第17話 戦いの後に
俺は今一人風呂に入っている。
ニナとの死闘の末、寸前のところでエレナに邪魔され勝ちを逃した俺は勘違いとはいえ、エレナに向かって怒鳴ってしまった。
エレナとリカちゃんの顔を見たときは喜びと同時に冷や汗が止まらなかったが多少の怒りもあった。
ニナが事のあらましを説明していたが二人の俺に向けた冷たい敵意を持った視線に耐え切れず、ニナに任せて逃げるように先に家に戻ってしまった。
ただ戻る途中で、周囲が炎と毒の地獄絵図みたいになっていたので、残りの魔力すべてで水魔法を広範囲に放ち、炎の消化だけはしておいた。
家に帰った俺は風呂に入り現実逃避をしている。
俺が作った風呂は無駄に広い、最高に癒しの空間だ。
最初は五右衛門風呂的な一人用だったが、ニナが温泉を掘り当てたことと、その後魔法が上達したことで土魔法を駆使して風呂を温泉旅館並みに改築した。
浴槽も深さを調整して寝て入れる浅いところから首までつかる深いとこまであり最高の風呂となっている
(それにしてもなぜ二人がここに来たのかはわからないが、いやおそらくロリババアの関係者か本人が連れてきたんだろうけど、最悪の再会だよ)
しばらくして風呂の外が騒がしくなる。
ニナが二人を連れて戻ってきたのだろう。
風呂から出ようかとも考えたが二日に渡って続いた戦闘の疲れと、最後に魔力を使いきったせいで動く気になれない。
かすかに聞こえてくる話声は先ほどとは違い、明るい口調だった。
しかしまだエレナとリカに合わせる顔がない、もうしばらく風呂に籠ろうと思った瞬間。
勢いよく風呂の扉が開きニナが叫ぶ
「拓矢だけずるい!ニナも入る」
(なんでニナはあんなに元気なんだろうか?あいつも魔力切れを起こしていたはずなのに。入るなってツッコミたいけど、大声を出す気力もない)
「好きにしろ」
その後三人がまた何か大声で騒ぎだす。
「ニナ、だめよ」
「問題ない、なんでダメ?」
「か、神代さんと入るんですか?」
「そう、拓矢は好きにしろと言った、問題ない」
「問題大有りです、男性とお風呂に入るということは、そ、その、そういう関係になるということですよ」
「ニナ、もうそういう関係」
「!!!!」
「え?ニナさん?し、したんですか?」
「してない」
「安心しました、ってじゃあどういう関係ですか?」
「今からお風呂入る関係、二人も一緒に入ればいい。ニナ疲れた」
ニナがエレナとリカちゃんの反対を押し切って裸になり風呂に入って来るがもう気にしない、無視しよう。
というか横になっているせいかもう力が入らない、このまま寝てしまうのもありだ。
実際何度か寝たことあるし、翌日体がふやけてがすごいことになっていたが気にしない。
俺はその後本当にそのまま寝てしまい、次に目が覚めると自分の部屋の寝床にいた。
俺は裸のままだった、服は部屋にも風呂場にも見当たらない。
せめてパンツぐらい履いておきたい。
ちなみに俺の部屋は風呂場に直通の作りになっている。
あの後風呂で何があったのかは気にしない、気にしたら負けだ。
だが俺の服がない、しょうがないので布団にしていたシカの毛皮を腰に巻き部屋を出る。
部屋からでるとリカちゃんが一人そこにいた。
「久しぶりだね」
「ほんとですね、元気でしたか」
「見ての通り元気ぴんぴん」
そういうとリカちゃんはなぜか顔を赤らめ顔を逸らす
(あれ、ちゃんと下半身は隠しているはずだが)
「もしかして昨日部屋に運んでくれた?」
「はい、三人で・・すいません、その・・・」
「ありがとう、ところで服知らない?」
「たしかエレナさんが洗って外に干してましたよ」
いつまでも腰巻だけではいつ下半身が露見するかわからないのでとりあえず外に出て服を探す。
服は外に干してあった、だがボロボロだ。
ズボンは大丈夫だが上に来ていた服は背中が焼け焦げて・・・。
これも気にしないことにしよう、毛皮はあるのであとで上着にでも加工することにする。
