Episode03
013:ボーフォル・ベースキャンプ
ルミノウス星系は、複数の惑星を持つ巨大な星系だ。
目的地のボーフォル・ベースキャンプは恒星から数えて五番目の惑星にある。話を聞いた限りでは、加工施設ということだった。
……と、ここで一つ問題がある。
「地上基地か……」
ボーフォル・ベースキャンプは惑星にある、地上基地。今までの宇宙ステーションとは違い、重力が非常に強い。それでも、地球という惑星に比べたらはるかに弱い重力らしいのだが。
そうこう言っている間に、機体は第五惑星の近くまで来ていた。考えを放棄し、両手で操縦桿を握る。
始めは重力圏。重力と推力に従って、機体は徐々に高度を下げていく。この時点では目標となる地点――今回はボーフォル・ベースキャンプの少し上空を中心に捉えておく。
次に入るのは大気圏。ここに入ると、操縦の制御が効かなくなる。その中でも成層圏を出るまでは急降下し続けるので、エンジンを切っておく必要がある。
成層圏を出てしまえば――、
「エンジン停止よし、着艦申請よし……」
――目の前が、ボーフォル・ベースキャンプだ。
小型のパッドに停まり機体を降りる。重力に従って地表にゆっくりと立てば、複数のコンテナの様な施設が見えた。
「イラッシャイ、イラッシャイ。ゴヨウケン。ハ、ナンデショウ?」
上空を見上げれば、四角い小さなロボットが待機していた。どうやら、ボーフォル・ベースキャンプの専用案内ロボットらしい。私は、案内ロボットに要件を告げる。
「マクファーレン……アントニー・マクファーレンさんにお届け物です」
「カシコマリマシタ。ヨウケン、ウケツケマシタ。アントニー・マクファーレン、ノ、ショザイ、カクニンチュウ……」
その言葉の後数分待っていると、「コチラデス」と案内を始めたロボットの後ろをついていく。周囲を見たところ、一番大きな建物に通されそうだ。
「コチラノ、ニカイ、サンマルサンゴウシツ、ニ、オリマス。オキヲツケテ」
気を付けて、という言葉は引っかかるが、ありがとうの意を込めてロボットを撫でる。そうすると、ふわっと更に上空に飛んで行ってしまったので建物内部に入ることにした。
「三〇三……二階なのに三〇三……」
いろいろ引っかかるところはありつつも、建物内部の階段を上り二階へ。手前から三〇一、三〇二ときて……、
「あった、ここか」
三〇三のドアプレート。二回ノックをして、返事を確認した後に中に入る。と、そこには男性が一人。
「君がガイドの言ってた私に用があるっていう人?」
ちょっと今立て込んでてーと言う男性の足元には猫が三匹。黒と、灰色と、白と。ちょうどご飯の時間らしく、三匹の猫の前にはご飯入れが用意されていた。そのうちの一匹、白猫がこちらに気づき、やってくる。屈んで背を撫でてあげれば、足にすり寄ってきた。
「おや……」
男性は、そんな白猫を見て何か考えている様子だった。そして、猫用のご飯の袋を私に手渡してくる。
「よければ、君からご飯あげるかい?」
ご飯入れも渡され、後には下がれない。観念して、ご飯入れにご飯を移す。その間、ずっと白猫はこちらを見ていた。
「ほら、」
ご飯を床に置けば、白猫はゆっくりと食べ始める。足に絡まっていた猫の体も、するりと解けた。
「かわいいだろー?誰かの荷物に紛れていた猫なんだけどさ」
ゆるんだ顔で、そう説明されれば自ずとこちらも笑顔になる。少なくとも、ここ最近の出来事で緊張していた自分が嘘のようにリラックスしているのを感じた。
「あ、私がアントニー・マクファーレンです。要件って何だった?」
マクファーレンさんの自己紹介に、バズレールさんから渡された記憶媒体を渡す。
「バズレールさんから、です。解析を頼んでいたそうですが……」
「ああ、あれね!ありがとう!そうだ。報酬、報酬」
マクファーレンさんから報酬を貰い、この件は終わり……という時だった。爆弾が落とされたのは。
「あ、良ければ報酬とは別に、この白猫連れて行ってほしいな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます