Episode04
021:傾けた平行線
この宇宙では、地球とは違い大きく分けて三つの勢力に分かれる。
一つ目が所属している独立勢力。大部分のパイロットや星系を管理する派閥がこれに含まれる。
二つ目は連邦勢力。人々の居住域が地球のみだったころからある勢力で、最大勢力を持つ。が、現在はその規模を縮小されている。らしい。
最後の三つめは帝国勢力。最大の軍事力を持つ勢力で、今までは連邦の陰に隠れるくらいの勢力だったが――、
「四月、七日。任命記念パレードは十日だから……、」
アルカナリア・ステーションのマーケットの管理人に見せてもらったニュース。それは、ディーデリヒ・ハイネン――私の兄が、帝国で重要な地位に着いたニュースだった。
あの後、慌てて機体に戻ると二通のメッセージが機体に入っていた。そのうちの一つに匿名で『任命記念パレードの十日までに家に戻るように』、と。大方、家に呼び戻そうとしている父親からのメッセージだろう。
もう一通は、とメッセージを確認する手が止まる。すぐに読んで、それを削除したのち、貰ったばかりの機体を発進させてアルカナリア・ステーションを出ることにした。……ここまで乗ってきた小型の戦闘機は、アルカナリア・ステーションに置いておいてもらうことにして。
「フィニア・ステーション、目的地設定完了」
フィニア・ステーション。それは、ガルア星系という帝国領域内にある星系の、大型第二宇宙ステーション。そして、
「気は乗らないけど。帰る、か」
そして私の――生まれ故郷だ。
アルカナリア・ステーションがあるルミノウス星系からガルア星系へはおおよそ十五回、星系間を移動しなければならない。
燃料が問題だが、そこはこの中型の輸送機に取り付けた燃料補給用の装置――恒星から出るガスを燃料用に補給、変換する装置の出番である。これがあれば、ガスが出ている恒星から燃料が補給できる仕組みになっている。
「少しだけ、操縦が大変だけどな」
アルブムの頭を撫で、操縦に集中する。
≪星間航行ニ入リマス。ジャンプ、マデ……三、二、一、≫
* * *
操縦席に座りながら、メッセージ欄と、近くにいる機体の信号一覧を眺める。
「テオドールは行ったか」
メッセージに返信がないということは、指示通りに削除したのだろうか。気になるところではあるが、とメッセージ欄を見ると一通新着が来ていた。
手首だけを動かして、メッセージを開いて確認する。
「……はぁ」
小さいため息が漏れるが、ここは操縦席。一人の空間。誰も立ち入らない空間だからこそ、呟きが漏れていく。
「テオドールも兄弟の任命パレードだからって、帰らなくていいと思うんだけどなぁ……」
しかも、今回の任命パレードはあの、ディーデリヒだ。任務で近くに――関わっていたからこそ、知っている。
「ま、俺は任務に専念しますかね」
――特別大きな長期的な任務も、終盤に差し掛かっている今。確実に任務を遂行するためにも。
……行先を、ガルア星系に合わせて、ステーションを飛び立った。
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