第13話 成長のきっかけ
無人島生活2日目、朝日が昇る前に起きた俺は海岸沿いを散歩している。
前日の夜に初めて使った魔法を忘れないよう、人差し指に火を灯しながら歩いている、明かりが必要だったというのもある。
不思議なもので2回目は初めての時のような具体的なイメージは必要なく、感覚で簡単に火を出すことができた。
まだ魔法に関しては分からないことだらけだが時間はたっぷりあるのでいろいろ試してみることにする。
ちなみに俺が早く起きた理由は単純に寝れなかたからだ。
俺が作ったテントは確かに広くはない、だが大人が3人くらいは余裕で寝れるスペースは作った。
それなのに隣で寝ていたニナが俺の空間に簡単に侵入してくるのだ、要は彼女は寝相が最悪だった。
わざとやっているんではないかと思いたくなるような最悪の俺をいじめる寝相だった。
こっちの世界に来ていろいろと溜まっているのにあれはない。
今日はもう少し広い家らしいものを作ることにしよう。
そのための材料集めのつもりの海岸の散歩だったが、前の世界のように色々なものが落ちているわけでもなく、せいぜい流木だけだった。
朝日が昇ってからも1時間近く周囲を散策し、島の地形もある程度は把握した。
俺たちがいるのは島の西側で少し突き出した平地の地形になっていた、東側には大きな山がありその奥は分からない。
北は断崖絶壁の海岸線、南側は砂浜が広がっていて、ここは小島ではなく屋久島ぐらいの大きさかそれ以上ありそうである。
拠点のテントに戻る途中にサトイモかタロイモに似たものを見つけ、食料を手に戻ったがニナはまだ寝ていた。
イモを昨晩のまだ火が燻る焚き火の灰の中にそのまま放り込む。
昨晩ニナに切り分けてもらっていた肋の骨つき肉をイモの葉で包んでさらに灰中に放り込み蒸し焼きにする。
完成まで約1時間ぐらいだろうか、時計はないので感覚だがそれまで魔法の練習でもしていよう。
散歩の途中で火魔法に飽きた俺は、魔力単体で何かできないか考え体外コントロールができることを発見していた。
魔力は体の中では意識したところに移動できる、では外に放出したらどうなるか。
手のひらに集め意識を集中すれば体外でも維持できることがわかった。
ただし、意識を解くと霧散して消えてしまう。
手のひらの上で浮くシャボン玉のようである。
この魔力のシャボン玉、意識すれば形も変えられる、ハート、星、四角の箱、剣・・・!
剣の形にして木を切ってみる、だがシャボン玉が弾けるように消えるだけだった。
魔力で遊んでいるとにニナが起きてきた。
「拓矢、朝からよく頑張る」
「いや、早く魔力で木とか切れるようになりたくてね」
「もっと集中、硬くする、これ男の方がわかると師匠言っていた」
「どういうこと?」
「私も分からない、でもアソコみたく硬く」
(なぜすぐ下ネタにするのか、師匠の教えなのか?)
とりあえずそろそろイモと肉が焼ける頃なので朝食にすることにした。
ニナいわくイモはやはりサトイモだったらしく、しばらくこれと肉が主食になりそうだ。
食後に魔力操作の修行を再開する。
「ニナはどうやって魔力を鋭く刃にする方法を覚えたんだ?」
「ひたすら切り刻まれた」
「え?」
「聖女回復魔法修練、わざと傷つけて治す」
「その時に覚えたと?」
「そう!拓矢切っていい?」
「だめ」
だがニナの魔力に少しだけ触れてみるのはありかもしれないな。
俺はニナに切る力の魔力を纏ってもらい、同じように自身も魔力で纏って触れてみる。
魔力が硬く薄く鋭く研ぎ澄まされ、透明な剣を纏っているみたいだった。
何かを掴んだ気がしたので自分でももう一度やってみるが気のせいだった。
やはり一朝一夕でうまくいくものではない。
とりあえずはこれを練習しながら家を作ろう。
ニナは本当に器用だった。
しかも魔力操作に長けているため力もあり、こちらの要望通り木材を集めさらに加工もしてくれている。
最初は面倒だと渋っていたが、家が完成すれば1回だけ何でも言うことを聞くと言ったらすぐに了承してくれた。
何をやらされるかは想像しないでおこう。
その後ニナが協力してくれたおかげで約6畳くらいの小屋を3日間かけて作ることができた。
3日間俺はひたすらニナの助手として動き、彼女を観察したおかげで、魔力の操作と変化をある程度習得し、手刀で木を切断できるようになっていた。
彼女の話とこれまでの経験で魔力の基礎は自分なりに理解することができた。
魔力は変化と操作、そして属性がすべてらしい。
変化や操作は目で見て感じることができる、だがこの属性が厄介だ。
属性とは火、水、土、毒、木などを指し、いろいろなものを魔法として物理法則を無視して行使している。
ではそれぞれの火や水はどこから湧いてでるのか?
火は大気中や自身の細胞を分解して、水は大気中の水分を集めて、では土やはたまた毒は?
そして空間転移とは?
そこで俺の中一つの仮説を立ててみる、それは魔法はすべて召喚魔法であるということだ。
異空間や異世界から火、水など想像したものを召喚して行使するそれが魔法。
属性とは魔力を操作変化させて力を召喚するもの、召喚魔法だと考えればすべての事象になんとなくだが納得できる。
だが召喚とはなにかに行きつくが、そこは魔力という不思議な力が結びつける縁のような何かと今は考えている。
これらはすべて自分自身の仮説にすぎないが、この考えに行きついてからは魔法という不思議な力をより高めることができた。
そしていずれは召喚魔法という仮説をより深く理解できれば元の世界に戻ることもできるのではないだろうか。
そこはロリババアが何か知っているかもしれないので次会ったら聞いておこう。
無人島に来てから4日目、俺は魔法の深淵に触れたのではないかと高揚したが、やはり現実そんなに甘くはない。
たしかに、火、水、電気、風などなど自身が理解の及ぶ力はすぐに行使できるようになったがどれも威力が微妙である。
それはそうだ見て経験して理解することが重要な魔法において、経験の及ばない創造は力が乏しい。
だがきっかけはつかめた、あとは研鑽あるのみ、ニナを実験台にいろいろ試してみるのもありだろう。
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