020:解決と一報

 その後、アルブム以外のクローン猫について聞かれ、ありのままを説明した後、一度報告も兼ねてアルカナリア・ステーションに向かおうと、機体に乗った時だった。

 エンジンを入れると、機体に流れるエラー音声。なんだろうとメッセージを見てみると、『重量オーバー』の文字が。

 おかしいと思い、積み荷を参照してみると工業用のダイヤモンドが規定重量以上積まれていた。


「は? え?」


 数十分ぶりに目を白黒させていると、さらに機体にメッセージが入る。今度は、アルヴィさんだった。


≪若造――テオドールだったか。そいつはここ数日掘っていた余りものだ。アルカナリアの奴らに良く言ってくれよ!≫


 はっはっはっ! と笑う、アルヴィさんにため息をつきながらも、「すみません、」と返事を返す。


「重量オーバーです……」

≪あ? ……本当か? ちょっと減らしてやれー≫


 規定重量内に収まるように、荷物を調整してもらって、機体を発進させた。重力圏を抜けるように、超高速モードに入れば目的のアルカナリア・ステーションまではすぐそこだ。


「エンジン停止よし、着艦申請よし」


 アルカナリア・ステーションに戻り、マーケットへと出向く。相変わらず、人であふれていた。そのうちの一人が、私に気づき、声を掛けてくる。


「あれ、昨日売ってくれたにーちゃんじゃねぇか」


 その人が、「例の兄ちゃん帰ってきたぞ!」と叫ぶと、大きな歓声が沸き上がる。マーケットの管理人が、こちらへとかき分けてきていた。


「どうだった! ボーフォル・ベースキャンプの奴らはよ!」

「実は――」


 事をまとめて話すと、マーケットの管理人は頭を抱えていた。


「こりゃ、上にも話通しておかねぇとな。……まあ、なにはともあれ解決だ! ありがとよ!」

「あと、ボーフォル・ベースキャンプの皆さんから工業用のダイヤモンドをいただいてきました」


 売りたい旨を話せば、我先にと買い注文が入る。それを見て、マーケットの管理人は声を大きくした。


「お前らまて!! こんだけ大量の工業用ダイヤモンドとなると、金額がでかすぎる。……そうだ、」


 ――船と、その装備と。で、払うってのはどうだ?

 その言葉に、願ってもない話だがいいのかと聞くと、マーケットの管理人は豪快に笑う。


「いいってことよ! 多額の金が行き来すればそれだけ俺の管理も大変だ! 何の船がいいか決まってるか?」

「それでは……動きやすい、中型の輸送機が欲しいんです」


 それから装備の話に移り、必要なものを書き留めていくマーケットの管理人。

 すべて要望を伝え終わった後、人だかりに向かってマーケットの管理人が叫ぶ。


「おめぇら! 動きやすい、中型の輸送機をご所望だ! 装備に関しては一覧をまとめて貼っておくから、確認するように!」


 ……なんだが、大変なことになったな。そう思わざるを得なかった。



 * * *



 数日後、超特急で納品された、船は完璧以外の言葉がなかった。

 動きやすい中型の輸送機。装備は、最低限の武装と、シールド生成器、燃料補給用の装置。あとは倉庫にしてくれていた。


「ありがとうございます、なんてお礼を言っていいやら」


 そう、マーケットの管理人に言えば首を横に振られる。


「お礼を言うのはこっちだ。まさか、ボーフォル・ベースキャンプのやつらが監禁されてたなんてな」


 礼を言われれば、ありがたく受け取るしかない。新機体の認証――パイロットが機体を盗まれないようにする鍵の登録――も終わったところで、再度マーケットの管理人に話しかけられた。


「そういえば、お前さん今日のニュース見たか?」

「今日の? まだ見ていませんが……」


 そう言うと無言でニュース画面が出ているタブレットを渡されて、訝しげに覗き見る。


「! ……船、ありがとうございました。やることができたので、私はこれで」

「おう。……気をつけろよ」


 ――帝国、ディーデリヒ・ハイネンを、第十五軍隊軍隊長に任命。帝国領域のさらなる拡張を目指す――。

 ……投げ出されたタブレットにはそう、記してあった。

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