第十八話 裁きの結末
「『見逃して
「魔女の分際でディアナ様に、なんという物言いか」
ディアナとエミリーがフュリスに怒りを吐く。
その声はそれまでの彼女らの振る舞いからは真逆の印象を与え、騎士たちも村人たちも己の耳を疑った。
「化けの皮が剥がれたわね」
ただ1人、アニタだけは納得した様子で立ち上がり、フュリスの隣に歩み寄る。
「アニタさん?」
「あなたの力には驚いたわ。
だけど、これでも聖女の端くれなのよ。
それが魔導ではないことくらい、感じ取れるわ」
アニタは言葉を区切り、ディアナを睨んだ。
「女狐に惑わされていなければ、ね」
その声には己の不甲斐なさに対する怒りも含まれ、刺々しくディアナとエミリーへと叩きつけられる。
だがそれが、アニタの中に映し出された己の怒りが、ディアナに冷静さを取り戻させた。
「アニタさん、あなたは聖女として優れた力をお持ちですわ。
ですが、筆頭聖女たるわたくしには及ばないこともまた事実です。
わたくしですら見抜けなかったその魔女の欺瞞の技、あなたに見抜けないのは当然ではなくて?」
アニタの怒りを打ち負かせば、その怒りは「無いことに」できる。
だからディアナは、己の自覚も及ばない心の底で瞬時に、周りの人形を操るための最適解を弾き出した。
その声が向けられたのはアニタのように見えて、実際に聞かせたのは騎士と村人たちだ。
彼らの中に再び動揺が広がり、それはアニタにも伝わった。
しかし
「アニタさん、やめてください。
あなたの気持ちは受け取りました。だから、もう良いです」
フュリスの哀しげな声がアニタに届いて、アニタは、かつて一方的に世話を焼き叱りつけていた少女の顔に強い意志を感じ取る。
「フュリス、あなた、どうするつもりなの?」
「南へ行きます」
その一言にアニタは目を見開いた。
「私がいなくなれば。この国から、いいえ、人の国からいなくなれば、こんなことはもう起きません。だから、これを最後にします。
ディアナも、それでいいでしょう?」
ここは人の世界の最南端だ。さらに南は魔族の世界。
フュリスは自ら自分を追放すると決意している。
(どうしたら、そんな悲しい決断ができるのよ。
そんなことは認めないわ!)
それがアニタに火をつけた。
「あなたがそんな真似をする必要はないわ!」
アニタはフュリスの前に出て、ディアナに指を突きつけた。
(一度はしくじったわ。だからなんなのよ。
成功するまで食らいついてやる!)
「ディアナ、私はあなたがやってきたことを知っている。
今この場でも、あなたは騎士たちを騙し村人たちも私も惑わして、フュリスを魔女に仕立てようとしている。
神学校でもそうだったわ。
もう一度言うわ。私はあなたがやってきたことを知っているのよ。
私自身が惑わされてフュリスを虐めていたのだから、間違いないわ」
その声は途中から嗚咽混じりとなっていたが、その毅然とした響きを失わなかった。
「フュリスは、神学校で一度も人を傷つけたことはない。虐められてもずっと聖女としての勤めを果たしていたわ。いいえ、それ以上のことをしていた。
周りの人が傷つけ合うようにしていたのは、ディアナ・ヴィルターハウゼン、あなたよ。
あなたこそ、魔女と呼ばれるに相応しい!」
突きつけられた真実に、周囲からの疑念の眼差しがディアナへと集まった。
「戯言を言うな!」
主人の代わりに叫んだのはエミリーだ。
「ディアナ様を、北に名高いヴィルターハウゼン公爵家に生を受け聖女の才を天より賜り筆頭聖女を勤める高貴なるお方に対し、許し難き暴言。
アニタ・ガルトルード、お前こそ魔女に誑かされディアナ様を貶めた張本人。
