【短編】国民達への見せしめとして、教会の牢に閉じ込められている七大罪のうちの一人の強欲は暴食に恋をする

ほしくず かなた

第1話

この国には殺人や奴隷所持よりも絶対にしてはいけない大罪がある。


それは傲慢、憤怒、嫉妬、色欲、怠惰、そして、暴食、強欲といういわゆる七大罪と言われるものだ。


教会によって、その大罪を犯していると判断されたものは国民の前で拷問が行われ、散々痛ぶったあと、火炙りで処刑される。


しかし、それによって秩序が守られ繁栄している国でもあった。


しかし、法をおかするものが後をたたず、毎年何百人もの人が処刑されてきた。


数年前までは。





あまりにも多すぎる処刑者に教皇は王様にある提案をしたのだ。


この国で一番七大罪を犯している人を名前を取り上げ、それぞれ教会の牢に入れ、見せ物にしようということだ。


王様はそれを許諾。


結果、それは効果覿面で、その年から大罪を犯すものは激減したのだ。


もちろん、それをよく思わない人がいた。


それは牢に入れられた七人の罪人だ。


各それぞれが己の長所を生かし、牢を脱出。そして反乱を起こしたのだ。


たった七人により、騎士団の大隊が一つ壊滅する羽目となった。


王様と教皇はこれに頭を悩ませ、最後は交渉で和解することとなった。


その内容は牢に入ってもらう代わりにそれぞれにあった待遇をするというものだった。


暴食には食事を与え続け、強欲には書物、憤怒には掃除道具などなどだ。


しかし、これは王様にとってもいい条件であった。


七人がより欲に忠実となることでより良い見せしめとなると思ったのだ。


こうして、和解が成立し、今へと至る。





「いやぁ、それにしてもここは快適でいいっすね」


そう、ゴロゴロしながらいうのは怠惰だ。


「昔、暮らしてた場所よりも快適かもしれないっす。」


怠惰は昔は王様の側近として、暮らしていた。


そして、何か問題や不具合が起きた時は王様へアドバイスをしたりなどをしていたが、非常に気まぐれで、1日のほとんどを寝て過ごし、起きても部屋から出て来ず、挙げ句の果てにアドバイスをもらうために起こしたら、暴れ出す始末。


