけはしろよ。」
「なんでだ?」
「不審者が出たのなら、小学校も対策してるはずだろ?そんな中見た目悪いお前が行ってみろ、明らか不審者と勘違いされて通報されるぞ。」
「さすがに考えすぎだろ。それに勘違いされても誤解だっていえばいいだけだ。」
「そう簡単にいけばいいんだけどな」
「大丈夫だって。あ、アドバイスサンキューな」
そう言って、俺は自分の席に戻った。
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