第15話 教会
村を離れて数日、私はリカさんと教会にやってきた、いや戻ってきた。
7年ぶりの教会、あの頃と雰囲気は全く変わっていない。
村とはまた違う異質な、不思議な場所。
教会があるのは村から東にあるここサンクトゥス。
ここよりさらに北には王都があり、そこにも教会はある。
王都は大司教派が覇権を握っているが、ここサンクトゥスはエリクト様の聖地だ。
森と自然に囲われた大聖堂。
静かな聖地のひとつで一般の巡礼者が多く訪れる。
大聖堂手前の礼拝堂までは誰でも出入りできるが、大聖堂の奥には許可を受けた女性のみが立ち入ることができる。
つまり奥が聖女の修練場となっているのだ。
私たちは村長マリアと長老ルミナ様の連盟による書状をもってエリクト様の所を訪ねていた。
普通はお会いできない教会を象徴するお方、だが長老ルミナ様とは旧知の仲ということもあり、その書状をもっている私たちは直接面会が許されたのだ。
「エレナとリカ入ります」
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「書状拝見しました、ルミナの頼み事です。お二人の修練お受けしましょう。」
(やべぇ、ルミナと村長の書状っていうから油断してたら、フィオナ様からの命令書じゃんこれ。「この二人を最強に強く鍛えるんじゃ、あとわしのことは秘密じゃ、以上」マジビビった。漏らすかと思った。)
「ありがとうございます。エリクト様」
「ありがとうございます」
「エレナさんとリカさんでしたね。エレナさんは以前ここにいたのでご存じかもしれませんが、リカさんはまず洗礼の儀を受けてもらいます。その後は二人とも私の側仕いとして修練して頂きますので覚悟しておくように」
(これ絶対中途半端に鍛えたらフィオナ様に殺されるやつ、にしてもこの二人なかなかイケ女だな。リカなんて超タイプ)
「アイシャ、二人に部屋を用意して頂けますか」
「はい、エリクト様。ではお二人ともこちらへ」
「あのエレナさん、いきなり教皇様の側仕えって普通ですか?」
「いえ、私も驚きました。私が以前いたときは修道女見習いとして雑用をこなしながらの修練でしたし、そもそもエリクト様にお会いするのも今回が初めてです」
「きっとエリクト様の気まぐれではないでしょうか、それか神からの啓示でもあったのでしょう。それと側仕えといっても基本は私が指導することになると思いますのでよろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いいたします」
リカさんの洗礼の儀は無事終わり、教会での生活が始まる。
その後はエリクト様の側仕いらしいことはなにもせず、聖女としての基礎をリカさんと学ぶ日々、1日の始まりは早朝の掃除から、そして朝のお祈りがある。
その後、朝食を頂き、司祭様の講義がある。
お昼からは巡礼者の対応と聖歌の練習と司教様たちの聖魔法講義を聞く。
夕方になると夜のお祈りがあり、夕食を頂き、またお祈りをして就寝。
そんな規則正しい生活が二か月ほど続いていた。
いつも通り朝食を終えたところでアイシャ様から呼び出しがかかる。
「今日からは私のもとで修練してもらいますが、まずはお二人に転移魔法を覚えていただきます」
なんといきなり高位魔法を覚えなくてはいけないと言われ私とリカさんは委縮してしまった。
確かに本来エリクト様に仕えるのは高位の司祭。
それくらいの魔法は要求されるだろう。
「心配しなくても大丈夫です。補助をする魔道具がありますので、これを使って少し訓練すればすぐ習得できます」
そういわれ私たちは魔道具を渡され、アイシャ様に手本を見せてもらう。
彼女は教会とは違う場所につながる光の入り口を作り出した。
「ここは遥か東の土地です。あなたたちへの最初の課題は転移魔法を習得してサンクトゥスに自力で帰ってくることです。まずはここで生き抜きなさい。そうすれば帰りの道も開くでしょう。期限はありません。戻り次第次の修練です。以上、武運を」
そう言い私たちを見知らぬ土地に放り出しアイシャ様は消えていった。
二か月の基礎後にいきなり見知らぬ地に放置。
教会で始まった修練は苦難の道だった。
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