そのような妄言、二度と言えなくしてやる!」
激しい罵りから両手を掲げ、その手に法力を集めた。
祈祷の言葉と共に現れたのは白い光の刃。
狙われたアニタは聖女でしかない。使えるのは癒しの法術だけで、聖者の技から身を守る術は無い。
「エミリー、やめて!」
白い凶刃を防いだのはフュリスだ。
彼女が手から深緑に輝く光の葉を飛ばすと、それらは抵抗するエミリーの身体に群れとなって取り巻いた。
「くっ、こんなもの!」
エミリーは法力を振り絞り群れから逃れようとしたが抵抗は空しく、瞬く間に白い刃も法力も削り散らされた。
「ありがとう、フュリス」
「ううん。私こそ、アニタさん、ありがとう」
窮地を救われたアニタの声に応えるフュリス。その声は震え目には涙が滲んでいたが、表情は微笑んでいた。
「その心根に相応しく『染まり』なさい」
どこかで誰かが囁いた。
「あ? ぎゃああああぁぁぁっ!」
突然エミリーが絶叫し、黒い瘴気を纏った。
「え?」
アニタが呆気に取られ、エミリーを見る。
驚いているのは彼女だけではない。フュリスも騎士たちも村人たちも、禍々しく黒い炎の様な瘴気に身を包まれた聖女の姿を、呆然として見つめていた。
「エミリーさんは、闇堕ちさせられてしまったのね。
フュリス、あなたの力で」
ただ1人、ディアナだけが冷静に現状を理解して、フュリスに冷たく告げた。
「闇堕ち?」
「とぼけないでくださいませ。
あなたの力に取り巻かれたエミリーさんがこうなったからには、あなたの力が原因なのは明らかですわ。
あなたは、人を堕落させる力を持った魔女なのですね」
「ああああぁぁぁディアナ様の敵いぃぃ! 魔女がああああ!」
ディアナの言葉に応えるように、瘴気を纏ったエミリーが叫んで跳躍した。
「何?」「消えた?!」
あまりに凄まじい跳躍に、アニタも騎士たちもエミリーの姿を見失う。
ふみゃあ!
額に緑の光を宿したルークだけが反応して、風を纏って跳躍。頭上からフュリスに飛びかかるエミリーを迎え撃った。
ばきっ
みぎゃぁ
ルークは空中で額の光を切り替えて白い刃を自分の体よりも長くして切りつけたが、エミリーを取り巻く瘴気にすら敵わずに裏拳の一撃で吹っ飛ばされる。
「ルーク!」
血を吐いて受け身も取れずに地面に叩きつけられた相棒の姿にフュリスの心の枷が外れた。
それは、ほとんど無意識の内に生じた力の発露。
ごうっ
光の葉が渦を巻き空気を巻き込み豪風を起こして竜巻きと化す。
深緑の竜巻はエミリーをひと飲みにして
「あああ、ディアナ様! 助けて! ディア…ナ……さ……」
少女の声も瘴気も身体も一切合切等しく引き裂いて、後には何も残らなかった。
「エミリー?」
まるで朝の挨拶のように自然な、問いかけの言葉。
ディアナは自身に仕えてきた侍女がいたはずの空中を呆然と見上げて、呟いた。
もうそこには
筆頭聖女に選ばれるほど破格の法力を持つディアナは、癒すべき生命を感じ取る力も持ち合わせている。だが、エミリーだったはずの生命はどこにも感じられない。
同じく聖女であるアニタも、エミリーの消滅を感じ取って絶句していた。
「エミリーさん……私、そんなつもりじゃなかったのに」
フュリスもまた、エミリーの命が圧倒的な力で引き裂かれ無にも等しいほどにバラバラにされて散っていったことを感じ取っていた。
ディアナの耳に残ったエミリーの、最期の言葉が木霊する。それは何度も何度も鳴り響いて重なって重なって重なって心の底に降り積もって
パキン
筆頭聖女として生きてきた少女の中で、何かが割れた。
「よくも、エミリーを」
憎しみに満ちた低い唸りは、本当にあの清らかな声の持ち主のものなのだろうか?
