あれは盗賊達がやったことだし
辺り一体が火の海の中、俺はリエリアの頭を撫でていた。
うん。我ながらおかしな状況だと思うんだけど、リエリアが可愛いんだから、しょうがないよな。
……しょうがないんだけど、現実逃避はやめてどうしようか考えないとな。
……まず、鎮火は100パーセント無理だから、逃げることを考えよう。
いや、この辺にもし村だったりがあるんだとしたら、悪いとは思うぞ? でも、もう無理なんだから、仕方ないだろ。
俺の優先はリエリアなんだし、仕方ない仕方ない。
「リエリア、今度からは、森で炎の魔法を使うのはやめような。もちろん、使わなくてもどうにかなるって時だけだけど」
そう思いながらも、そう言った。
すると、リエリアは俺に頭を撫でられながらも、頷いてくれた。
よし……それで、どうしようか。
いや、リエリアが頷いてくれたし、次からはこんなことは無いだろうけど、問題なのは今なんだよ。
……やっぱ逃げるしかないか。
この辺……と言うか、ここには盗賊が居たんだし、こいつらがやったってことになるだろ。……多分。俺は知らん。
「リエリア、炎がこれ以上燃え広がる前に、さっさとここを離れようか」
「うん。分かった」
俺は心の中でこれから犠牲になってしまうかもしれない人達に謝りながら、リエリアと一緒にその場を離れた。
リエリアの炎は俺には効かないから、離れること自体は簡単だった。
……一応言っておくけど、俺が強いから炎が効かないわけじゃない。
ただ、リエリアが天才で、俺に炎が効かないように出してくれてるだけだ。……うん。俺が強いから、とかだったら嬉しかったんだけど、モブの現実なんてそんなもんだ。もう割り切ってるよ。……嘘です。ほんとはリエリアより強くなってリエリアを守りたいです。
そんなことを思いながらも、リエリアと雑談をしながらあの放火してしまった方向から離れていると、街が見えてきた。
……近くに街があったのは食料が買えるし嬉しいんだけど、燃やしてしまった場所から近いのは普通に不味くないか? ……いや、あれは盗賊達がやったことだし、別にいいのか。……うん。大丈夫大丈夫。
「よ、よし、行こうかリエリア」
「うんっ」
そう思いながら俺がそう言うと、リエリアは頷いてくれた。
そして、街の近くに歩いて行くと、何やら騎士……いや、兵士か? まぁどっちでもいいんだけど、そのどっちか……もしくはどっちもが街に来ている商人だったりに色々と何かを聞いて回っていた。
「何かあったのかな?」
リエリアが可愛らしくそう聞いてきた。
俺は何も答えずに、黙って後ろを振り向いた。
すると、さっきリエリアが盗賊を燃やした場所あたりから煙が上がっていて、なんなら燃え広がった炎も見えていた。
……絶対あれが原因だろ。
「ノルン?」
俺が何も答えなかったからか、元凶のリエリアは小さく首を傾げながら、そう言ってきた。
可愛い。
可愛いんだけど、あなたが原因ですよ? ……まぁ、俺も共犯みたいなもんだけどな。
「俺たちは森が燃えてることなんて知らなかった。そういうことにして、さっさと街に行こうか」
まぁ、とはいえ、俺とリエリアがあそこにいた証拠なんて残してないし、あの盗賊達がやったとでも思ってくれるだろ。
もしそう思ってくれなかったとしても、魔物が気まぐれで森を燃やしたとでも思ってくれるはずだしな。
「うん。分かった」
リエリアが頷いてくれたのを確認して、俺たちは今度こそ、街の中に入るために門番の所に近づいて行った。
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