2. パラダイシアという世界と俺の能力
「えっ。本当にいいの?私自分でいうのもあれだけど、ポンコツだよ?
それでもこんな神のもとでやってくれるの?」
「うん ポンコツなのもわかってる。まあ簡単な理由だよ。
俺の昔の状態に君を重ねってしまったからなんだ。
...俺もさ親父に、他人に、比較されたし非難されたよ。
まあ俺の話はまた今度で。それで、その役やらせてくれないの?どうなの?」
「っ!?は、は、はいお願いします!」
「ははっ。よしやろう!どうせだったらさ、見返そうぜ。その親父にさ。」
「...うん!」
明るい笑顔で、カリダーナは答えてくれた。
うんうん。やっぱり美人の笑顔はいいのう。
そしてこれで、俺の異世界行きが確定した。
...ちなみにカリダーナはあれからまた泣き始め、姉達が慰め、泣き止むのに2時間かかった。
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やっと彼女が泣き止んだ所で、本題に望むことにした。
まず俺が行くとなる「パラダイシア」という世界についての情報を尋ねた。
パラダイシアは、カリダーナが管理する世界と先ほど述べていたが、
基本的には、主にカリダーナが大元で、
サポート役としてグロリアス、サヴィルディアが担当しているらしい。
言い換えれば、サッカーでいう所での監督がカリダーナ、コーチとしてグロリアスたちが補佐するという事だろう。
パラダイシアは、主に魔法を使用している世界ではあるものの、珍しく科学も混在する世界でもあるらしい。
世界地図を見さしてもらい、詳細を教えてもらったが、やはり様々な国が存在しており、地球での文明でいうと、多くの国々は中世の時代の水準でしかないそうだ。
しかし一部の国は、イギリスの産業革命や日本の明治維新の時期の水準を持ち、
他国を蹂躙する機会を伺っており、国によって、国力のバランスに偏りがある時代があった。
「む?あった? ということはつまり...」
「そうなのよお。昔はそうだったんだけどねえ。」
グロリアスが言うには、
当時パラダイシアの管理をしていた神が無断で地球から技術を持ち込み、
自分の使徒に提供したのが判明。
なぜバレたのかというと、パラダイシア自体を発展をさせる事と目的として、提供した所、使徒達が暴走。
各地で戦争が起き、後先引けぬ状態になってしまったのを知られてしまったらしい。
その事に対して、もちろん地球の神達は激怒。
また他の神からも、無断で技術を盗んだ、他の世界を出し抜こうとした、その上世界が崩壊しかけたのを批難され、その当事者である神は追放。
そして新しく管理する者として充てがわれたのが、カリダーナたちらしい。
「でもそれだと治安はどうなっているんだ。戦争とか起こっていたならば、ひどい状態なのでは?」
「その時はな。だけど、貴様に行ってもらうのは時間がある程度経った時代。
おおよそその崩壊後から、2000年後の時代だ。」
「...それもはや伝説の時代とか空白の時代と言われてそうだな。でもその時代に飛ばすのは、もしかして...」
「そうよお。例え加護を与え崩壊後の時代に送り込んでも、すぐに死んでしまう可能性が高いからあ。ちなみにあなたの言う通り、その時代は
もうほんとどれだけやらかしていたんだよ。その神と使徒達は。
でもここで話を聞くと、おおそよ俺のその方向性が明らかに出来た。
最低自衛ができる力が必須という事。
ただ普通に冒険もしたい俺は、自衛だけでなく一人でも多少なんとかやれる力が欲しいところだ。
「あのね。ごめんなんだけど、お願いしたい事があるの。」と言いにくそうに話しかけてきたのは、カリダーナだった。
まあ大体予測できるが、ここは答えさせてもらおう。
「もしかして地球の技術を持ち込んだ方がいいか?」
「話が早くて助かるわ。お父様はともかく、できれば他の世界の神にも指針を示すためにも必要なの。今回は特例で認められたから。」
「要するに、これは新しい体制での実験で、
「そういう事ね。」
どうやら他の神達からも、注目を浴びるものらしい。これは気を引き締めて行かないとな。だが...。
「なあ。俺自身誇れる技術自体持っていないし、手先もそこまで器用な人間ではなかったんだ。どうすればいい?」
「うん。そこは私たちが与える恩恵によって対処してもらうわ。いわゆるあなたの好きな漫画とかでいう、ユニークスキルとかギフトとかというやつね。」
「もしかしてパソコンでネットを使える能力とか、スマホでガチャを行ってアイテム等を手に入れるとか、そういうのか?」
「そうね。似たようなものになると思う。」
そんなこんなで、技術をもたらし、文明を開花していくというのも目的となった。
しかし、技術を持った使徒達が戦争を引き起こしたという件から、転生先の者達から嫌われているのではとも尋ねて見たが、
「そのような考えの人もいるかもだけど、ほとんどの人はそもそも興味すら持っていないわ。新しく受け入れてくれると思う。」との事だった。
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一先ず今度は、俺の転生後もとい転移後の能力等について聞いて見る事にした。
「そういえば先ほど話の中で、加護を与えるとかなんとか言っていたが」
と尋ねると、
「そうよお。加護を実際に与えて、使徒として活躍して欲しいのお。できる限り死なないようにするためでもあるんだけどお。例えば私の加護は、土魔法で植物を育てやすくするとか、カリダーナは回復魔法が向上するとかねえ。加護にも違いがあるのよお。」とグロリアスが答えてくれた。
「そこはまあ前世の知識で知っているな。ちなみに本当に俺以外の地球から来た奴はいないのか?」
「ええいないわ。けれどお...」
「代わりに、
その者達が後々面倒ごとを引き起こさないでいて欲しいが...。
「付け加えるとするならば、私たちの使徒である事の方が危険なのよ。それを利用しようとしたり、前任の神の使徒の子孫達にいたっては、自分たちの目の敵と看做しているから」と今度はカリダーナが答えてくれた。
どうやら本当に加護持ちであるのは、隠した方がいいかもしれないな。
「...それじゃあ大体話はいいわねえ。それでどのような能力が欲しいのお?」
とグロリアスがまるでいたずらを施した悪ガキのような顔で見てきた。
「能力か...。そうだな...。まずは自衛できる能力が欲しいな。どのようなものがある?」と尋ねた。
「まず魔法だな。魔法は火、水、風、雷、土、光、闇、そして無だな。それらを基本としている。」
「もしかして無は空間魔法とか、転移魔法とか、他の属性に分類できないものか?」
「正解だ。ただ個々によって、適正があり全部を習得できるのはまずいない。更に複合魔法というものもある。」
「土と水の魔法を同時に使って木を生やしたりするとか、風と水魔法を使って氷を生み出すとかか?」
「そうだ。そちらも適性があれば、伸ばして行く事は可能だ。」
ふむ思った以上に複雑だぞ。
まずいな。そういう細かいのは、姉が得意なんだよなあ。
でもこれも人生をリトライして行く為だ。やるしかないな...。
ただ魔法もあるなら武器もどうなっているんだろうか。
スキルを覚えれば、何度でも使えるようになるチートを行う奴が結構二次創作等では多かったが…。
「しかし気をつけなければいけない事項がある。
それは貴族階級の者以外は、ほとんど魔法を使用できない事だ。」
「何だと?」
もしかしてお金で独占しているとかか?と思ったが納得の答えが返ってきた。
「いや先の戦の時代に、長い戦争に勝てる優秀な子を産むため、魔法の能力が高い者同士で番となっていったのだ。そして当人達やその産まれた子とかが結果を残して、貴族に取り立てられる者が増え、時間が流れるにつれて、その文化が浸透していったのだ。ちなみに武器で身を立てた者も同様だぞ。」
まさか独占状態になっているとは...。これは少なくとも、魔法は人前で使うのは憚られるな。習得するのは兎も角、使用するのはできる限り避けねばな。
「ちなみに剣とか武器とかのスキルとかはどうなっているんだ?」
「無論習得するのは可能だ。ただしこちらも適正があり、伸ばせられるかどうかは個々によるな」
まず使われているものとしては剣、弓、斧、槍、盾、杖といったオーソドックスなものや、琴、鎌、笛といった少し珍しいものと分類されるものまで様々。
ちなみに科学技術を使った武器として、銃、ボウガン、バズーカといったものもあるが、もちろんこれは失われたものとして使われていない。
そしてよくある剣士、弓使い、賢者とかのジョブの設定もあるそうで、
「もしかしてジョブによっては、上がる能力も下がる能力もあるのか?」と尋ねた。
しかし、
「いやそのようなものはない。ただの肩書きだ。貴様の世界で言うと、国家公務員や国際弁護士とかと言うやつだ。」とのこと。
いやあ取り敢えず、今となってポケ○ンの努力○とか細かい事を覚えるのが得意だった姉を思い出してしまった。頑張ってサザン○ラ育ててたなあ...。
「...ふむ。まあこれで大体先に入れておく知識は手に入ったかな。」
「そっか!それじゃあもう大体決まったの?」
「ああ。取り敢えず何か書くものはないか?」
その後、俺は渡してくれた紙に内容をまとめ、それをカリダーナ達に見せた。
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カリダーナ達に自分の希望する能力を伝えた後、
向こうに行くための準備を整え、いよいよ出発する事となった。
「いい?テルマサ。私たちはいつでも君の様子を見てるから、だから何か質問があったら、声に出さず心の中で私たちに呼びかけて、尋ねてね。いい?」
「ああ」
「それとちゃんと持ち物は持ったあ?緊張していないかしらあ?ハンカチ、テッシュ、お弁当に...」
「おいおい、待ってくれ!あなたは俺の母親か!」
「つっこめる気力があるなら、大丈夫だな?よしそれじゃあ...いってこい!」
「ああ!いってきます!」
光に包まれながら、俺は意識を途絶えた。
異世界への期待と不安を胸に...。
「...頼んだよ。ミツマサ...。」
とカリダーナは小さく呟いたのだった。
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