第6話 配信機材

「よいしょっと、ふぅ」


坂上に案内されたのは生徒会室だった。


そこでダンボールの中に手を突っ込んでなにかを出てきた坂上。


「はい」

「なに、これ?」


受け取ったのはラジコン?みたいなものだった。


ヘリコプターのようなラジコン。


「ドローンだよ。小型の」

「なにに使うの?こんなの」

「動画撮影とか。ほらPR用の動画もスマホで撮影するのたいへんじゃない?」


そう言われて使い方を教わる。


ブーン。

起動した。


勝手に飛び回るドローン。


「こういうのって勝手に飛びしていいの?」

「うん。いいよ。ちなみに超高性能ドローンだから基本的に自動操縦でいいよ」


そうなんだ。


へー。便利なものだよなぁ。

ドローン。


「ほんとうはね。入学と同時に渡されるんだけど、突然のことだからさ。遅れちゃってごめんね」


そう言ってる坂上。


俺としては謝られる道理はないんだけど。

説明書を手に取って飛び回っているドローンに目をやる。


「すごいなぁ。ストップ」


俺が言うとその場で回転をやめてそのまま着陸するドローン。


「すげぇ、音声認識なんだ」

「すごいでしょ。かわいいよね」


かわいいかは知らないけど俺はそのままドローンを操作していく。


えーっと。


「あった、これが撮影モードか」


撮影モードにしてみたらライブ配信が始まった。


「おー、映ってる」


ちょっと遅れて俺のスマホのライブ配信からも同じ声が出てくる。


「すごいなこれは」


撮影モードをやめた。

これなら簡単にライブ配信ができそうだ。


「いっしょにいいパーティに入ろうね」


そう言ってくれた坂上の笑顔で言ってくれたので頷く。



ドローンを受け取ったので寮に帰ることにした。


ついでにSNSアカウントも作っておいた。

そこでツイートする。


俺:ダンジョン配信についてそのうちまた活動していくので、その時はよろしくお願いします。



簡単にそれだけツイートした。


これからのことも考えて本名で配信しようと思う。

実際みんな本名で配信してる人が多いからね。


さてと。


「余裕もできたし久しぶりに動画サイトでも見ようかな」


なにか、おもしろい動画でも上がってないかなー?


そう思ってジュースでも飲みながら見てみたら


「ぶふぉっ!」


盛大にジュースを噴いた。


「なんじゃこりゃあぁぁぁぁあ!!!!!」


画面に目を戻すとそこにはこんなタイトルの動画がズラーっと並んでいた。


【ゴブリンを右ストレートで粉砕する男現るwww】

【ミノタウロスに飛び蹴りかます男の子www】

【ミノタウロス「もう十分だよ」???「いえいえ、まだまだ遊んでくれよ」】


「お、俺の切り抜き?!」


どうやら昨日の配信が勝手に切り抜かれているらしい。


しかも再生してみると


「うわ、広告ついてんのか」


やりたい放題だなこいつら。


でも……自分のチャンネルを見てみると登録者10万人くらいいるんだよな。

今まで見る専だったからチャンネル登録者0だったんだけど。


「この切り抜きのおかげで俺のチャンネルの登録者増えてるのかな?」


"切り抜きからきました!"

"すごいですね主"

"なにか格闘技とかやってたんですか?"


どうやら切り抜きから俺のチャンネルを知って登録してくれた人もいるみたいだ。


一概には悪と言えないけど。


「次からは切り抜きは禁止するか」


うん。

俺はそう決めて動画を漁ることにしたのだが。


「ん?」


とある動画のチャンネルで手が止まった。

それは


【結奈チャンネル】というチャンネルで。


サムネが、


「これ、坂上だよな」


思わずクリックした。

動画を見てみると俺がミノタウロスを倒す配信だった。


「配信してたのか」


そう思って見てたら俺が帰って行ったあとの動画も残されていて。

見ていると


「すてきなひと……」


って言われてた。


更には


「ちゅき♡」


ってつぶやいてた。


俺も少しして叫んだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあ?!!!!!ちゅきっ?!」


落ち着いてから俺は動画再生を止めた。


「もう再生するのはやめよう。見ちゃいけないものな気がする」


うん。



翌日俺はまた学園にやってきた。


いつものように授業を受けてそしてダンジョン学の時間になった。


ダンジョンができてからの日本にはダンジョン学というものが導入されてダンジョンについての諸々の知識を学ぶことになっている。


一昔前の数学や国語と同じポジションだ。

そこで課題が出た。


「明日から土日だからみんな時間も取れるだろう?どこでもいいからダンジョンをクリアしてきてくれ。ただし成績に関わるからな。できるだけ自分がクリアできそうなところに行くように」


とのことらしい。


ちなみに基本的にこういう課題はパーティを組むのが当たり前だが


「ソロでいいかな、別に」


俺はまともに友達がいたことがない。

だからいつもこういうのはソロでやっていた。


(思い返してみれば誘われたこともないしな。ていうかビチ子の奴すら俺のとこ誘いに来なかったしな。なんで察せなかったんだろうか)


それに


(配信待ってくれてる人もいるかもしれないし)


それだとあまり大人数で行くのは良くない気がする。


そう思っていたら坂上がきた。


「ねぇ、白銀くん一緒にダンジョン行かない?」


それから


「修也いっしょにダンジョン行こうぜ」


ゴウも声をかけに来た。

2人ほぼ同時くらいのタイミングだった。


んで、2人は顔を見合せた。


「私が先に声掛けたもん」

「いーや。俺だね」


そんなことを言い始めた。


うーん。このままじゃ喧嘩になりそうだな。


よし


「ごめん。俺ソロで行くつもりだからさ。また今度誘ってくれる?」


そう言うと2人は口を揃えてこう言った。


「「ソロ?!」」


どうやらソロという部分に驚いているらしい。


「お前、まじかよ修也。ソロっていくらなんでも難しすぎるだろ?」


ゴウの言葉にニヤニヤする坂上。


「あー、そうか。知らないもんね君は。実はね白銀くんてめちゃくちゃ強いんだよ」

「はぁ?なんだそりゃ」


そう言ってるゴウの前で坂上は昨日の配信の切り抜きを一本見せていた。


「あぁん?!ゴブリンをワンパンチ?!それからミノタウロスにキックぅ?!」


俺の戦い方に驚いているらしい。

それを見てニヤニヤしてる坂上。


「凄かったなぁ白銀くんの戦いは。私間近で見ちゃったもんね〜」


勝ち誇ったような顔をしていた。


ゴウはそれを見てこう言ってきた。


「なぁ!修也!俺にも見せてくれよお前のハイパーパンチ!」


「あ、あはは……ごめん。また今度ね」


俺はゴウが気を悪くしないように丁重に断ることにした。


ほんとに悪いと思ってる誘ってくれてるのは嬉しいんだけど、とりあえずソロでやってみたい、という気持ちもあったから。

そっちを優先しようと思う。



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