それらの言動により怠惰として、牢に入れられたということだ。


「それには同意だ。ここなら、何でも書物が手に入るし、欲しいものは何でもくれるからな。」


それに対し、こう答えはのは俺だ。


俺は強欲と呼ばれている。


俺は国でも有数の大きさを誇る商会の息子だった。


しかし、あまりの頭の良さ、欲への忠実さ、そして何より欲を実現する行動力の高さから、国への反逆をする可能性があると牢に入れられたらしい。


全然、そんなつもりはなかったのだが…


「そうですか〜。私はお相手さんが怠惰さんと傲慢さんしかいなくて残念です〜。あ、強欲さんも興味を持ったらいつでもいいですよ〜」


そうやって、話しながらも、傲慢に奉仕している女性は色欲。


色欲は国一番の娼婦と言われていた。しかし、たくさんの男と関係を持ち、彼女自身に溺れさせられていた。


それによって、その男達は全員処刑され、それを起こした張本人は牢に入れられたのだった。


ちなみに俺は色欲の奉仕を受けたことがない。


ああいうのはタイプではないのだ。


「そんなことを言うなよ。せっかく俺が相手してやってるんだ。素直にアンアン言っとけ」


そう言って、色欲を背後から、突きまくるのは傲慢だ。


彼は国一番の学校で生徒会長となり、学校の生徒、教員、学園長までも洗脳し、支配した。


それを王様は国を乗っ取られるかもしれないと危惧し、牢に入れたのだった。


「どうせ、貧乳の私なんか色欲さんに到底及びませんよーだ。」


そういって、傲慢の後ろで体育座りして腹かいているのが嫉妬。


この中では十二歳と一番幼い。


しかし、彼女は幼少期から他人に嫉妬しては見るだけでその能力を模倣し、数々の英雄と呼ばれる人を破った。


王様はそのポテンシャルの高さを恐れたのだった。


ちなみに嫉妬は俺にテストで同点まで迫ったやつだ。


小さいのに末恐ろしいやつである。


「まあまあ、落ち着いてください。ほら嫉妬ちゃんこれ食べたら、元気出ますよ。ほら、あーん」


そういって、嫉妬に食べ物を食べさせようとしているのは暴食。


彼女はかつて伯爵家の娘であり、そんな華奢な体にどうやって入るかわからない程の量の食べ物を毎日食べていた。


それによりただでさえ食糧難だった伯爵の領地の領民の生活は苦しくなり、暴食の両親は領民の反乱により殺され、原因である娘は投獄されることとなった。


「みんな呑気なこと言ってますけどね、それは誰のおかげで成り立ってると思ってるんです?掃除をしてる私のおかげですからね。感謝してくださいよ!あ!食べかすを落とすな!」


そう言って、あっちこっちをバタバタと掃除しているのは憤怒。


七大罪の掃除担当である。


辺境の地の宿の娘であった。しかし、治安の悪さに憤りを感じ、暴れ、計五十人以上もの人に暴行。


騎士団が到達するも、騎士団でさえも手が出せず、それがトラウマとなった人も少なくなかったのだ。


そして、怒りがおさまった後の寝込みも襲い何とか、逮捕することができたのだ。


正直、俺以外の三人の中では一番まともなやつだろう。


「それにしても、相変わらずっすね。こんなん見て何が楽しいんでしょうね。せっかくの休日なんだから、寝たらいいのに」


そう言って、怠惰が目線を向けた先は七大罪を見に来た人たちだ。


「まったくだ、集中して本を読むこともできない。しかし、それが契約なのだからしょうがないだろう。」


防音のガラスを使っているものだから、音は聞こえないが、目線は感じる。


しかし、正直俺が集中できない理由は目線ではない。


正直、目線は一ヶ月くらいで慣れた。


それでは、集中できない理由は


「まあまあ、美味しいものたくさん食べれるからいいじゃないですか」


とやめてと暴れてる嫉妬を膝に乗せてよしよししている彼女が原因だ。


俺は今まで欲しいものは何でも手に入れてきた。


書物も食べ物も一位も。


だから、俺が本気を出した時に負けたことは一度もなかったのだ。


しかし、暴食に初めて負けた。


それは食事量だ。


俺は暴食が食べた量の半分も食べることができなかったのだ。


常に一番がよかった俺は全力で胃を大きくする練習をしたり、腹が減るように運動ばっかした時もあった。


しかし、やっぱり半分も届くことができなかった。


そこからだった、意識し始めたのは。


「もう離してください!」


その大きな嫉妬の声で俺は意識を取り戻した。


嫉妬がジタバタして、暴食の膝から飛び降りると、またさっきの場所に戻ろうとしていた。


これはチャンスだな。やっぱり、恋愛感情については恋してるやつに聞くのが一番だ。


「おい、嫉妬。こっちに来てくれないか。」


「は?何でよ、めんどくさいんだけど」


そんな文句を言いながらも、来てくれる嫉妬。


「相変わらず、トゲトゲしたことを言うくせに優しいな」


「な、何よいきなり。口説きに読んだだけなら戻るわよ」


突然、褒められたからか、嫉妬は少し照れている。


「そんなことをするわけないじゃないか。だってお前傲慢が好き、ぶへっ!」


「な、何でそのことを知ってるのよ」


俺は嫉妬から平手打ちを喰らった。


「何でってみんな知ってるんだから、俺も知ってて当然だろ?」


「み、みんな?ちょ、ちょっと強欲こっち来て」


そう言って、俺の袖を引っ張って、基本寝る時にしか使わない奥の部屋に連れてこられた。


運が良かった。こうすれば暴食に聞かれずに恋愛相談ができるな。


「み、みんなって傲慢もこのこと知っているの?」


「傲慢は知らないんじゃないか?あいつは鈍感だからな」


「そ、そうなの?なら、良かったわ」


胸を撫で下ろす嫉妬。


「告白はしないのか?」


「す、するわけないでしょ。傲慢は相手が欲しいだけで恋愛感情なんて受け付けてないわよ」


「そうか?意外とそうでもないと思うのだが」


実際、憤怒は性欲の処理こそ色欲に任せているが、それ以外の時は嫉妬に構っている。

小さい体を心配しているのとばかり思っていたのだが…


「それだけ?告白するかだけ聞きたかったのなら、帰るわよ」


「ちょっと待て、本題は別だ」


そう言って、さっさと部屋を出て行こうとする嫉妬を急いでよびとめた。


「じゃあ、さっさと言いなさいよ」


「好きな人を振り向かせるにはどうしたらいいんだ?」


めんどくさそうな顔をしながらそう聞いてきたが、質問をするとびっくりな顔を一瞬したが、その顔は興味津々な顔へと一瞬へと変わり、距離をいきなり詰めてきた。


「好きな相手って誰?憤怒?暴食?もしかして、色欲?」


一気に食いついたな。やっぱり年頃の女の子はこういう話が好きなのだろうか?


