二○二三年 三月

春曇はるぐもり撚りてズボンの裾を上げ


送別の祈り灯すラナンキュラス


春愁や時短勤務の帰途長し


忙しなき春荒の朝傘忘れ


雛あられ涎まみれの指摘む


河津桜愛でる吾子の笑窪紅き


淡月や我此処に在りと光りて


列成して童渡れり春の水 


草の芽の刺し縫い走る石畳


春半ば午睡の掛布薄くなり


靴下の仔犬が駆ける春の野や


シネラリア紫斑のように咲いてゐる


黙祷を子に教える三一一さんいちいち


幼子の光輪に降れ降れミモザ


リボン代経費ならずホワイトデー

 

領収証数え終わらぬ春未明


菜種梅雨子が差す傘右半分


薄赤き吾子の手温し春の夕


光風やインディゴの裾靡かせり


ペダル漕ぐソックス白し春二番


石鹸玉しゃぼんだま待て待てと追う子の背追い


花信風すぐに行くよと子に告げよ

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