それにしても気にしてはいけないことだらけで疲れてくる。
家の中に戻りまたリカちゃんと話をする。
「ところでどうしてこの島に?いやどうやってこの島になのかな?」
リカちゃんたちは教会の修行の一環でこの島に送られたらしい、
島に来た翌日にエレナと周囲を探索していたら俺たちの魔力と戦闘に気が付き様子を見に行った結果というわけらしい。
「本当に修業のための戦いだったんですよね?」
「そうだよ」
「そうですよね」
ある程度の誤解は昨日のニナからの話で解けていたみたいだが、俺がニナを殺そうとしていたように二人には見えたようだった。
リカちゃんには賭けの話はうまく隠して正直に話をした。
「二人とも強くなったんですね。で、お風呂にはよく一緒に入る仲なんですか?」
・・・
「ばーん!ニナ復活!」
俺と同じように疲れて寝ていたニナが起きてきた。
「拓矢、肉、肉食べたい。あ、リカおはよう。」
「おはようございます、ニナさん」
「ちょっと待て、ニナ。リカちゃんと大事な話をしてるから」
「肉の代わり魔力、それなら待つ」
「わかったすぐ作る、あ、リカちゃん誤解があるようだけどニナとはそういう仲ではないからね」
俺は逃げるように食事の準備をしに外に出た。
ニナは料理ができない、ただ焼くだけなのに肉すらまともに焼けない。
俺は料理自体は好きだったので調理を、食材をニナが狩ってくる役割になっていた。
料理自体は調味料が塩しかないので単純なものしかできないが、シカやイノシシの油で揚げ物や香草をみつけて煮込みを作ることもある。
無人島とはいえ住環境だけでなく食事もそれなりにこだわっているのだ。
(さて、とりあえずこの前作った、イノシシのハムもどきでも焼こうかな)
調理場で食事の支度をしているとエレナが戻ってきた。
「お帰りなさい」
「た、拓矢さん、昨日はすいませんでした」
「何がですか?」
「えっと、お二人の勝負を邪魔して、しかも勘違いしていたとはいえ拓矢さんを攻撃してしまったことです」
「ああ、それなら許しません」
正直、あの攻撃はムカついていたので少しいじわるをしたい気分だった。
勝負の勝ち負けはどうでもいいが、あの攻撃は下手したら致命傷になりかねない威力だった。
少なくとも、島に来る前の俺だったらやばかったのは間違いない。
その後はエレナが黙りうつむいてしまったため、そのまま無視して食事を用意してニナの所に逃げた。
「ニナお待たせ、リカちゃんも一緒にどうぞ」
食事はエレナの分も用意していたがエレナは中に入ってこなかったので、ニナとリカちゃんにさっきいじわるしたことを話し、フォローしてもらうことにした。
「神代さん!」
リカちゃんが怒った顔をして外に出ていって少し焦ったが、ニナがほっとけばいいというので静観することにした。
「エレナが無粋、拓矢悪くない」
しばらくしてリカちゃんに連れられたエレナが中に入ってきて再び謝ってきたので今度は許してあげた。
ただし、俺と戦うことを条件に、
「自分の力を試したいから本気で。なんなら殺す気でもいい。手加減したら絶対に許しません」
「わかりました。それで拓矢さんの気が済むなら」
エレナとの勝負はすぐに決着がついた
エレナは剣で、俺は素手でいいいということで戦いが始まる。
初手で本気のエレナに俺が切り刻まれて終わったかに見えたが、そこで油断したエレナを俺も本気の爆撃拳で100mぐらいぶっ飛ばし決着。
ニナがエレナをすぐに治療してくれたが二日寝込んでしまった。
ちょっとやりすぎたかもしれないがこれで貸し借りなしだ。
リカちゃんにすごく怒られたのは言うまでもない。
死に戻れたので恋をやり直したいけど突然飛ばされた異世界が誘惑たくさんで困ってます(仮)輪廻の呪いの中で恋をする もちねっこ @tw1204
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