3. Welcome to New World

見渡す限りの草原、心地よい風が吹く。

パラダイシアという世界の女神カリダーナに召喚された俺、

吉見輝政(ヨシミ テルマサ)はその異世界のとある草原のど真ん中に立っていた。


「...来ちまったんだなあ...。ここがパラダイシア。」


さて今俺は、どうやらブライト王国という国の中にある、ペイン草原という草原地帯のど真ん中にいるらしい。


近くの町がどこにあるのかを、渡された地図で調べると、北にどうやらパリッシュという町があるみたいである。


注意深くみると、地図上の俺の現在地からパリッシュまで赤い矢印が出て、歩いて4日と表示された。


こう見てくると、前世での地図のアプリっぽいな。

おそらくこの地図は女神様たちの力が備わった特別製で、どうやらあまり人前には出せない代物みたいだ。


地図なのに、これいかに...。と思っていたら、

どうやら一緒に持たされたチュートリアル用の本によると、

他人が見ても、文字自体は見えない仕組みにしてくれたそうだ。女神様万々歳。


「ふむ。取り敢えず、歩いて行ける距離にはあるようだ...。街道も近くにあるみたいだし。移動するかな。」


ところで今の俺の姿は、黒髪に童顔で低身長だった前世とははっきり異なる。

黒髪なのは一緒だが、瞳は灰色、体はせいぜいこの世界での15歳ぐらいの引きしまった体つきにしてもらい、平凡で良くありそうな顔つきに変えてもらった。

身長も以前より高く、170cmぐらいといったところだろうか。

加護により、病気もせず、疲れも感じにくい状態にしてもらい、力、魔力も成長につれて上げやすくしてもらった。


ここでなぜ力、魔力を最初から高い状態にしないのかと言うと、

目立って、そこから女神の使徒であるのが疑われる可能性を考慮したのもあるが、

飽き性な俺の為、実際にステータスという数値を高めていった方が、モチベーションを高めるのに最適ではという、単純な理由からである。


...決してRPGのレベルアップを体験して見たかったからという訳ではないぞ。


まあともかくどうやらこの世界にも、実際にステータスが存在しており、

人々も見る人はできるという。

ステータスは以下の通りであり、様々なスキルを与えてくれた。


Status

名前: テルマサ=ヨシミ

年齢: 15

ジョブ: なし

LV: 1

体力: 200/200

魔力: 300/300

攻撃力:200

防御力:200

魔攻力:200

魔防力:200

速 度:200

(アワード) 異世界から来たもの 女神の使徒

(罪状) なし

(スキル)慈愛神の加護(小) 知識神の加護(小) 豊穣神の加護(小) 言語翻訳 鑑定 全魔法適性有 全武器適性有 攻撃向上 防御向上 魔力向上 魔防力向上 速度向上 自身回復向上 全異常状態無効 隠蔽 情報遮蔽 アイテムボックス ネットダイバー


スキルの説明をすると、

まず「慈愛神の加護」「知識神の加護」「豊穣神の加護」はもちろんカリダーナたちからもらった加護である。

それぞれの効果として、主に回復魔法強化、経験値&成長値増加、土魔法&水魔法強化となっている。


またこれら以外にもあるみたいだが、

カリダーナたちもたまに予想外な効果をもたらす場合がある為、その場合は報告してほしいとの事。

...取り敢えず悪い方向にはむかないでくれと願うしかない。


次に「全魔法適性有」と「全武器適性有」は、その名の通り全ての魔法と武器の適正をありにするスキル。

この世界では適性がないと、魔法は発動すらせず、武器も装備できないらしい。

ちなみに「全武器適性有」に、科学技術の武器は含まれていない。

銃は扱ってみたかったが、残念だ。


「攻撃向上」「防御向上」「魔攻力向上」「魔防力向上」「速度向上」は、一見バトル時に一時的に向上するのかと思ったが、そうではなく先ほどのレベルアップ時の数値がより上がる仕組みらしい。


補足すると、この世界の住民はレベルアップ時に、体力等が上がる仕組みだ。

だがその上げ幅は個人によって異なり、自分は攻撃が1上がっても、ほかの人はより多く上がる事もあるのだ。これをこの世界では、成長率と呼んでいる。


「自身回復向上」は、こちらは自分にかけられる回復魔法やポーションといった回復薬の効果が上がるというものだ。

休んでいるだけで、自動で回復する体力と魔力もこのスキルに適用される。

名前や効果で考察すると、どうやら「全体回復向上」とかのスキルもありそうだ。今のところ予定はないが、仲間を増やすなら、是が非でも欲しいところだ。


「全異常状態無効」はその名の通り、毒とかに対する異常状態が効かないというものだ。どうやら呪いとかも、効かないらしく、おそらくこれが病気をしにくくしてもらうという希望に沿ったスキルだろう。


「隠蔽」はその字の如く、自分のステータスの見られたくない部分を隠すスキルであり、名前以外は基本的に隠す事が可能であり、攻撃力等は偽の数値に見えるようにするのも可能だ。ただ流石に、レベルの差が激しいと見破られてしまうらしい。


「情報遮蔽」は、自分に関わる情報を意図的に伝わらないようにする。つまり特定の相手に、俺の情報を伝わりにくくするというのだ。


この「情報遮蔽」、俺が希望していた力だが、実はこのスキル、

それを「欲しいなら、作ればいいじゃないか」とサヴィルディアが新しく作ってくれた。...いいのかそれで。

まあ使徒の件がある以上、これは頻繁に使うことになりそうだ。


「アイテムボックス」は、その名の通り生きているもの以外は、時間経過なしでアイテムを保存しておく事ができる。いつでも引き出すことができ、俺の魔力で入れられる大きさが変動するとの事。


今は畳三畳ぐらいの大きさだという。...それでも多くないか?


そして女神様たちに頂いた地図やチュートリアル用の本とかはこれに入れてある。

空間収納のカバンとかでもよかったのだが、こちらの世界ではアイテムボックスの方が主流である為、こちらにしてもらった。


そして極めつきなのが、この「ネットダイバー」というスキルだ。

これは前世での、インターネットが使用できるスキルで、実際に情報も調べられるし、ネットショッピングとかもできるようにしてくれた。このスキルで購入した品質の高いものを転売する事もできるので、当分は行商人としてやっていく事もできそうである。ちなみにこれもサヴィルディアが作ってくれた。


と説明が必要なものは粗方できたと思う。

「言語翻訳」、「鑑定」の説明はあまり必要なさそうなので、また必要な時にしようと思う。


...ところで今アイテムボックス内には、地図、チュートリアル用の教本、水、護身用の剣、杖、硬貨が入っている。


この世界で流通している貨幣は、

1銭貨=10円

1銅貨=100円

1銀貨=1000円

1金貨=10000円

1白金貨=1000000円

という価値になっているそうで、この世界のどの国でも使われている共通貨幣だ。

前世でのユーロに近く、手持ちは10金貨所持している。つまり10万円分手持ちにあるという事だ。


実際に持つと肝が冷えるが、これでなんとこの国で働かなくても三ヶ月間暮らせられる金額らしい。


本当はもっと少ない金額だったが、少し過保護っぽいグロリアスが

「もっと持たせるべきよお!下手すればぼったくられるかもしれないじゃなあい!」と何故か駄々捏ねたからである。


見かねたカリダーナが呆れて、俺になんの躊躇いもなくこの金額で渡してきた。

いやそんな金額気軽に渡されても...。


だがどうやらカリダーナ曰く、

「グロリアスは、その...なんというか。あなたの前世の見た目は、若くみられていたじゃない。その...あなたの世界でいう「ショタコン」なのよ」と頭を抱えていた。

サヴィルディアも「こうなっては止められん。」と呆れていた。

危うく、こちらの体もそのようにショタ好きの体されそうになり、慌てて止めてもらった。


とまあこの通りが、俺の現状である。


とりあえず今はモンスターをいきなり狩に行くのもどうかと思うので、俺は徒歩でパリッシュに向かっている。

しかし、あれこれ3時間以上歩いているのだが、

「全く疲れてないな。むしろペースが早いか?」

と体力に全く変化がなく、とりあえず次は走ってみる事にした。


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「む。やっぱり全く疲れんな。」

かれこれ三時間走ってみたものの、やはり息切れを起こさず、疲れてなかった。

ステータス見ても、体力が減っていない。

しかもお腹も全く空いていないらしく、かなりコスパがいいらしい。

これなら食料は当分いらないかもしれないな。


あれからさらに走り始めて、1時間。

ステータス画面で時間も確認できるので、見て見ると14時をすでに周っていた。

ここで現在地を今一度、確認しておこうと周りや地図を見てみると


「ん?あれ?なんか人集りが見えるんだが...。っ!?」


遠くに人影が見えたので、よくよく観察しているとどうやらゴブリンらしきモンスターが人を襲っているのが分かった。どうやら商隊らしく、護衛がゴブリンたちと戦っているのが見える。


「あまり目立ちたくないのだが...。仕方がないか?

でもここで目立ちたくはないし...、実力がどのくらいか分からんから出難いな...。」

と考えていると、俺はちょっととある秘策を思いついた。


「これだったら大丈夫か?」


これで俺の、この世界での初戦闘が始まったのだった。

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