誰もが耳を疑う中で、ディアナは全身から白い輝きを撒き散らし怒りに歪んだ双眸に光を宿し、フュリスへと一歩んだ。
「エミリーはお前のせいで、お前がエミリーを」
呟きながらさらに一歩。また一歩。
フュリスは、自身の力がエミリーを消し去った事実と彼女の怒りに後ずさる。
「お前がいなければ……筆頭聖女でいられたのに……王妃になって、この国をわたくしのものにできたのに……」
もはやディアナには正気は無かった。正気ならば言うはずのないことを口にしていた。
かつて穿たれた楔による亀裂はエミリーの死と言う誤魔化しようがない現実でさらに広がり、その心を完全に砕いていた。
彼女が描いていた、描かされていた筆頭聖女としての人生は破綻して、彼女を崇拝するよう彼女の惨めさの鏡となるよう己と等しくなるよう躾けたエミリーは、助けを求めながら消えてしまった。
その喪失を己が無力を心の奥の奥の奥底の願いを知った嘆きは彼女の心では受け止められず、吐き出す言葉が、黒く染まる。
「ディ、ディアナ?」
「お黙りなさい。フュリス。
わたくしは、あなたを、許しません」
さらに一歩、一歩、歩みを進めるにつれて白い光はちかちかと瞬いて変じていき、ディアナの全身は揺らめく黒い炎に包まれ、ついにはその法衣も髪も目も唇も真っ黒に染まった。
肌の白さだけが浮き彫りとなって、彼女の姿を凄惨に彩る。
「殺してやる。エミリーのようにこの世から消してやる」
禍々しく黒く染まった口から、瘴気と共に憎しみが吐き出された。
「予想外ね。でも、あの人間には相応しい結末だわ」
ライキーナが森の木にもたれかかったまま呟いた。
その姿は村から簡単に見つけられる場所にあったが、誰も彼女には気付いていない。
彼女の魔導は色彩使い。
あらゆる「色」を司り、今は自身を映す光の色を変えてその姿を隠している。
「私が染めなくても、自ら染まるに相応しい性根だったようね。筆頭聖女様」
エミリーを黒く「染めた」のは彼女の魔導だ。
しかしそれは、元々エミリーの心の内にあった色を使って力を染めたに過ぎない。元から薄い色では七彩の力をもってしても人を染めることは容易ではない。
だが、ディアナは違う。
彼女は自ら黒く変じて「闇堕ち」した。
「けれど、これであの女の心は一つにまとまった。力はおそらく、私をも凌ぐ。
予定が狂ってしまったわね。フュリスが死ななければ良いのだけど」
もしフュリスが命を落としそうになったなら、助けるために介入しなければならない。しかしライキーナの存在が明らかになれば、命令に反することになりかねない。
ライキーナは息を潜めて、戦いを見守った。
「ディアナ! 正気に戻って!」
フュリスがディアナに呼びかける。しかし火に油を注いだだけ。
すでにディアナにとってのフュリスは人間ですらない。
「うるさい! この魔女! この魔族め!」
ディアナが叫ぶと瘴気が渦巻き彼女と共に空へと昇る。
黒く燃える瘴気を背中から翼のように噴き出して、ディアナは天を仰いで両手を上げた。
「聖なる焔は天より降りて神敵を穿つ!」
瘴気と共に吐き出された祈祷は
「うわあああ! 神様! 助けて!」
村人たちも騎士たちも突然の天変地異に地に伏して神に祈る。
すぐに陽光が細々と彼らを照らし、人々は祈りが通じたのかと顔を上げた。
そこには絶望があった。
漆黒の瘴気は空の至る所で集まり、つい先程にディアナが使った
(あんなものが落とされたら、誰も助からない)
フュリスもまた、空を見上げて必死に思考を巡らせた。
(どうやったら止められるの? またあんなことになったら?)
エミリーを消し飛ばした深緑の竜巻が脳裏に浮かぶ。
だが、迷っている時間は無かった。
「魔族め! 魔女を庇う愚か者どもめ!
エミリーの仇め!!