「俺は暴食だ」


「そうなの?何で?何で好きになったの?」


そういうと嫉妬はさらに目を輝かせた。


「そ、それは」


「それは?」


「あいつに食事量をまけてから、あいつに勝てるように努力してたら、いつのまにか暴食のことが気になるようになってたんだ。」


そういうと、さっきまで輝いてた嫉妬の顔から笑顔が消えた。


「え?それだけ?」


「そうだ」


「もっとなんかロマンチックなことなかったの?」


「こんな牢の中でどうすればロマンチックなことが起きるんだ?」


「捕まる前に会ってたとか」


「伯爵の娘と商会の息子と地位が違いすぎるんだが?」


伯爵家と商人では簡単に会うことはできない。それこそ、パーティーや招待された時だけだ。


「偶然、道端であったとか」


「住んでる場所も全然違うんだが?」


暴食は国の左端で俺は商会のあるど真ん中の王都に住んでいた。


傲慢や嫉妬と会うことはあっても暴食と会うことはない。


「つまんない」


「しょうがないだろ。嫉妬だってロマンチックなことがきっかけで傲慢のことが好きになったわけじゃないだろ?」


「傲慢の洗脳を真似しようとしたんだけど、真似できなくて、尾行して観察しているうちに」


「俺と似たようなことが原因じゃないか!」


ほぼ同じような気がするが、そこら辺はこだわりがあるのだろう。


「違うもん。最後はここに入れられた時に慰めてくれたからだもん」


「ん?嫉妬。もしかして、嫉妬ってちょろいのか?」


「ちょろくないもん!」


嫉妬が叫ぶと同時にドアが開く音が聞こえた。


「あら〜、面白そうな話をしているわねぇ〜」


そう言って入ってきたのは色欲だった。


「何で色欲が入ってくるのよ!」


「あら?おじゃまだったかしら」


「そんなわけがないじゃない!」


嫉妬は顔を真っ赤にしてそういうと、バタバタと部屋を出ていった。


「で、何しにきたんだ?せっかくもう少しで本題に入れそうだったのに」


「あなたが嫉妬ちゃんと一緒に部屋に入ってから、傲慢さんがソワソワし出して、楽しめなくなってしまったのよ」


なるほど、傲慢もやっぱり嫉妬のことが好きだったのか。


好きな人が男と二人で部屋に入って行ったら心配するのは当たり前か。


「なるほど、それほどまでに両思いなら、さっさと告白して付き合って仕舞えばいいのにと思うのだが」


「わたしもそう思うのだけどねぇ、二人とも奥手なのよねぇ。」


「それはお前にも原因があるのだと思うのだが」


明らかに色欲が傲慢とヤってるせいで嫉妬が自分に自信がなくなっているのはあるだろう


「だって〜怠惰さんだけとしてたら、怠惰さんに好意があるってバレちゃうかもしれないじゃない。」


え?色欲は怠惰が好きだったのか。それには気づかなかった。


「そうなのか、それなら、色欲も案外奥手じゃないのか?」


「しょうがないじゃない〜今までの人とは体の関わりしか持ったことがなかったんだもん〜」


「じゃあ、どうして色欲は怠惰のことが好きになったんだ?」


「それはねぇ。私が生きてるのは怠惰さんのおかげなの〜」


「そうなのか?」


「えぇ〜。私が処刑されそうになった時に色欲として、牢に入れたらいいって提案してくれたのよ〜そして、牢の中に怠惰さんが入ってきた時は運命かと思ったわ〜」


「そんなことがあったんだな」


こういうのをロマンチックというのかもしれない。


嫉妬が聞いたら喜びそうだな。


「そうよ〜。大体、私が体だけの関係を二人で満足できるわけがないじゃない〜」 


言われてみればそうだ。


牢に入る前は五十人以上の人と体の関係を持っていたのだ。


捕まったからと言っても、普通は二人で満足できるはずがない。


色欲なら、ガラスを割ってでも、外の人を襲うだろう。


「確かにな。じゃあ、一回脱出した時はどうして参加したんだ?今の生活に満足できてるなら、参加しなくてもよかったじゃないか。」


「そんなの怠惰さんがしようと言ったからに決まってるじゃない〜」


「確かにそうだな」


怠惰が脱出してしまえば、色欲がここにいる意味がなくなってしまう。それなら、怠惰についていくのは当たり前か。


「それに部屋が狭いっていうのと防音じゃないっていうのは気にしてたからねぇ〜」


前は本物の牢みたい感じだった。


そこにぎゅうぎゅうだったものだから、イライラはみんなマックスだっただろう。


俺は二度とあそこには戻りたくはない。


「それで〜暴食さんのことはもういいの〜?」


「知っていたのか?」


「そういうことには敏感だからねぇ〜」


「そうなのか、そうだ。俺は暴食のことが好きなんだが、どうしても振り向かせる方法が思いつかなくてだな」


嫉妬にするはずだった質問を色欲にすることにした。


色欲なら経験豊富だから、いい方法が得られるだろう


「そうなの〜。強欲さんこそ考えすぎのような感じがするのだけどねぇ」


「そうか?」


「そんなに深く考えないで、一緒に食事をしようっていうだけでもいいんじゃないかしら〜」


そうなことでいいのだろうか?


そんな疑問を抱いたが、俺はそこに関しては知識不足なので支局に従うことにした。


「わかった。試してみる」


「いいと思うわ〜。じゃあ、戻りましょうか〜」


そう言って、部屋を出るとそこには暴食、憤怒、怠惰の三人しかしなかった。


「お、おかえり。二人で何してんすか?」


「強欲さんの悩みに乗ってあげてたのよ〜」


「やったんすか?」


怪訝な顔をして聞いてくる怠惰。


「やってないわよ〜」


「ならいいっすけど」


その言葉を聞くと、怠惰の顔は普通に戻り、本を読み始めた。


「なに〜嫉妬〜?怠惰さんが嫉妬してるの〜」


「うるさいっすね」


その様子を見た色欲は察したのかちょっかいをかける。


「じゃあ〜、やらなくていいのねぇ」


「それとこれとは話が別っす」


「じゃあ〜あの部屋に行きましょうか〜」


そう言って、二人はさっきまで俺たちがいた部屋へと入っていった。


この様子を見ると、あの二人も両思いそうだな。


「そういえば、憤怒。嫉妬と傲慢はどこ行った?」


「お二人さんはさっきと違う部屋で初体験をされてますよ。嫉妬さんが告白しようとして、それを慌てて止めて自分から告白しようとしてた傲慢さんを見てて面白かったです。あんな傲慢さん始めて見ましたもん。」


「そうなのか」


嫉妬から、告白したのか。


それは少し意外だった。


嫉妬にどんな変化があったのだろうか。


「これから、部屋を二つも掃除しないといけなくなるのは大変なんですけどね。そう思うと腹が立ってきた。出てきたら、顔面にパンチしようかな」


「やめとけ大事になるぞ」


傲慢にパンチしたら、傲慢だけじゃなく、嫉妬もキレて大事になりそうだ。


「冗談なんですけどね」


そう言う憤怒に俺は気になったことを聞くことにした。


「なぁ、憤怒は好きな人がいないのか?」


「いまはいないんですよねぇ。だから、このままだとひとりぼっちになりそうなんですよ。」


「それはどんまいだな」


嫉妬と傲慢、色欲と怠惰そして俺が暴食と付き合うことができたら、憤怒は余ってしまう。


「まあ、私は白馬に乗った王子が私をこの場所から救ってくれるって信じてますから」


夢を見るような顔でそうなことを言う憤怒。


「教会の中は馬禁止だぞ」


「そんなに頭硬いとモテないですよ」


「そ、そうなのか。わかった、今度はギャグの本を取ってきてもらおう」


「そういう問題じゃないんですけどね」


そうなのか、じゃあ、どうすればいいのだろうか。


「まだ掃除をしないといけないんで、失礼しますね」


「いつもありがとうな。」


「気にしないで大丈夫です」


そう言うと、憤怒は今四人が使っていない部屋へ掃除をしに行った。


さて、これでこの部屋には暴食以外誰もいなくなった。


正確に言えば、ガラス越しにたくさんの人がいるのだが…

気にしなくていいだろう。


「一緒に食べてもいいか」


大きなテーブルに敷き詰められるように置かれている食事を片っ端から食べる暴食の横に椅子を持って行き、そう尋ねた。


「あ、強欲くん。いいですよ。」


「ありがとう」


そう言って、椅子に座ったのだが、これはどれを食べていいのだろうか?

全て美味しそうに見えるが、暴食のお気に入りとか取らないほうがいいのだろうか?

それとも半分にしたほうがいいのだろうか?

