第5話 聖者と聖女

俺はいまだに魔力を開眼できていない。

バカ幼女から精通のいや開眼の原理を聞いた翌日、俺は自身の尊厳をどうやって守るか考えていた。

今日は一日エレナさんが修業に付き合ってくれるらしいが俺は朝から体調が悪いと伝えいつもの湖のほとりでぼーっとしている。

さすがにリカちゃんが心配してくれていたが「大丈夫」と一言だけ伝え二人のところから逃げて来てしまった。


(オ〇ニーを、射精をしさえすれば魔力が開眼し俺は力を手に入れることができる。リカちゃんが魔法を使うのを横で見ていたがあれはすごいものだった。初歩的なものとはいえ憧れる力だ。だがその力を手に入れることで俺は尊厳を失うことになる)

もといた世界でも女子は初潮を迎えたときお祝いをされることがあると聞いたことはあるが、精通した男子は失笑されることはあってもお祝いではなく触れてはいけないのが常識だった。

中高校生のガキでも仲のいい友達とそんな話をおふざけですることはあっても、親や異性、近所の人たちに知られるようなことはなく、もし知られれば人によっては自殺に発展する可能性もあるとても繊細なことである。

それをこの世界では男子は魔力開眼で世間に周知されるとはどうなっているんだ?

(いやでも思春期の男子であれば受け入れられるかもしれないが、俺は思春期を過ぎたいい年したおっさんだぞ)

もしここが魔女の村でなかったら話はもっと簡単だっただろう。

村には若い美魔女しかおらず、そして俺が魔力を開眼していないことを美女たちは皆知っていて、さらに今はリカちゃんが一緒に1つ屋根の下で生活をしている。

エレナさんから精通どうこうの話は聞いていなくとも、もしかしたら彼女が読んだ魔術書に同じようなことが書いてあってもう知っているかもしれない。

(最悪だ、「あ!オ〇ニーしたんだこの人」って顔で見られたくない。いっそこのまま剣に磨きをかけてやっていくか?いやダメだ、そのうち夢精というタイムリミットがやってくる)

湖を眺めながら絶望した顔をしている俺に絶望のきっかけを与えた幼女が声をかける。

「どうじゃ、スッキリしてきたか?」

「してないよ、バカ幼女」

「バカ幼女とは失礼なやつじゃ。それにしても拓矢おぬし実は玉無しじゃったのか?」

「違うよ、バカ幼女」

すでに尊厳の一部を傷つけられた俺は、フィオナに対して丁寧に接することをやめていた。

「男なら千磨りくらい簡単であろう?なんでできんのじゃ?」

「簡単にいうなよ。周りは女性ばかりでしかも仮住まいで気を使うし、トイレもあれだし、とにかく無理なんだよ」

「それなら一緒に来たという同郷の女に頼んで抜いてもらえばよかろう」

「殺すぞ、そんなことできるわけないだろ」

「なんじゃ、おぬしら恋仲ではなかったのか?」

「違うよ」

「そうか、じゃあ遠慮はいらんの、どれワシが抜いてやろう」

(本当にこのバカ幼女はなにを言っているだ)

バカ幼女は本当になんの遠慮もなく俺の股間に手を伸ばし触れてきたが、触れられた瞬間に身を引き身構える。

「なんじゃこの美少女フィオナ様が抜いてやろうというのに遠慮するのか?あ!もしかしておぬし男色家だったのか?」

「元気づけてくれようとしているのかもしれないけど、なんで俺にそんなに開眼して欲しいんだよ?」

素直に疑問に思ったことだった。

「それは開眼すればそのうちわかることじゃ、時間がないんじゃ、ちと乱暴するぞ」

(乱暴するぞって幼女の言葉じゃないぞ)

そういって呪文を唱え始めるフィオナ

「木々よ集まりて我が命に応えよ、リストリクション パラライズ」

呪文を唱え終えると同時に地面から動く木の根が飛び出し俺に襲い掛かってくる。

咄嗟のことだったが、剣の訓練をしていたおかげかうまく後ろに引き、避けるることができたと思った、だが。

「今のおぬしじゃ逃げ切れんよ」

その言葉が聞こえると同時に体がしびれ意識が遠のいていき、あっけなくフィオナに拘束されてしまったのである。




「そろそろ起きんか馬鹿者が」

フィオナに声をかけられ目を覚ますが、手足は拘束され身動きは取れない状態だった。

(ここはどこだ?湖のあの場所ではないな。室内か?)