死ねえええっ!」
ディアナが黒い流星を落とした。
(止めなければみんなが死んでしまう。それは、嫌)
フュリスは、迫り来る流星雨を見上げて瞬き一つの間に選んだ。
自分を受け入れてくれた人々と、優しい毒で自分を貶めた相手とを。
彼女が持つ天性の気質と今まで育まれ積み重ねてきた経験が窮地にあってようやく繋ぎ合わされて、フュリスに、突き付けられた非情な現実から心を逸らすことを拒み己の肩に罪を背負う決意をさせた。
「ディアナ、エミリー、ごめんなさい!」
フュリスは両手を天に向けた。
深緑の光が柊の葉のように鋭く刺々しい形を成す。
それは一瞬のうちに増えて天を覆い、風を巻き込んで渦を描き深緑の竜巻となって流星雨ごと空を飲み込んだ。
青い空が現れて、人々は呆然と天を仰いだ。
あの流星の群れは、どこにいったのか?
黒く染まった聖女は?
空にあった雲は?
彼らの視界を覆っていた深緑の竜巻が薄れて見えなくなると、ぽっかりと丸く開いた空にあったはずのそれらは、全て等しく消えていた。
「フュリス、あなた……」
アニタの声に、フュリスはようやく両手を下ろして振り向いた。
「アニタさん」
蒼白になった学友の顔に浮かんでいたのは、恐怖と驚愕。それを見てフュリスは、力を振り絞って名前を呼んだ。
それが限界。
力を使い果たしたフュリスは、意識を失い倒れた。
フュリスは目を覚ますと、自分が見慣れた小屋の中にいると気付いた。
隙間から差し込む光は朝日のものだ。どれだけ眠っていたのか見当もつかない。
うにゃあ
(ルーク!? そうだ、怪我は?)
小さな鳴き声に飛び起きる。
ふぎゃあ!
薄い布団と一緒に吹っ飛ばされたルーク。
したたんと軽い足音で壁を蹴り、着地してから小さな牙を剥き出してフュリスに唸った。
ぐるるるるるる
「ルーク、無事だったのね。良かっ痛いっ!」
容赦なく引っ掻かれたフュリスは思わず叫んだ。
相棒がぐったりとしていた姿が最後だったので思わず手を伸ばしたフュリスだが、ぐっすり寝ていたところを吹っ飛ばされたルークのご機嫌は斜めなんてものでは済まなかったのだ。
ガチャリ
扉が開く音がして、フュリスがそちらを見れば見覚えのある人影。
「目が覚めたか。2日ぶりだな。
寝起きで悪いが、身支度して集会所に来てもらえるか?」
目の下にクマを作ったロディが厳しい顔をしたまま、指で集会所の方を示した。
「まず、フュリス。
この村はお前を魔女ではないということにした」
集会所に集まると、開口一番にロディが告げた。
この場にいるのはデリベリック村の責任者であるロディ、村付きの聖女として派遣されているネリー、村が属するガルトルード伯爵家の令嬢であり聖女でもあるアニタだ。
「騎士どもにはあの後にすぐ、俺が責任を持って対処するって話でお帰りいただいた。
村人にも俺たちに任せるよう言ってある」
ロディは元は聖騎士であって、今も騎士たちに相応の人脈があるらしい。おそらくそれを使って交渉したのだろう。
「あの、私はこの村にいても良いのでしょうか?」
「良いに決まってるでしょ。ダメなんて言ったら私が許さないわ」
フュリスの問いかけを否定したのはアニタだ。
彼女はあの時こそ恐怖と驚きを抱いていたが、気を失ったフュリスを助けルークを癒し、ロディやネリーに頼み込んで匿い世話をしているうちに、そんなことは気にならなくなっていた。
思わず首をすくめたフュリスに、ネリーがお茶の入ったカップを差し出した。
「ディアナとエミリーって2人は多少聞いた覚えがあるよ。
あの2人が闇堕ちしたのは騎士たちも見ていてはっきりしているから、私の方からも報告を上げておいたわ。
実は、闇堕ちってたまにあるのよ。学校では習わないけれどね。
それからフュリス、アンタの力については省いて報告しておいたわ」
自身の力について言及されて、フュリスはさらに身を固めた。
「フュリス、アンタの力はなんだい?
