もっと前に知りたかったわ
「君たち、あっちの森の方から来たみたいだったけど、大丈夫なのかい? そもそも、二人だけで森を渡って来たのかい?」
街に入るために門の所に近づいて行くと、門番の人が俺たちに向かってそう聞いてきた。
まぁ、俺たちはまだ十四歳で子供だから、まさか俺たちがあの森の火事を起こしたとは普通思わないよな。
「……は、はい、森が燃えてるのに気がついて、すぐに走り出したのでなんとか無事に森を抜けられました」
そうして多分心配をしてきているであろう門番に嘘をつくのは心苦しかったけど、俺はそう言った。
ただ、俺は自分で思ってたより演技力がなかったみたいでかなり棒読みになってしまっていた。
……マジか。俺って演技とか下手だったんだな。……もっと前に知りたかったわ。
「そうか。大変だったね。事情は聞かないから、取り敢えず街の中に入りな。今回は特別に入場料金は僕が払っておくから」
俺が内心でそう思って後悔していると、この門番の人がどこか抜けているのか、下手な演技が逆に本当っぽさを生んだのかは分からないが、門番の人はそう言って微笑みかけてきた。
……いい人なんだとは思うけど、門番的にはどうなんだ? それ。
いや、俺たち的にはありがたいし、嬉しいんだけどさ。
「あ、ありがとうございます」
そう思いながらも、俺はぎこちない笑顔を浮かべて、門番の人に対してお礼を言った。
門番としてはどうかと思うけど、この世界に来てリエリア以外の優しさに触れたのなんて初めてだから、普通に嬉しかったし。
「行く宛てはあるんだよね?」
「はい、大丈夫です」
「だったら、気をつけてね。その子のことも守ってあげるんだよ」
「はい、ありがとうございました」
そんなこんなで街の中に入れてもらった俺たちは門番の人にお礼を言いながら、門番の人と別れた。
ちなみになんだけど、リエリアは人見知りな俺の妹ってことになってる。
……いや、だってさ、門番の人がリエリアに話しかけてもリエリアが無視するんだもん。
人見知りってことにするしかないだろ。……実際、間違っては無いと思うしな。仕方ないこととはいえ、俺と初めてあった時だってあんな感じだったし。
「リエリア、大丈夫か?」
「うん。ノルンが居るから、大丈夫」
別に今じゃなくてもいいけど、いつかは俺以外の人とも喋れるようになって欲しいな。
自分の言うのもなんだけど、優しくしてくれるのが俺しかいなかった環境に居たんだから、本当に少しづつでいいけど。
「ノルン」
「ん?」
「ずっと一緒にいてね」
俺がそんなことを内心で考えていると、リエリアが当然そんなことを言ってきた。
「あぁ、当たり前だろ。リエリアが望む限り、ずっと一緒に居るよ」
「うんっ」
突然の事だったけど、俺は思ったことをそのままリエリアに向かって言った。
すると、リエリアは嬉しそうに微笑みながら、頷いてくれた。
「さっさと食料を買いに行って、今日は宿でも借りようか」
「うん。分かった」
そして、俺はリエリアにそう言った。
このまま食料を買ってすぐに街を出ても良かったんだけど、あの火事で犠牲がでてないかが気になるから、俺はそう言った。
明日……最低でも明後日になれば炎も流石に魔法使いたちによって消されてるだろうし、情報も回ってくるはずだしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます