自信喪失者の異世界向上記(仮)
KOM-KOM
1. 転生という名のリトライ
俺、吉見輝政は、過去を振り返って見ると後悔する事の多い人間であった。
中学生の頃、今より物言いの性格が強かった為か、友達の欠点を指摘した。
でもそこから、なぜかいじめに勘違いされて人間関係でトラブルを起こした。
結局は、他人による勘違いと仲違いさせたら面白いといういじめっ子が原因であり、冤罪が後から判明した。
解決はしたものの、その出来事から俺は他人を信じられなくなってしまった。
高校でも、受験に失敗しそのまま中高一貫の為、高等部に進学しても
その出来事を知っているものも居た為、仲良い友を作る事が出来なかった。
大学でも再び受験を失敗し、父親によその子供とめっちゃ比較された。
結果、浪人し、当初とは別の偏差値の低い大学に進学したのを契機に、
地元を離れ親父とはほぼ連絡を取らなかった。
親父とは反対に、俺を応援してくれた母には申し訳なかったが、
口が軽く、親父に頻繁に俺の事を報告する彼女とも連絡は取り合わなかった。
しかし、父、姉共々事故死してしまった今となっては、それも後悔している。
...ところで、何故突然このように人生を振り返っているのか。
それはどうやら...
「私は慈愛の女神カリダーナ! 貴方は私の世界に転生して欲しいの!」
...まあよくある異世界転生をする事になったからであるようだ。
これは自己肯定感低い俺が、異世界で転生し、自信を取り戻していく
冒険譚である。
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目覚めると、周りはただ真っ白の空間。
何故ここにいるのか思い出そうするが、
珍しく午前中に仕事が終わった後、そのまま昼寝しようと思い、
布団に入った記憶しかない。
夢かと思い頰をつねったり、拳で自分を殴ったりするが、
ただただ痛みを感じただけだった。
「...まさか異世界転移か異世界転生じゃないだろうな。」
ライトノベル小説で、よくあった展開に戸惑いを感じていると、
「そのまさかよ!」と、女性の声が聞こえた。
後ろを振り向くと、
そこには白い翼の生えた、いかにも後ろから後光を放っている女性がいた。
宙に浮かんでおり、自分を上から覗いている様子のその女性は、長い桃髪で青い瞳、手には杖を持っており、服装はいささか古代ギリシャを彷彿とさせる白衣だった。
「初めまして!テルマサ。」
「...すまん。何方だ。」
「よく尋ねていただきました。
私は女神カリダーナ! 慈愛を司る神の事は私のこと!
ここに呼んだのは他でもない!貴方は私の世界に転生して欲しいの!」
「...は?」
背筋がゾワっとした。
あこれよくあるまずいパターンかもしれん。なんか騙されてる?
むしろそもそもなんで俺のような奴を転生させたがるのか、
またこのような言動がそもそも怪しい。
なぜこのように、俺が疑っているのか。
それは俺が、異世界モノは大好物で数多の作品を読んでいたという単純な理由だ。
多くの異世界転生の作品を読み漁り、アニメを見たり、ゲームをしたりしている
いわゆる
見た目が若くみられていたせいか、真面目な気質のせいなのか、
どうなのか知らないが、他人からはその趣味は意外に思われていた。
ちなみにメルへ○ン、デジモ○はそういう異世界モノの魁であり、
俺のお気に入りの作品である。
...といかんいかん。話が逸れた。
こういうのはとりあえず詳細な事を聞こうと思い、女神に視点を戻すと
なぜかその女神カリダーナが泣いていた。
「は!?え!?なぜ泣いているんだ?」
「うう...。これで11回目だ...。転生断わられたの...。
しかもほぼ何も聴かず最初の態度で断られちゃった...。
私の何が悪いの...。あーでもだから駄女神って呼ばれるのかな。
あーまた父様に怒られ、失望されるんだ...。」と地面に座り、俯いてしまった。
