第4話 屈辱の魔力開眼
俺は今、魔女の村に滞在している。
魔女の村と言っても男子禁制というわけではない。
(すごく安心した)
魔女の村というのは通称で本当はレイクホルトいうらしい。
魔女の村の由来はこの村の人たちの魔力が高く、それゆえ長命だから。
村には男がいる時期もあるが、いてもすぐに村から出て行くらしい。
当然、生まれてくる子供の中には男児もいたみたいだが大人になると同じように皆村から出て行くのだそうだ。
その理由として村の女性が長命なのに対して村で暮らす男性はほぼほぼ短命なるからだという。
生まれてくる男児も同じように魔力は高く、村の外で暮らせば長命な人が多いらしいが村で暮らすことで短命になる。
そんな状態が300年ほど続いたせいで魔女の村なんて呼ばれているのだとエレナさんは教えてくれた。
ただし男性が村で暮らすことで短命になる理由だけはエレナさんは教えてはくれない。
俺もここで暮らせば短命になるのかと聞いてみたが目を逸らしはぐらかされてしまった。
「大丈夫です、短命と言っても1年や2年ですぐに死ぬというわけではありませんので。私の父も、私が6歳になるまでは村で一緒に暮らしていましたし・・・」
「でそのお父さんは今どこに?」
「父はコーパヴォルグという港町に住んでいます、私も仕事でよく訪れることのある街なんですよ」
(まだ何かを隠しているような気はするが、6年は生きれるらしいのでとりあえずは大丈夫か)
「ではリカさん希望の魔法についてお話しますね」
村長の異世界人は魔法の適性があるという言葉を聞いてリカちゃんが魔法を覚えたいと懇願し今に至る。
正直この世界で生き抜くためには必要なことだと俺自身も話を聞いてみたいと思ったことだ。
「万物には魔力が宿ります、木も花も、そしていま私たちが感じているこの風にも微量ですが魔力は含まれています。魔力は生命であり力の源でもあります。魔法を使うためにはまずこの魔力を知覚することから始めなければいけません。お母さまが言うには異世界の方は魔力適性が高いということですが、それは魔力を感じる力がと操る力が強いということです」
「え?でも今は何も感じませんよ?ね?」
「いえ、私は強い力の波動をひしひしと感じています」
(あれ?リカちゃんってこんな子だったっけ?もしかして中二病?いや大二病か?)
「リカさんすごいですね。私の魔力をもう感じ取れているなんて、リカさんはもう眼が開いているのかもしれませんね」
「眼が開く?」
「はい、眼が開くことで魔力を感じ、視認することもできるようになります。通常は子供のころから魔力に触れることで適性のある方であれば自然と開くものなのですが」
「てことは時間がかかるってことですか?それとも今の時点で感じれていない俺はもしかして適性なしですか?」
「魔力の開眼には適正があっても個人差があります、正しい手順を教えますので焦らず頑張ってください」
その後は瞑想と文字の勉強。お互い言葉が通じるので文字も読めると思っていたがさすがに無理だった。魔法を学ぶ魔法書を読むためだけでなく、今後この世界で生きていくためには読み書きは必須だろう。
異世界人はある程度は手厚く保護するのが村の昔からの方針らしい。
(俺たちはほんとうに運がよかった)
4日が過ぎたが村の生活にも少しづつ馴染みつつある。
村人愛用の服を俺たちも用意してもらい着ている。
見た目は麻に似た何かでできた拳法着みたいな見た目である。
(とても動きやすい)
村人は皆美人で、いや親切で魔法修業頑張ってとよく声を掛けてくれる。
だが俺はいまだに魔力を開眼できずにいる。
ちなみにリカちゃんはというと、すでに初歩的な魔法を使えるようになっていた。
(きっと彼女はいろいろな意味で親和性が高いのだろう。それにくらべて俺は・・・)
ただ文字に関しては逆で俺はすでにマスターし、彼女は苦戦していた。
この世界の文字は平仮名のような簡単なもので漢字に比べれば文字数も圧倒的に少なく大したことがない。
しいていえば見た目は全然違うが成り立ちはハングル文字に近いだろうか。
だが魔力は別だ、まったく知覚できない。
午前の修業を終え、文字の勉強の必要がない俺は朝の散策で見つけた村はずれの小さな湖のほとりで一人瞑想をしていた。
ここは静かでとても気持ちのいい場所だ、大きな大木がありその木陰は瞑想をするにはぴったりの場所である。
目をつむり風を感じ心静かに自然に耳を傾けていると、幼い声が俺に話しかけてきた。
「おぬしが最近現れた異世界人か?なるほど、まだ開眼してないというのは本当じゃったみたいじゃな」
(もしかしてこれは妖精に話しかけられているのか?ということは俺もついに秘めたる力が解放される時がきたか)
「おい異世界人!聞いておるのか?おい!」
(これは心で会話たした方がいいだろうか、はい!聞いています)
「目を開けてこっちを見んか馬鹿もん」
ゴツンと頭を叩かれる。
目を開け後ろを振り返ると、そこには幼女が立っていた。
(身の丈に合わないブカブカの白い服を着たツインテールの幼女?こんな子村にいたっけかな?というこかこの村子供いたんだ)
「はじめましてお嬢さん、私は神代拓矢といいます」
(村の淑女たちからの評判が落ちないよう子供とはいえここは丁寧に紳士らしく対応しよう)
「ほう、自己紹介とは丁寧じゃな、わしはフィオナじゃ」