魔女でないことは確かよ。
アニタもアタシもロディも、それからここに来た聖騎士たちも、アンタに瘴気は感じてない。
これだけの人数を誤魔化すなんてのは、そうそう出来るもんじゃないからね。
でも、アンタの力は聖女の力でもない」
「魔女でないなら、問題ないでしょ。
フュリスがいなかったら私たちみんな助からなかったのよ」
「世の中がお嬢様の言うように単純だったら良いんだがな」
「何よそれ。はっきり言いなさい」
3人のやり取りにフュリスは顔を上げ、まずはロディに話しかけた。
「村の人たちは、私を恐れていますよね。
私の力がわからないから」
ロディがあっさり頷く。
「ああ。人間ってもんは正体のわからない奴を一番怖がるからな」
「わかります。故郷でもそういうこと、ありましたから」
「今はね、村でアンタが役に立ってきたことと、こないだの事件と、アンタの正体。
この3つ、4つ? どちらでもいいけど、それがギリギリ釣り合っているところなのさ。
お嬢様が大声で喚くから、連中の説得もやりにくかったったらありゃしない」
ネリーの愚痴にアニタが睨むが、聖女として先輩でもある相手には文句をつけにくいらしい。不満に頬を膨らませたまま口を閉ざしてそっぽを向いた。
黙り込んだアニタを尻目にネリーが話を続けようとしたのだが、フュリスがそれを遮る。
「すみません、ご迷惑をおかけして」
自分のことでロディとネリーは相当な苦労をしているとわかり、フュリスは小声で謝った。
「でも、私もこの力のことはわからないんです。
ハンプニー村で銀之聖者様に認められたときも、自分では使えていなかったくらいで。
わかっているのは、魔物を倒せること、傷を癒せること、薬草とか動物とか、いろんなものを探せること、くらいです」
続けて説明してから、フュリスは黙り込む。
(本当にこれしかわからないわ。力が強くなったり弱くなったりするのも理由はわかっていないし……待って、理由はわかっていないけど、でも今まで……)
考え込んだフュリスを、3人は黙って見守った。
一緒に学んだ相手が神学校から追い出される原因だったと知り、その2人を自らの手にかけたのだ。この若さでそんな経験をするのはどれほどの心痛かと、フュリスの生真面目さを知るだけに声をかけられずにいた。
カップを手に取り口にする音。それが数回繰り返されてから、ロディが沈黙に耐えきれず口火を切った。
「わかった。
お前の力は破格だが、今言っただけなら村に害はない。そうだよな」
「言われた通りなら、そうだけどね。
でも、フュリスの薬を使いたくないって村人は何人もいるから、このままにはしておけないよ」
「しばらく、フュリスには小屋で謹慎してもらう。ルークもだ。
お嬢様、そんな顔で睨むなよ。村人たちが落ち着くにはまだ時間が必要なんだぜ。
誰もがあんたみたいに、勉強して知識を得られる生き方をしてはいねえんだ」
「そんなこと、言われなくてもわかるわよ」
「フュリス、良いね」
「はい」
ネリーに問いかけられ、フュリスは頷いた。
すぐにアニタが立ち上がって、上から指を突きつけてきた。
「そういうことなら仕方ないわね。
身の回りのことは私がやってあげるわ。
困ったことがあったらすぐに言うのよ。
神学校の時みたいに我慢していたら、怒るからね!」
堂々とした言葉の勢いに思わずフュリスがきゅっと口を閉じた。
それから
「あ、あの。
アニタさんの話し方が怖いので、言い方を考えてください」
精一杯の小声で訴えた。
ロディとネリーが口を押さえ、アニタは顔を赤くして視線を彷徨わせたが、すぐに真っ直ぐフュリスに向き合った。
「今まで悪かったわ。
そうやってはっきり言ってくれれば良いのよ」
精一杯に優しげにした不器用な声に、ロディとネリーが堪えきれずに吹き出した。
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