面白い出だしから始める素敵な作品です。
地の文が一人称で語り部が続く内容ですが、文体が丁寧に字下げして表示されており、小説が苦手な方でも読みやすいと思います。
物語はある作品からの二次創作のようですが、上手い具合にオマージュされており、原作を知らない方でも楽しめる作りです。
あっと驚くどんでん返しもあり、最終話の流れも見事でした。
シリアスになりそうな超能力をコミカルに描いている手法も見事だと思います。
時代の風習、テンプレに流されず、原作が好きなことを通じて、物語を思うがままに描く独自の発想力。
ミステリー要素もあり、世代を超えても愛される隠れた短編小説ですね。
あれ、この感覚、なんか覚えが。
思い出した。昔、筒井康隆氏の七瀬ふたたびを読んだ時の衝撃。
レアな能力を持った者は、ときに、その能力に人生を翻弄される。
それは神に与えられたギフトなのか、悪魔に科せられた枷なのか。
どちらだとしても、その能力が自分の命を代償にすることも顧みず、今、この時となったら惜しみなく、それを発揮する。
その能力ゆえに、望まぬ敵と対峙する宿命にも立ち向かう。
そんな登場人物たちが、悲しいほど愛おしい。
そして、ただ悲しいだけで終わらない、ドライで今っぽいエピローグも、また良き。
それにしても、この質量の文章でこれだけの衝撃を与える作者はいったいなんの能力者?
もしかして、カクカクの実とか食べて、カナヅチになってたりする?