第14話 最高で最悪
家ができてから俺は魔法訓練の傍らで家の拡張もしていた。
ちなみに家を作る手伝いの条件に、なんでもいうことを聞くと言っていたので、ニナに恐る恐る何をすればいいか聞いてみたところ。
「魔力欲しい」と言われた。
魔力の渡し方はロリババアのこともあり知っていたがとぼけて魔力操作で
「これでいいか」と渡そうとしたが怒られた。
魔力の吸収はそのままではできないらしく、大賢者が発見した生命の神秘で血か精〇を取り込むのが一番だと力説された。
(変態賢者め余計なことを伝承するな)
だがニナは血が嫌いらしい。
「いや、ふつうはどっちも嫌いだよ」
「ニナ両方未経験、でも血、味知ってる、あれ嫌い」
「わかった、だが待て、俺にも準備がある」
「なに?」
「風呂に入ってないから、体が臭う、男の俺でも恥ずかしい」
「ニナ気にならない、拓矢いい匂い」
ニナは匂いフェチだった。
だが俺は負けない、そういうことには順序がとかいろいろ言って何とか説得し延命して今にいたる。
「でもカトレは強引に・・」と言っていたが無視をした。
ということで俺は今、時間稼ぎのためにあるものを作っている。
それはもちろん風呂だ。
この世界に来てから風呂に入っていない。
この世界の人は体を水で毎日洗う習慣はあるが風呂には入らない。
さらに無人島に飛ばされてから井戸もなく、水浴びもろくにできていない。
仕方がなく海水で洗うがとても気持ちが悪い。
ニナにその辺のことを聞いてみたが特に気にはしていない。
逃げの理由でゆっくり風呂を作っていたがニナが手伝いだしてしまい、これも3日でできてしまった。
そして今は井戸が、水がないと逃げている。
そうこうしている間にいろいろな魔法が発現できるようになったので試していた。
だがそのどれも微妙と言わざる負えない。
火魔法はガスバーナー、水はケ〇ヒャーの高圧洗浄機ぐらいの威力、電気は静電気でバチっとなる程度などなど、すごく残念な感じである。
ちなみに水魔法はニナの前では使っていない。
だが、その隠蔽もすぐ無駄になる。
水がないと言ったことでニナは井戸を掘り始めていた。
そしてなんとたった1日で水を掘り当てた、しかも温泉だ。
最高で最悪な幸運である。
たしかに島ということは火山が原因でできているので温泉が出てきても不思議ではない。
日本も島国で温泉大国だった。
だが無人島に来てから少しづつ寒くなってきていたので温泉は内心喜んではいたが、喜んではいけない儀式が待っている。
本当は男として素直に喜ぶべきことなのかもしれない。
前世の俺なら気にせずぶちまけていた。
だが俺はなんのために死に戻ってここにいるのか、その原点を俺は忘れない、忘れていないはずだ。
だが現実は虚しく、その晩、この世界で2人目の裏切り行為を俺はしてしまった。
「拓矢、ご馳走様」
「お前聖女の力なくなるんじゃないのか?」
「大丈夫、ニナ、純潔守られている」
「いやもう純潔じゃないと思うぞ」
「力使える、前よりすごい」
この世界は本当におかしい、男の精〇を取り込んでパワーアップする聖女なんていていいはずがない。
もしかしてリカちゃんもこうなってしまうのか?
「なぁニナ、聖女はみんな魔力を、男を欲しがるようになるのか?」
「村の女が特別、拓矢も特別、内緒の秘術」
「いや秘術じゃないだろ、騙されてるぞ」
「魔力抽出にも技術いる」
よくわからないが村の人間だけならいいが、教会はどうなんだ。
「教会でも秘密なのか?」
「秘密誰も知らない、でもエリクト様は別」
その後ついでにニナにいろいろなことを聞いた。
その一つが教会だ、3つの勢力に分かれているそうだ。
エリクト派は女だけの恐ろしい所。
大司教派は逆に男だけのこれも悍ましい所。
聖騎士派が中立な立場にいるそうだ。
エレナやリカちゃんたちが言ったのはエリクトとかいう村出身の偉い人のところらしい。
エレナとニナは10歳から15歳までそこにいたそうだ、実はカトレも最初はいたが気持ち悪いと言ってすぐに逃げ出したとか。
ちなみになんで得意なのが毒魔法なのかを聞いたら、なかなかえぐかった。
うっかり立ち入り禁止の部屋に入り、こけて壺を割って全身に毒を浴び、死にかけだが教会の人に助けてもらったとか。
九死に一生を得たことで超回復と毒の耐性や魔法を習得するきっかけになったと誇らしげに語っていたが、ただのバカだ。
だがこれで魔法の発現には体験や経験が重要だと理解できた。
とはいえ毒魔法を得るためにニナと同じようなことはしたくない。
しかしニナの超回復は会得したい、無詠唱かつ完全自動の回復だ。
ニナも他者への回復は詠唱がないとできないらしいので経験とはすごいものだと実感したが、リスクが大きく実行する気にはなれない。
だが、魔法とは想像の産物だとロリババアも言っていた、とはいえ俺たちのしている想像とは体験をもとに発生するものであることは間違いない。
きっと強くなるにはきっかけが重要なのだろう。
最高で最悪の出来事に似た何かが。
取り合えずしばらくは温泉で心の傷を癒しながら修業に励もう。
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