もしかしたら、そういうのは気にするタイプなのかもしれない。


ん?これはめちゃくちゃ美味しそうだな。


俺の目に一つ立派な肉料理が目に入った。


「これを食べてもいいか?」


「あ、それ私が一番好きなやつですよ!」


「そうなのか、じゃあ、別のやつにしよう」


まさか、一発で暴食のお気に入りを当ててしまうとは…


「せっかくなので食べましょうよ」


「でも、暴食が一番好きな食べ物じゃないのか?」


「だからこそですよ!好きなものを一緒に食べて、それについて会話するのが夢だったんですよ」


「そうなのか」


確かにいつも暴食は一人で黙々と食べていた。


それが好きなのだと思っていたのだが、そうではなかったのか。


「そうです!あ、それなら半分こしませんか」


「いいのか?」


「気にしないで大丈夫ですよ。」


そういうと、ナイフとフォークを使い綺麗に分けて、俺の前の皿に綺麗に乗せた。


「はい、どうぞ!」


「ありがとう、じゃあ、いただこう」


「ぶっぷー違います。いただこうじゃなくていただきますです」


暴食は手を大きく罰にして、そう言った。


「そうだな。いただきます。」


「どうぞ」


「こ、これは美味しいな」


口の中に肉汁と風味が広がった。


「そうでしょう!」


暴食は嬉しそうに胸を張った。


「良かったです。強欲さんの舌にあって」


「ごちそうさまでした。」


ちゃんと、指摘される前に挨拶をした。


「とても美味しかった。ありがとう。」


「いいえ、こちらこそ楽しかったです。」


「良かったら今度からも一緒に食べてもいいだろうか?」


「いいんですか!?一人で少し寂しかったんですよ。いつでもきてください」


「ありがとう」


こうして、暴食とこれからも一緒に食べる約束ができた。






その日の夜は王様の許可をもらって、教会は立ち入り禁止にしてもらい、牢の中で宴を開くことにした。


それは嫉妬と傲慢、怠惰、色欲のカップル記念だ。


あの後、色欲と怠惰が出てきて、付き合ったことを知った。


やりながら告白したそうだ。


何とも色欲らしいやり方だ。


言動から察していたが、やっぱり怠惰も色欲のことを好きだったらしい。




その後、嬉しそうな顔をして気を失っていた嫉妬をお姫様抱っこした傲慢が部屋から出てきた。


憤怒からある程度聞いていたが、部屋から戻った後、嫉妬は勇気を出して傲慢に告ろうとしたらしい。


それを傲慢は遮って、自分から告白させてくれと言い告白したそうだ。


「というわけで、二組のカップルを祝って乾杯!」


その掛け声と共に7つのグラスが交差する。


みんなで仲良くご飯を話しながら、ある程度食べた。


そして、俺は二人で話していた嫉妬と傲慢の元へ向かった。


「今いいか?」


「いいよ!」


「嫉妬、傲慢おめでとう。それにしても嫉妬はよく勇気出して告白しようとしたな」


まさか、告白するとは思っていなかったから、これには本当に驚いたのだ。


「強欲と話しているうちに今のままだと、傲慢を色欲に取られそうだと思ったのよ。だって、色欲が怠惰のことが好きなんて知らなかったんだもの」


「でも、そのおかげで傲慢と付き合うことができたじゃないか」


「そうだけど」


「おめでとう」


そう言って、俺はさろうとすると、嫉妬が俺を呼び止めた。


「ちょっと、待って。付き合えたのは強欲のおかげでもあるから、あの、その、ありがとう」


「それは俺も同じだ。嫉妬が告白しようとしなければ、俺も告白しなかった。俺の方からもありがとう」


傲慢もそう言った。


「どういたしまして」


俺はそう言うと、色欲と怠惰の方へと向かった。


「それにしても、珍しいな、ツンデレな嫉妬がお礼を言うなんて」


「うるさい!」


後ろから、そんな会話が聞こえたが、聞こえないふりをした。




「怠惰、色欲おめでとう」


「あら〜ありがとう〜」


「ありがとうっす」


祝福をすると二人は笑顔でお礼を言ってきた。


「いつかは付き合うと思ってたが、今日とは思ってなかったから、驚いた」


「そうなの〜?強欲さんのおかげよ〜ありがとう〜」


「どういたしましてだ」


「それで聞きたいのだけど、暴食さんとはどうなったのかしら〜」


色欲は部屋での嫉妬みたいに興味津々と言った様子で聞いてきた。


「これから毎日一緒にご飯を食べる約束をしたくらいだ」


「あら〜これはまた時間の問題かしら〜」


「そうだと嬉しいのだが」


「大丈夫よ〜少しずつ距離を詰めていけばいいだけよ〜」


「そうっす。強欲ならいけるっす」


「ありがとう」


「こちらこそありがとうっす」

「こちらこそありがとう〜」


そう言って、俺はまた違うところに向かった。


それは憤怒のところだ。






「すまないな、仕事を増やしてしまって」


今回の宴の準備は少し手伝ったが、ほとんど憤怒がしたものだった。


そして、多分片付けもほとんどしてくれるのだろう。


「本当ですよ。でも、今日だけは許します。特別な日ですしね。」


「そうか、ありがとう」


「その代わりに私が王子様と結婚することになったら、これ以上に祝ってもらいますからね」


「約束しよう」


その時は本当に全力で六人で祝いたいものだな。


「それなら、早く暴食ちゃんのところに向かってあげてください。まだかまだかと待ち侘びてますよ」


「そうなのか、ありがとう。すぐに向かおう」


「頑張ってください」


「ありがとう」


エールを受け、俺はやっと暴食のところへ向かった。





暴食の元につくと同時に俺はまず謝った。


「すまなかったな暴食の食事を奪ってしまって」


「いえいえ、こうやって七人でテーブルを囲んで食事するのは初めてなので嬉しいです。」


「そうか、良かった。


「みなさん、笑顔で楽しそうです。」


「暴食は会話に参加しなくてもいいのか?」


俺は心配してそう言った。


暴食はさっき話した時は、ご飯の話をしたいと言っていた。


しかし、今は一人でみんなのことを見ながら食べている。


本当にそれでいいのだろうか?