「いやまだ何もいっていないのだが...。参ったな。」
このような状態であると、どうやら先ほどの懸念は別の意味で当たっていたらしい。
おそらくこの女神は、無理矢理召喚者に強いてくる性質ではなく、
自分の思ってもいないところで何かしらやらかすタイプのようだ。
つまり「
こんな女神の姿を見たら、申し訳なさが勝つ。
だが女性経験のない俺はどうすればいいか戸惑っていると
「あーたくもう。何やってんのよお。」
「突然召喚されて、そんな風にいえば誰だってまずは怪しむだろうに」
そのように別の二人の女性の声が聞こえた瞬間、周りの空間が歪み、
そしていかにも中世の西欧貴族が住んでいそうな豪華絢爛な部屋に変化し、
気づくと俺はいつの間にか椅子に座っていた。
また目の前には机もあり、紅茶がおかれていた。
「ごめんねえ。突然こんなところに呼び出してえ。けれども一旦話を聞いてから考えてくれるう?」
と声が聞こえた方へ向けると、先ほどの女神と一緒にまた別の神らしい人物が二人、女神カリダーナのそばに立っていた。
「えーとすまん。どちら様?」
「ああ自己紹介してなかったねえ。あたしはグロリアス。豊穣の神様だよ。よろしくね。でこっちが」
「サヴィルディアだ。知識の神だ。よろしく。」
と二人に自己紹介してもらった。
グロリアスと名乗った女性は、長い茶髪に豊満な胸で高身長。
頭にはキリスト教の司祭が着ていそうなミトラ?を被っている。
服装は主に黄緑色を基調とした神官が着るような、法衣を身にまとっていた。
もう一人のサヴィルディアは、アメリカの大学生が着ていそうな、水色の角帽と礼服を見に纏っていた。
性格は冷淡そうだが、瞳は灰色で青色の短髪。
丸メガネをかけており、こちらも高身長だった。
現実で、背が低かった俺にとっては二人の姿は羨ましい限りだった。
おそらく、実際にいたら男が手放さないだろう麗しい女性達だ。
ちなみにおそらくカリダーナも二人と比べて低いものの、
女性としては高身長の部類に入るだろう。
おそらくカリダーナが165cm前後、グロリアスとサヴィルディアが170cmを越すぐらいだろうか。
「...えーと黙って、そんなに見られても恥ずかしいのだけれどお」と照れながら、
グロリアスが答えた。
おっとまた黙って考え事をしながら、見てしまっていた。いけないいけない。
「すまん。別嬪さんが目の前に突然、それも三人も現れたから驚いてつい。
吉見輝政だ。よろしく。」
「あらあ。嬉しい事を言ってくれるのね?ありがとう。
けど話を戻すわね?まず私たちはこの子のね姉みたいなもんよ。
もっとほんとはできる子なんだけどねえ」
「なぜか空回りしてしまう事が多くてな。
しかも、その空回りで転生を断られてしまう事10回。お前も入れて11回だ」
おいおいそこまで断られていたのか。
というかもう俺は断られたのに数えられているのか。
まだ何もいっていないのだが...。
どうやらカリダーナは、本当に優しいが管理職としては能がない人物であるようだ。
けれど、なぜそこまで断られるのか?
ここまで来ると、おそらく召喚者にも理由があるようだが...。
と思っていると、心を読まれたのか、グロリアス達が呆れながら、答えてくれた。
「断られるのはねぇ。妻帯者の人が召喚されて帰らせてほしいとお願いしたり、召喚された人が年寄りでもう人生を終えたいと言ったりとか、」
「召喚した奴が殺人犯で人を殺しまくるのを目的としていたりとか、この子が苦手な
おいおい。まずグロリアスの言った者達はわかる。
だがサヴィルディアが言った殺人犯とかボディービルダーとか、ましては犬にも断られていたのか。
ますますカリダーナは優しいが、不利益を被ってしまう人物に変わりがないな。
しかしボディビルダーに何か意味が込められていたような?。
意外に、筋肉質の人物は苦手なのか?
...とりあえず話からその優しい反面、推測できた事もある。
話を聞く限りではどうやら元いた世界への帰還も可能らしく、彼女は断ったものは元の場所へ帰らせていたみたいだ。
どうやらまだ帰還させてもらえるだけ、この神たちはまともらしい。
とそのような思考に耽けながら、紅茶を飲んでいると、続きを話してくれた。
「カリダーナが管理している世界、パラダイシアというんだけどね。今魔力が枯渇していて、滅びる危機に陥っているのお。そこで地球から使われていない魔力を貰うために、地球から人を呼んでいるのよお。人を呼ぶ時に一緒に魔力も持って来るという算段でねえ。」
「だが残念ながら、今まで召喚したもの達は断り、元の世界に帰るのを希望し、連れて帰る。その時に魔力を使用するから、結局パラダイシアの魔力は枯渇状態のままなのだ。」
やはり帰るのは可能らしい。そこで色々と質問することにした。
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「質問いいか?」
「ええどうぞお」
「そもそも召喚されるのはランダムなのか?」
「ああ。今回は君がたまたま選ばれたというものだな。」
「俺は、向こうでは死んでいないのか?」
「今のところはねえ。仮死状態という事かしらあ。」
「一応そのままということか。...俺がこのまま転生を断ったらどうなる?」
「元の世界に帰るだけだな。私たちの事を忘れそのまま日常に戻る。」
「じゃあ受け入れて、転生したらもう二度と戻れないのか?」
「まだ召喚の実例が一件もないが...。君が希望すれば、戻れるように検討する。
ちなみに転生したら、元の世界では死亡扱いとなる。」
ふむ...。なるほど。しかし少し引っかかる部分がある。
それを聞いて見ることにした。
「...なぜそこまで配慮してくれるんだ?
俺がよく知るのは、無理矢理なものが多かったが。」
「ああそうねえ。そういえば、地球では結構流行っているのよねえ。」
とグロリアスが答えてくれた。
「まず理由としては、神の協定によるものよお。実は一時期君たちの世界から多くのもの達を召喚してえ、召喚したもの達を扱き使いにする神が現れちゃったのよお。
まあブームってやつう?
そしてその事についてバレちゃって、地球の神達はおかんむりい。
神達の会議で議題にあげたのよお。」
「そこで対策として協定を策定し、ルールに従わない者は罰を与える事となったのだ。ちなみに破ったものは、世界の管理権の没収の上に、牢獄行きだ。」
なるほど。神々にも政治というのはあるんだな。
でもそこまで言われても、カリダーナの説明自体が下手だったのもあるが、
召喚された者達が自己中なのもあったんだろう。
どちらにしても、転生してもあまり意味の成さずに、不利益をもたらしただろうな。
また話からすると、神達の罰が重いのは、意外と地球の神達が政治的に強い状態なんだろうな。カリダーナ達は神達の中では序列が低いのかもしれない。
「そこまで質問に答えてくれるのは、協定に反するのもあるのかもしれないが、
もしかして詳細に話さないと納得しないと思ったのか?」
「...そうよ。」
と答えたのは、先程からずっと黙っていたカリダーナだった。
「そうでもしないと召喚自体受け付けてくれないと思ったの。もう失敗は出来ないし、管理権を他の神に譲渡されてしまうの。それだけは...避けなければいけなくて。」
「...結果を残さないと、父親に怒られるからか?」
「っ!?」
なるほどな。そういう事か。
どうやら実績を上げて、父に認められるようにしないといけないらしく、
一人で今まで頑張ってきた。だが中々成績が上げられず、四苦八苦しており、
見かねた姉達が協力する事となったという感じか。
...気に食わんな。その親父さん。
今のカリダーナの姿は、...昔の俺だな。
高偏差値の大学に進学できずに、親父に他人と比較され続けて、苦しくて、なんとも出来なかった
もう...黙ってられないな。
「...さっきの話だけど。やっぱりやれない。」
「...そうよね。急に召喚されて、ふざけないでという話よね。ごめんなさい...。
今から帰る準備を...。」
「神々の頼みとしてではなく。俺の為にやりたい。
むしろこちらからお願いしたい!俺にやらせてくれないか?
そして一緒にやらないか?
「「「!?」」」
さあ 始めよう。
第二の人生という名の、
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