嫉妬
「ごちそうさま。美味かったな」
リエリアと同時に食事を食べ終えた俺は、手を合わせながらそう言った。
「それもさっき言ってた感謝みたいなやつ?」
すると、リエリアが小さく首を傾げながら、そう聞いてきた。
「あぁ、そんな感じかな」
「ごちそうさま。……えへへ、こう?」
そんなリエリアの言葉に頷くと、リエリアはまたさっきみたいに俺の真似をして、そう言ってきた。
本当に可愛い。
「それじゃあ、部屋に戻って、今日はもう寝るか」
「うん」
まだちょっと寝るには早いと思うけど、いくらリエリアが強いとはいえ、今日は本当に色々あったし、リエリアも疲れてると思うしな。
……強いて言うのなら、風呂に入りたいけど、この宿には風呂なんてついてないし、しょうがない。
……いや、宿の人に言って、体を拭くものとお湯だけでも貸りるか? リエリアもこのまま寝るのは嫌かもだし、そうするか。
「すみません」
「はい、どうかいたしましたか?」
そう思った俺は、たまたま近くにいたさっきの可愛い看板娘の子に話しかけた。
この子はウェイトレスっぽいし、ちょっと話しかける人が違うかもしれないけど、この子しか近くにいなかったんだよ。今はそんなに忙しくもなさそうだし、多分大丈夫だろ。
「何か体をっーー」
何か体を拭くものとお湯を貸してほしい。
そう言おうとしたところで、突然リエリアが俺の背中にギュッ、と少し痛いくらいに抱きついてきた。
「急にどうしたんだ? リエリア」
内心で驚きつつも、俺はリエリアにそう聞いた。
「ふふ、仲がよろしいんですね」
すると、目の前の可愛いウェイトレスの人が微笑みながらそう言ってくると同時に、リエリアの抱きついてくる力が更に強くなった。
痛い。いや、リエリアになら全然いいんだけど、なんでリエリアがこうなってるのかが理由が全く分からないんだけど。
と言うか、まさか目の前のウェイトレスは俺がとんでもない力で抱きしめられているとは思ってもないんだろうな。
多分、あなたがこの力で抱きしめられたら余裕で壊れますよ。
「えぇ、まぁ、そうですね。……それでなんですけど、何か体を拭くものとお湯を貸していただけませんか?」
「はい、もちろん構いませんよ。他の宿ではともかく、うちの宿ではそちらはサービスとなっておりますので」
そうなのか。風呂は無いけど、そういう意味ではこの宿は当たりだったのかもな。
あんまりお金に余裕がある訳でもないしな。使わないに越したことはない。
「ありがとうございます」
そして、お湯と拭くものを貸りた俺は、一言お礼を言って、まだ俺が痛いくらいに抱きついてきてるリエリアと一緒に借りた部屋に戻った。
「他にも人は居たのに、なんであの人だったの?」
すると、部屋に戻るなりリエリアが小さくそう聞いてきた。
「なんでって、普通に一番近かったからだよ」
「……んぅー、ノルンは私のなのに」
俺がそう言うと、リエリアは不満そうにそう言ってくる。
なにその「んぅー」って、めっちゃ可愛いんだけど。
「ほんとに近くにいたから、ってだけなんだよね?」
「あぁ、当たり前だろ? それ以上でも以下でもないよ」
「うん。分かった。信じる」
リエリアが何を思ってたのかは分からないけど、もう抱きついてくるリエリアの力は弱まっていて、もう全く痛くは無かった。
「それじゃあ、体を拭いてから、一緒に寝ようか」
「うん」
そう言って、俺はリエリアにお湯と拭くものを渡しながら、リエリアに背中を向けた。
俺もさっさと拭こう。
推しの悪役に殺されるモブに転生した〜推しに殺されるのなら本望なので特に抵抗なんて考えずに、俺が殺されるまで推しを守ることだけを考えます〜 シャルねる @neru3656
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