5. 邂逅とパリッシュ到着


異世界に召喚された俺は、パリッシュという街に行く道中で、モンスターに襲われている商隊を発見。

俺のスキルでモンスター達を一掃してしまった後、少しの間沈黙してしまった。


そして先ほど護衛で守られていた人物が、まず沈黙を破った。


「...。これはあなたがやってくだったのか?しかもさっきのは...。」


「...一応俺がやった。俺のスキルでやったとしか言いようがない。流石にスキルの仔細は、黙秘してもいいだろう?」

とすかさず自分について、明かさない事を遠回しに宣言する。


彼は、どうやらそれで納得したようで、俺に感謝を述べてきた。


「そうですね。そうか。そうですか...。ありがとうございます。助けられました。なんとお礼を言えばいいのやら。」


「いやとりあえず今は気絶させただけだから、起きる前に対処ぐらいはしておいたほうがいいぞ。

おそらく冒険者のルールで、とどめを刺したやつが所有者だと思うが、今回はがな。」

と俺が冒険者達に目配せると、リーダーらしき人物が答えてくれた。


「そうだな。もちろんだ。今回狩ったモンスターたちは君のものだ。まあ仕留めるのを手伝うから、全て持って行ってくれ。みんなもいいよな?」

と彼が他のメンバーに尋ねると、納得しているかのように頷いた。


「...いいのか?俺が言うのもなんだが、ほぼ強引に獲物を持って行こうとしているんだぞ?」


「いいんだ。ほとんどアンタが倒したからな。オレたちには、護衛の報酬が出るから問題ない。それに本当に助けられた。おそらく俺たちだけでは無理だったろう。感謝する。」とリーダーらしき人物は頭を下げてくれた。


「...いや大丈夫だ。気にするな。ハルマンさん少しいいか?」


「は、はい。」


「すまんが彼らの報酬を多少あげるように融通してくれ。こんな状態になって、任務を全うしたのに、報酬が少ないのは気が引ける。」と頼んだ。


「わかりました。そのようにさせていただきます。」


やりい、言質が取れた。


後からリーダー的なやつに、

「意外に分かってんじゃねえか。」と軽くど突かれた。


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護衛をしていた冒険者達と一緒に、

俺は、先ほどのモンスター達にとどめを刺して、解体していっていた。

ちなみに「アイテムボックス」で、解体したものを入れると、冒険者達に驚かれた。


そしたら「アイテムボックス持ちか」と先ほどのリーダーらしき人物が尋ねてきた。

似たようなもんだと答えると、今度はプライベートのことを聞いて来た。


「それはそうとここら辺では見かけない顔だな。名前は?俺はゲルマン。パリッシュの街で冒険者をやっている。ちなみに冒険者パーティ「自由防衛団」のリーダーだ。よろしくな。」


「...ここらには初めて来たんだ。ここ最近、成人して独り立ちをしたのさ。結構遠くから来たもんで、土地勘が無いんだ。名前は...テルと呼んでほしい。これは偽名だが、訳ありでな。前の名は、使っていない。」


「そうか...。テル。本当に今回は助かった。ありがとう。」とまた彼ゲルマンは頭を下げて来た。


「本当に気にしないでくれ。俺が助けたかっただけだ。」と答えると、

ゲルマンは嬉しそうにこのように言ってきた。


「そういう事ができるのはなかなかいない。勇気を持って、全く見知らぬ相手の為に戦えるのは凄い事だ。オレが言うのもなんだが、その心を捨てないで欲しい。」

とゲルマンはどこか遠くを見るような寂しい顔をしていた。


「ところで、怪我は大丈夫か?お仲間も倒れていたみたいだが。」


「オレは問題ない。彼も自分で、回復もできるからな。もうすでに治療を終えているよ。ただ今は少し休ませている。」


「そうか...。すまない後から全員集められるか?言わないといけない事がある。先ほどのモンスター達に関わる事だ。」


「?」




少し経って、あれからゲルマンに自由防衛団のメンバー全員と、商人ハロルドさんを集めてもらって、先ほどのモンスターについての事を話した。


俺のスキル「鑑定」によって、襲ってきたモンスターは皆何者かに強化されていた事が判明。もちろんスキル「鑑定」については、有耶無耶にした上でだ。

この事を話すと、自由防衛団のメンバーは驚いて、少し青ざめていたが、

ハロルドさんはどこか心当たりがあるような顔をしていた。


「ハロルドさんや。何か知っているのか?」と自由防衛団の斥候役であるラッセル(名前は後から聞いた)が尋ねた。


「いえ。ここ最近、失われた古代文明の遺産が何者かに奪われたという話を聞きましてね。奪われた遺産の一つに、人やモンスターを操る類のものがあるらしいのです。」


ハロルドさん曰く、奪われたのはブライト王国とは別の国の国王のものだったらしく、宝物庫に厳重に保管していたのも関わらず、盗まれてしまったそうだ。

そこでその国では、今探しまくっているがなかなか手がかりが見つからないそうで、四苦八苦しているらしい。


「という事はもしかしたら何者かがそれを使って、俺たちに襲わせたのか。」


「邪推ではありますが、その可能性はあるかと。もしこの国にあったらとんでもない事ですが、パリッシュは王国でも中心から離れております。目が届かないのも無理はないでしょう。」


「ちなみに、皆さん何か恨みを持たれている人物に心当たりは?」


「オレ達は、ないな。」

「私は逆の意味でこれと言っては...。なにせ商売敵は多いので...。」

「そうか...。」


性格を考慮すると、おそらくゲルマン達は恨みを買われる事はしないだろう。

ただ逆にハロルドさんの理由もわかる。

多方面の仕事に手を伸ばしていたりすると、誰から恨みを買われるか、

わかったもんじゃない。


少し沈黙を挟んだ後、ゲルマンが口にした。

「これは冒険者ギルドに報告せねばな。...テルお前もきてもらうかもしれないが...。」


「行くよ。面倒だが、現状報告は必須だろう。

むしろ、俺がいかないと面倒くさい事になるだろ。」


「感謝する。」


「ただ俺は冒険者ギルドの場所を知らないし、この様な身形だが冒険者登録をしていないんだ。パリッシュに入るには、身分を証明できるものがおそらく必要だろう?」

と述べると、すかさずラッセルが尋ねてきた。


「は!?テル、お前冒険者じゃなかったのか?」


「ああ。事情があって、登録自体もできていないんだ。このままだとパリッシュに入る事は出来ないよな?」


一度死んで、戸籍とかなくなっているだろうしね!


「いえ...。実はある程度の金額さえ払えば、7日間のみですが滞在する事は可能です。その後、冒険者登録をすれば今後入る際には、支払らずに出入りすることが可能です。」

とハロルドさんが答えてくれた。そして彼は続けて、こう提案してきた。


「でしたら私が出しましょう。」

「じゃあその代わり、は貴方に持ってくるでいいか?」

「話がわかりますねえ。」


お互いに少し悪巧みをしている顔になってしまった。

こうしてちょっと間違われたら、お主も悪のようとか言ってる越後屋と代官みたいな場面になったが、ハルマンとの商談が成立した。


付け加えると、自由防衛団のメンバーは少し引いていた。


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体制を整えてから、俺たちはパリッシュに向けて出発した。


もう夕方になりかけており、野宿したほうがいいのではと、俺は尋ねた。

しかしゲルマン曰く、このまま行ったら閉門までには間に合うし、ハルマンさんがどうしても急がないといけない用事がある為急ぐのだそうだ。


地図を見てみたが、確かに徒歩で3時間ぐらいの距離にあり、閉門が夜7時なのだとするなら確かに十分に間に合う距離だった。


そしてハルマンさんの馬車に乗らせてもらい、そのまま出発。


「飛ばしますよ!」と言っていた彼だが、

どうやら本当に急いでいたみたいで、馬車にしては、かなりのスピードで駆けていった。


1時間半経ったら、なんとパリッシュの入り口まで到着してしまった。

いやいや早過ぎんだろ。


ちなみに、馬を操縦していたハロルドさんと俺以外は全員少し酔っていた。

なんか不運という意味で、残念な人達だな。


俺?俺は女神様の加護でへっちゃらさ。


パリッシュに着いた時には、もうすでに17時を回っており、

あたりはもう夕方を過ぎて、暗くなりかけていた。


見た限りどうやらこのパリッシュは、城壁で囲まれている。

建てられたのは随分前だろう。かなり古い。


城門の前には見張りが立ち、人々は何かしらのギルドに所属をしているのだろう、

カードを見せ、問題なければ通らせているみたいだ。

その為、受付に長蛇の列が並んでいる。


たまになんか水晶を手にかざして、何かあったらどこかに連れていかれている。

どうやら犯罪歴のある人物だったらしい。


一応正当な理由があって、急いでいるのに、なんとかならんのかと聞いたが、

ハロルドさん曰く王族、貴族以外は基本的には列に並ぶのがルールらしい。

やはり待つしかなさそうだ。


さてここで受付待ちをしている間、今一度俺自身のステータスを確認する。


Status

名前: テルマサ=ヨシミ

年齢: 15

ジョブ: なし

LV: 5

体力: 3000/3000

魔力: 3000/3000

攻撃力:2000

防御力:2000

魔攻力:2000

魔防力:2000

速度:2000

(アワード) 異世界から来たもの 女神の使徒

(罪状) なし

(スキル)慈愛神の加護(小) 知識神の加護(小) 豊穣神の加護(小) 言語翻訳 鑑定 全魔法適性有 全武器適性有 攻撃向上 防御向上 魔力向上 魔防力向上 速度向上 自身回復向上 全異常状態抵抗有 隠蔽 情報遮蔽 アイテムボックス ネットダイバー


「うん!?」


とっさに変な声を出してしまった。


これはステータス上がり過ぎとちゃいますか?

LV5の時点で、このステータスはまずいのではないのかなあ。

これはもう「隠蔽」で隠さないといけないレベルなのではないか。


でもそういえば何を調べられるのか分かっていないな。

とりあえず聞いてみるかと、ハロルドさんに質問する。


「ハロルドさん。すまん。入り口では何を調べられるんだ?」


「個人の名前、年齢、レベル、罪状ですね。

以前はスキルやジョブとかも調べていたのですが...。

とある門番が個人のスキルの情報流出させてしまって、大問題になりました。

今ではスキル、アワード、ジョブを調べられる事はありません。」


おやという事は「隠蔽」のスキルを使用しなくてもいいかもしれない。

しかもハロルドさんがスキルについて言及したのは、

俺が気にして不安になっていると思っての彼なりの優しさだろう。


ありがとうと言いつつ、無事に中に入れるのを祈る俺だった。


30分ぐらいしたら、とうとう俺たちの番が来た。


ハロルドさん達のそれぞれの身分証明を表すギルドカードを見せ、

そしてハロルドさんが俺は身分証明できるものをこの後入手するから、

一応調べてやってくれとお金を支払っていた。


そして門番は俺に近づいて

「貴様が身分証明を持たない者だな。こちらに来てくれ。

今からこの水晶で罪状がないかを調べる。」

と先ほど罪状を調べていた水晶のある方へ、誘導された。


移動した後、調べるのは罪状だけか?と尋ねたら、

「名前、年齢、罪状は調べられるが、これでスキルは調べられないんだ。

ここではないが...。別の街の門番が問題を起こしてな。

スキル、アワード、ジョブを調べて、余計な詮索をさせないようにしている。」

と兵士が律儀に答えてくれた。


これでハロルドさんの言っていた事が本当だと証明された。


「さあ水晶に手をかざしてくれ」


言われた通りにやると、

俺の名前、年齢、罪状が水晶の中に現れた。


「ふむ。テルマサ=ヨシミで年齢15、罪状なし。よしこれを渡しておく。」

と渡されたのは青色の腕輪だった。


「これは?」

「この腕は、他から来た身分証明がないやつが、問題ない人物だと証明する物。

肌身離さず持っていてくれよ。有効期限は7日。

それまでに身分証明できるものを手に入れたら、ギルドとかに返却してくれ。

もし破ったら、地下牢行きだからな!」

と兵士は、切羽詰まった雰囲気を醸し出して、俺に顔を近づけて来た。


「...承知した。」


そんなこんなで

無事にお墨付きをいただいた俺は、

ハロルドさん達と共にパリッシュに入ることができたのだった。





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