「ここはワシの隠れ家じゃよ。ここに来れたこと光栄に思うがいいぞ」

「あの、拘束解いてくれませんか?」

「ダメじゃ、でも今からここで自分でするというなら解いてやるぞ」

「で、できるわけないだろ。いいから解け」

「だからわしが手伝ってやると言っておるんじゃ、ありがたく思え」

俺はなんとか抜け出そうとあがいてみるも完全に手足が大の字に拘束されていてなにもできない、そうこうしているうちにフィオナの魔の手が俺に迫ってくる。何もできずに下半身をさらされてしまった俺は彼女に玩ばれてしまう。

だが俺に幼女趣味はない、なによりこの拷問に近い状態で息子が機能するわけがない。

「おい、拓矢どういうことじゃ、元気がないぞ」

「無駄だよ、俺は幼女に屈したりはしない。M属性もない。だからこれを解いてくれ」


フィオナは少し手を止めて考え込んでいた。

「う~むしょうがないのう大サービスじゃぞ」

そう言ったフィオナの姿が少し光、大きく成長していく。

なんとリカちゃんそっくりの姿に変化していったのだ。

「この姿ならよかろう」

そう言ってフィオナは再び襲ってくる。


俺は、俺の息子はフィオナに負けてしまった、卑怯だ。

「ごちそうさま、予想通り濃い魔力じゃ」

ことを済ませた彼女はいつのまにか幼女の姿に戻っていた。

奇しくもフィオナによって魔力を開眼させられた俺は彼女の周りにまとうオーラのようなものが感じ取れていた。

フィオナのそのオーラは力強く神々しく、どこか恐ろしくも感じた。

「どうじゃ世界が変わったじゃろ?」

たしかに世界は変わって見えた、自分の魔力も知覚することができた。

だが幼女に屈してしまったことが悔しかった俺は嘘でも泣きたい気分だった。

「なんじゃ泣くほど気持ちよかったのか」

「違うよ。それより早く拘束解いてくれよ。この体制惨めなんだよ」

拘束を解かれても俺はしばらく半裸で放心して本当に泣いてしまった。

「も、もしかしておぬし聖者になりたかったのか?そ、それならすまんことをした」

「聖者?なんだそれ?」

「よかった違うんじゃな。驚かすでないわ」

(勝手に勘違いして勝手に安心して身勝手な奴だ)

「で聖者ってなんなんだ?ちゃんと教えろよ」

「そうじゃな、聖者とは神聖魔法を扱う者たちのことじゃ、奴らは開眼後神に身をささげることで神聖魔法が使えるようになると信じた、頑なに童貞と処女を守る変わり者たちじゃよ。エレナも聖女の卵じゃし、拓矢の連れのお嬢さんもそのうち目指すんじゃないかの。たしかそんなことをマリアが言っておったぞ。でも拓矢は違うんじゃろ?もしどうしても神聖魔法を使いたいならわしが特別に裏技を教えてやらんでもないが」

「なんでビッチで幼女なお前が神聖魔法を教えれるんだよ?今の説明と矛盾しているぞ?」

「ん?わし元聖女じゃし。今でも使えるんじゃよ神聖魔法」

(おどけた姿で言っているが本当は何者だこのビッチ?)

「じゃあ念のためもう一度聞くけど俺の開眼に固執した理由はなに?」

「もう隠す意味ないし教えるけど、おぬしの魔力が目的じゃよ。この村の魔女の大半は男から魔力を吸い取って今の力を維持しておるんじゃ。そういうわけで拓矢、わしと契約せんか?」


このビッチ幼女が持ち掛けた契約が俺の異世界での立ち位置を大きく変える転機となることをその時俺はまだ気づいていない。

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