第16話 本気の死闘
無人島に飛ばされて約二か月、ここでの生活も悠々自適な快適なものになっていた。
お風呂に、サウナ、そして自室を手に入れた俺は異世界に来てここでの生活も悪くないと思い始めていた。
ただ悠々自適とはいえ戦闘や魔法の訓練は欠かさず毎日行っていた。
午前中はひたすら魔法の研究と試し打ち、ここに来た時に覚えた火魔法はまだガスバーナー程度だったが、爆撃魔法まで進化していた。
イメージの強化のため詠唱を行ったのがきっかけだった。
中二病じみたすごいと感じる言葉を並べてそれっぽくポーズも取りながら初めて放った爆破魔法は海に少し大きな白波を立てる程度だった。
だが、試行を繰り返し開発した爆撃魔法は津波を引き起こし俺たちの拠点はあわや流されるところだった。
俺が求めていたのは自分を巻き込まない、コンパクトな威力のある魔法。
すぐに俺はこの魔法を封印したのは言うまでもない。
戦闘訓練はというと、」日々ニナと殴り合っていた。
最初は毎日ぼこぼこにやられ勝てなかったが、爆破魔法を覚えたての時に、拳に纏って殴ってみたら思いのほか威力がでて初めての勝利を収めた。
ただし、俺の手もただでは済まなかったため、この技もすぐにお蔵入りとなった。
その後ニナは毒を使い始め、また俺は勝利から遠のいていく。
ニナが毒を使い始めたことで俺は今まで三度死にかけた。
毒をまともにくらい一度目に死にかけたとき、あせったニナが土壇場の無詠唱回復魔法を発動させなければおそらく俺は死んでいた。
記憶はおぼろげだが泣きながら何か叫び続けていた気がする、回復魔法が奇跡的に発動した後俺は一日寝込み意識が戻った時ニナは再び泣いていた。
だが回復魔法を使えることが分かったニナはその後遠慮がさらになくなり、あと二回死にかけたということだ。
だがそのおかげで毒の耐性と魔力による超回復を手に入れる。
超回復を手に入れた後はニナとの勝負にも十回に四回程度勝てるようになり、
勝負自体もお互いに楽しくなってきていた。
「ニナ、そろそろ、本気の魔法を交えた死闘をしないか?ただ死闘といっても本当に殺すのは当然なしで、その寸前はOKということで」
「わかった。」
「で、普通の勝負じゃ面白くないので何か賭けないか?」
「じゃあニナ勝ったら拓矢の魔力一年分」
「いやそれ俺死ぬだろ?」
「毎日一回魔力補給一年」
「他のにして」
「ダメ」
「じゃあ俺が勝ったら処女をもらって聖女引退してもらうけどいいのか?」
「望むところ」
「いや俺はよくないんだが、まぁ勝てばいいか」
「勝利条件は?」
「降参、気絶、拘束一分」
「OKじゃあ、やるか」
俺とニナの本気の死闘は持久戦だった。
お互い超回復が使えることでダメージを与えても刃の手刀で切りあってもお互いすぐに回復する。
ニナの毒攻撃も俺にはすでに耐性がありあまり効果ない。
体格差はあっても力もほぼ互角。
魔力量は俺の方が多いはずだが、
俺たちはすでに以前戦ったゴブリンロードと同じ化け物の域にまで到達しようとしていて、戦いは一日経っても勝負がつかなかった。
通常の勝負であればお互いお腹がすいた、疲れたと途中でやめていたが、今回はお互いに大切なものをかけている。
俺は人としての尊厳を、ニナは聖女の誇りを
(毎日乳牛のように搾り取られるなんて絶対に許されない)
さらに勝負が長引く、周りを破壊しながらの乱闘、お互い休憩をしつつ息を潜め隙を狙った攻防戦、俺たちの戦いは徐々に山の奥へと場所を移していた。
威力の劣る爆破魔法を繰り出しても倒しきるほどのダメージは与えられずすぐに回復してしまう。
ニナも渾身の猛毒をぶち込んでくるがすぐに回復してしみせる。
ただその影響でニナの毒は周辺の生物を死滅させていった。
お互い互角に見えたが俺には最後の切り札である、詠唱付きの爆撃魔法が残っている。
ニナだけでなく島ごと消滅することを恐れて使えていないが、詠唱を途中で破棄したらどうなるだろうかなど、俺は戦いの中で魔法の改良を試みていた。
「闇の炎、断崖の頂、闇より天に昇る竜の奇跡、すべてを昇華する光となれ、 爆炎魔法 ヘルフレアライズ」
ぶっつけ本番の少し恥ずかしくなる詠唱を終え魔法を発動させる。
有効範囲を狭め威力を高め、天に向かって伸びる爆炎をイメージした攻撃魔法だ。
ニナの周囲を炎が囲み火柱となり彼女を爆炎が飲み込む。
炎の中でニナは体を魔力で守りつつ、それでも通過するダメージは超回復で耐えている。
だが終わらせるつもりでこっちはやっている、さらに威力は上がり、爆炎は炎の竜巻となり、周囲を地獄へと変えていく。
ニナが地面から離れ炎の竜巻に飲まれるのを見て、あと少しで勝てそう、そう思った瞬間
炎の竜巻からニナが飛び出してくる。
「あの世見えた。炎もう効かない」
ニナの体が、いや体のまわりの魔力が炎に変換されている。
(炎の適応ってなんだよ。燃えろよ、普通に反則だろ)
炎や爆発を纏って攻撃するには自分自身も炎の熱に対する耐性や防御を考える必要がある。
どういう原理化はわからないが、きっとニナは戦いの中で、しかも攻撃を受けながらそれを習得したのだろう。
「嘘だろ」
「カトレ思い出した。ニナ燃えるイメージ」
「そういうチートは主人公が覚えるんだけどな」
「じゃあニナ主人公、次はニナの番」
カトレのように炎を纏い攻撃をしてくる、通常の打撃で肌が、肉が焼け削がれ俺の頬がなくなり歯がみえる。
超回復と一緒に痛覚を半減させていたが普通に痛い。
あきらかにさっきと攻撃の質が違う。
一か八かの高圧水刃魔法を放ってみるがニナには届かない
ケ〇ヒャー程度だった俺の水魔法はダイヤモンドカッターほどまではいかないまでも、木を切るくらいには威力を増していた。
ただこの魔法の弱点は射程範囲だ。
距離が延びるほど威力が急激に落ちてしまう。
だが炎に反応して水蒸気となれば多少の目くらましくらいにはなるだろう。
(水蒸気?大量の水に沈めれば水蒸気爆発で自爆してくれるかも?)
次の手を考えながら一端距離を置き、ニナの次の出方を伺う。
だがニナは動こうとしない、どうやら慣れない炎魔法を使ったことがあだになり魔力が尽きかけているみたいだ。
(チャンス!)
この機会を逃すまいと猛攻を仕掛ける。
爆破魔法でけん制し距離を詰め、動きを封じるため再び水魔法で足を狙う。
足の腱が切れ動きが鈍ったニナは俺の蹴りで尻もちをつく。
(やはり魔力が減ったニナは回復も遅くなっている)
「俺の勝ちだね」
そう言ってニナを拘束しようと飛び掛かった瞬間、俺を背後から魔法攻撃が襲う。
不意の攻撃で吹き飛び、背中が焼け焦げてしまった俺は、ロリババアが邪魔をしたと勘違いし攻撃の主を罵倒しながら振り向いた。
「邪魔するな、このクソロリババア!」
だが俺の目に映ったのは今にも泣きそうなエレナとすでに泣いているリカちゃんだった。
「拓矢さん見損ないました」
回復を終えたニナが軽く俺の肩を叩いたあと二人に駆け寄っていく。
「エレナ、リカ久しぶり」
二人はさらに驚いた顔をしていたのは言うまでもない。
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