「ところでフィオナちゃ・・さんは俺に何か用ですか?」
「いや異世界人なのに魔力がないかもしれない坊主がおると聞いたから見に来たんじゃ、で拓矢は何しておったんじゃ」
(異世界人なのに魔力がないだって?もしかして村で噂になっているのか、にしても年上に対して坊主とはなんだ?しかもいきなり呼び捨てとは)
「そうなんです、今だ魔力が知覚できないので頑張って瞑想していたところなんですよ」
「そうか、それは邪魔したな。頑張って早く魔力を開眼するんじゃぞ」
そういって彼女は去って行った。
その後幼女に会ってから1週間、俺の魔力はいまだ眠ったままである。
修業を始めて5日目ぐらいでエレナさんはやり方を替えてきた、いや諦めたのだろう。
瞑想の時間は、剣の訓練に替わっていた。俺がエレナさんに剣を教わっている横でリカちゃんは魔導書を読み魔法の勉強をしている。
瞑想が剣の訓練に替わった理由は心がダメなら体を鍛えて魔力を目覚めさせるやり方らしい。
それに魔法がダメでも剣が使えれば冒険者にはなれるからと、そういう冒険は多いとエレナさんは励ましてくれた。
エレナさんはめちゃくちゃ強い、正直手も足も出ない。
それでも運動神経にだけは自信があった俺は意地で彼女に食らいついていった。
エレナさんは常に俺たちの修業に付き合ってくれているわけではなかった、仕事に行くといって俺たちに課題を残し出かけていくことも多かった。
今日も朝からエレナさんは仕事に出かけていき、俺はいつもの湖のほとりで瞑想をし、剣の素振りをしていた。
ちなみにリカちゃんはというと、魔導書を読めるようになったことで自室にこもり読書をしているみたいだ。
(なんだかこの村に来てからリカちゃんとの距離が開いて行っているような気がするな。俺の魔力の眼は開かないというのに)
「おう、拓矢。今日も朝から頑張っておるようじゃの」
フィオナが今日も話しかけてきた。
あれからここで何度か彼女と会い、すっかり仲良くなってしまっていた。
いや懐かれたの間違いか。
「おはようございます」
「うむ、おはよう」
仲良くなったとはいえ丁寧な対応は変えていない、そしてフィオナは相変わらず偉そうな態度である。
(まぁ子供のしていることだし、可愛らしいと思えば気にならない)
「ところで拓矢いつになったら開眼するんじゃ?」
「痛い所をついてきますねフィオナは、俺がここでずっと頑張っていることは知っているでしょ?」
「知っておるから聞いておるんじゃ」
しばらく俺の素振りをいつものように見物していたフィオナがしびれを切らしたように話かけてきた。
「もう少し様子を見ようと思っとったがやっぱやめじゃ。ちょっと手を出して瞑想してみろ」
そういうと俺の両手をつかみフィオナも静かに目を閉じる。
「拓矢こっちに来て何日目じゃ?」
「え?異世界に、この世界に来てからか?11日目?ですかね」
フィオナに掴まれた手が少し温かい。
「う~む、歪んでおるし、魔力回路が詰まっておるな」
「そんなのわかるんですか?」
「当り前じゃ」
(ただの子供と思っていたけど実はすごいのか?村一番の天才少女的なやつか?)
「ところで拓矢よ、ちゃんと抜いておるか?」
「え?力は抜いてますよ」
「違う、射精はしとるかという意味じゃ!」
(この幼女はいきなり何を言い出すんだ?たしかにこっちの世界に来てから抜いたことはないが。そもそも個室で寝ているとはいえ、今はそんなことをする精神状態ではないのだよ)
「でどうなんじゃ?」
「えっと女の子が男の子にそんなこと聞くもんじゃないですよ」
だがフィオナは言葉強くこう教えてくれた。
この世界の人間は一般的に男子は精通、女子は初潮を迎えるときに魔力が開眼するものらしい。
魔力は生命の源であり、生命と魔力を司る臓器が人には2つあり1つが心臓で、もうひとつは男が精巣、女は卵巣。
故に性的に絶頂することで魔力回路が大きく開くらしい。女子に関しては絶頂せずとも月に一度ある月経の時に魔力回路が緩くなるとかなんとか・・・・。
(幼女の妄想にしてはずいぶんと説得力がある話である。いやあるのか?この世界どうなってるんだ。)
つまり俺は異世界に来てから溜まっているせいで開眼できていないのだという。
「理解したか?わしは物知りなんじゃ。というかこの村の者なら全員知っておるはずじゃぞ。まぁでもエレナなら生娘じゃしあっちに関しては疎いのかもしれんな」
「勉強になりました、はははってマジで言ってる?」
「うむマジじゃ、明日は楽しみにしておるぞ。なんなら今から抜いてきてもいいぞ」
(もしこのバカ幼女の話がほんとうだとして、いや本当の話っぽいが、ここで俺が魔力開眼したとしたら、俺は今日オ〇ニーを、射精をしたぞ!とエレナさんに、いや村中に周知するようなものじゃないか)
その日俺は何もやる気がおこらず湖のほとりで寝て過ごしてしまった。
バカ幼女が横で騒いでいたが無視をした。するしかなかった。
その晩エレナさんが今日はどうでしたかと聞いてきたが、射精はしましたかと聞かれているようで返事をすることができなかった。
「気にせず頑張ってくださいね」
彼女のやさしい言葉も真実を知ってしまってはまともに聞こえない。
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