なんで盗賊?
少し……いや、かなり名残惜しいけど、リエリアの膝から俺は体を起こして、一緒に北に向かってゆっくりと歩いていた。急ぐ理由もないしな。
ちなみになんだけど、リエリアの服にはまだ少し返り血が付いている。
いや、俺も着替えさせようと思ったよ? でも、普通に服が無かったんだよ。
全部焼け焦げてたりして、少し返り血が付いたくらいの服の方がマシだったんだよ。
「取り敢えず、村か街を探さないとな」
俺は呟くようにそう言った。
服と同じで、食料だったりも全部ダメになってたから、早くそのどっちかを見つけて売ってもらわないと普通に餓死するしな。
幸いお金は少しある。
リエリアの魔法が強すぎて、お金もほぼ焦げてたり溶けてたりして使い物にならなかったけど、少しは無事なお金もあったからな。良かったよ、本当に。……もしお金が無かったら、かなり出来ることが絞られちまったからな。
「ノルンが昔教えてくれた盗賊? って奴らじゃダメなの?」
リエリアが可愛らしくそう聞いてきたけど、なんで盗賊?
リエリアは可愛いから絶対狙われると思って、危ない存在だって教えたよな? ……まぁ、今のリエリアなら余裕で殲滅できるだろうけど、なんで今盗賊の話が出てくるんだ?
「えっと、なんで盗賊なんだ?」
もしかして何か勘違いしてたりするか? 残念なことに、盗賊は何かを奪ってくることはあっても何かを与えてくれることは無いぞ。
もしそんな勘違いをしているのなら、教えないとダメだから、俺はそれを確かめるためにリエリアにそう聞いた。
「盗賊っていっぱい奪ったお宝とか食料を溜め込んでるんでしょ? だったら、盗賊を全員殺してそれを奪えばいいじゃない」
…………めっちゃ物騒!?
思わず声を出しそうになったんだけど、よく我慢したな俺!
いや、確かに昔俺は盗賊を人と思うなとは言ったけど、そんな考えが出るくらいに人と思ってなかったのかよ。……いや、盗賊だし別にいいけどさ。
と言うか、家の人達を殺してるんだし、人と思ってたとしても今更怖気付くわけないか。
……あれ? リエリアって今日初めて人を殺したんだよな? 心とか、大丈夫か? 痛めてないか?
「リエリア、大丈夫か?」
今更ながらに、その考えに思い至った俺はそう聞いた。
「え? 盗賊じゃダメだった?」
すると、リエリアは確かめるようにしてそう聞いてきた。
「いや、そうじゃない。もし盗賊が襲ってくるようなら、それでも全然いい。そうじゃなくて、リエリアは今日初めて、その、人を殺したわけだろ? 大丈夫か?」
「……心配、してくれたの?」
ちょっと遅すぎると思った俺はその後ろめたさから少しリエリアから目を逸らしながら、小さく頷いた。
「えへへ、私はノルンが居てくれたら……ノルンさえ居てくれれば何が無くなろうと、何を失おうと全然大丈夫だよ! 心配してくれてありがとね」
リエリアはそう言って俺に抱きついてくる。
「……そうか、良かった」
リエリアに抱きつかれながら、それはそれでどうなんだ? と内心で思いながらも俺はそう言った。
リエリアにそれだけ思ってくれてるって考えれば、全然嬉しいしな。
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