「今はせっかくだから、カップル水入らずの時間を過ごして欲しいんです。」


「そうか」


しかし、暴食は優しい表情でそう答えた。


「それにこれからもで食事についての会話は話せると思うので」


「それなら、明日から七人で一緒にご飯食べるようにお願いしてくるか?」


そうしたら、毎日暴食が大好きな食事がより楽しくなるだろうと思ったのだ。


「あ、いや、それは」


しかし、あまり暴食の反応は良くなかった。


「嫌なのか?」


「嫌ではないんですけど、せっかくだから強欲さんと二人で食べる時間も欲しいなと思いまして」


恥ずかしそうな表情を見て、俺は我慢ができなくなった。


好きだ。暴食のことが好きだ。その気持ちを伝えたくなった。


「そうか、俺もそう思っていたところだ」


「そ、そうなんですか?」


「だ、だって俺は暴食のことが好きだからだ」


言うタイミングはここしかないと思った。


「え?」


「暴食が美味しそうにご飯が食べる姿が、一緒に食べる時間が好きだ。俺と付き合ってくれ」


そう言って俺は右手を差し出す。


多分、今の俺の顔は真っ赤だろう。


「え?」


周りが一気に静かになる。


その沈黙が俺をどんどん不安にさせていく。


「嫌だったか?」


心配になり、そう聞くと暴食の目からポロポロと涙が流れた


「いや、嫌じゃないくて。嬉しくて、ずっと食べてばっかりな私を好きって言ってくれて。今まで、食べてるせいで嫌われて、パパ、ママと殺されて。そんな私を好きって言ってくれて嬉しくて」


今まで我慢していたものが溢れるように涙が流れていく。


「と、いうことはもしかして」


俺はその様子を見て、暴食を守りたい。自分の命を賭けてもと決心した。


そして、暴食の答えは


「喜んで」


だった。


「やったー!」

「やったっすよ!」

「おめでとうございます」

「おめでとう〜」

「良かったな、おめでとう」


後ろから、大きな祝福を受けた。


そうして、この日にこの牢の中で3組のカップルが誕生したのだった。




〜数年後〜


俺と暴食は二人で庭のベンチの上で腰を下ろしていた。


俺たち七人は表向きは処刑され死んだことになっているが、大罪を犯し処刑された物を減らした功績を認められ、それぞれ、嫉妬と傲慢、色欲と怠惰、俺と暴食に一つずつ豪邸が与えられた。


憤怒はと言うと、宣言通り俺たちを牢から出そうと提案してくれた王子と結婚した。


そして、それが今日だったのだ。


「まさか、憤怒が宣言通りに王子と結婚するとは思わなかったな」


「そうですね。あ、もう憤怒って言っちゃダメなんですよ。ちゃんと名前があるですから」


「そうだったな」


俺たち七人はそれぞれ国王から直々に名前を与えられた。


今はその名前で呼ぶように決めているのだが、癖はなかなか抜けてくれない。


「来週は傲慢と嫉妬の結婚式だったな。」


「そして、再来週は色欲と怠惰。その次が私たちですね。」


「そうだな。まさか、結婚できるとは思ってなかったから嬉しいな」


「そうですね。あの時告白してなかったらどうなってたんでしょうね」


そういって、見つめあって笑い合った。


そして、笑いが収まると、俺はベンチからおり、片膝をついた。


ポケットから渡しそびれていたものを取り出して、両腕を前に出した。


「XXX、大好きだ、一生、隣にいてくれるか?」


「もちろんです。わたしもOOOのことが大好きです。」

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