私が個人的に選ぶ今月号のベスト入選歌。

バイク飛ばす国道は雨ずぶ濡れの顔が体が闇にめり込む  土屋雅彦


掲出歌は選者の一人である久我田鶴子氏に特選に選ばれていますが、

僭越ながら、補足解説してみたいと思います。

掲出歌は普通に考えれば、尾崎豊の代表曲「15の夜」の

本歌取り(美しいパロディー)なのでしょう。

場面としては、「15の夜」が夜だけなのに対して、掲出歌では、

闇(夜)に雨を加えて、よりドラマチックな雰囲気を醸し出しています。

そして1番の違い(醍醐味)は、「15の夜」では、(盗んだ)バイクに

乗った主人公が暗い夜の帳(とば)りの中へ突っ込んでいくのですが、

掲出歌では、バイクに乗った主人公の全身が、雨のせいか金属性を帯びて、

闇にめり込んでいくように感じると言うのです。

尾崎の「15の夜」に対する深いオマージュを感じさせる鮮烈なこの1首。

実に見事だと思いました。

なお、掲出歌を少しだけ添削してみます。ご参照ください。


バイク飛ばす国道は雨ずぶ濡れの顔に体に闇がめり込む



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角川歌壇、「短歌」2023年9月号より 滝口アルファ @971475

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