第5話
「練習に戻っててくれ」
ヤンキーの声でサッカー部は練習に戻った。
それから俺に目を向けてきた。
薄々気付いてたけど俺が勝手にヤンキーと呼んでるだけでこいつ実は……
「昨日とは制服違うけど転校でもしてきたのか。ようこそ白光へ。歓迎するよ」
手を差し出してきた。
(あれ、いいやつ?)
見た目からは想像できないようないいやつっぽさを感じる。
坂上が男に経緯を説明すると男は謝ってきた。
深深と頭を下げていた。
「すまん。やっぱ彼氏だったのか」
予想外の展開にびっくりした。
それから男は名乗った。
「俺のことはゴウって呼んでくれ。彼氏持ちだって知らなかったんだ。すまん。知ってたら平山のことなんて無視してたんだがな」
話を聞く感じどうやらビチ子がゴウに言いよってたらしい。
サッカーの試合を見に来てて、そこから遊ぶようになったらしい。
あの時も自分からあそこに行ったわけではなく、呼び出されたそうだ。
ってことは。同じ被害者っぽいよな。
「とんでもねぇなあの胸糞悪い女。今度会ったらぶん殴って俺も絶縁してくるわ」
そう言ってサッカーの練習に戻っていった。
(見た目からは想像もできないほどのいいやつだったな)
坂上が声をかけてくる。
「本当にすごいですね。コメント欄も盛り上がってますよ」
そう言って俺にコメント欄を見せてきた坂上。
"今の【腹破り】のゴウだろ?"
"あのシュート片手で止めんのまじでやべぇwww"
"聞くところによるとサッカーボールでドラゴンの腹ぶち抜いたって噂だぞ"
"あのシュート片手で止めるのはほんとにやばいwww"
"てか防球ネットくん役に立ってなくてワロタ。防球とはいったい"
そんなコメントが残っていた。
どうやらあのシュートはそこまで凄いものだったらしい。
それを見てにんまりと笑顔になる坂上。
「偶然ですけどこれ以上ない見せ場が取れましたね。紹介の素材集めはこれで終わりましょうか」
そう言ってライブ配信を終える坂上。
その後今日のところは解散することになった。
寮に帰って俺はスマホを触ってた。
んで、動画サイトのアプリを開くとトップにこんな動画が急上昇で上がってた。
ちなみにライブらしい。
【立ちんぼ女を観察してみる】
再生してみることにした。
なんとなく見覚えがあるアングルだったから。
再生してると声が入った。
『お、あの子かわい〜。いくらで買えるんだろ立ちんぼ女』
昨日俺を案内したやつの声だった。
(あいつライブ配信してたのか気付かなかった)
で、場面は俺がビチ子の前にいくシーンになった。
そこでビチ子の声が入ってた。
『雑魚に興味無いから』
そのセリフが流れた瞬間コメントが大荒れしていた。
''まとめサイトから来ました''
"なんだこいつ。一方的に裏切っといてこれなの?笑"
"ヤバ"
"パパ活女ってやっぱキショいなぁ"
"↑まぁ、マトモな頭してたらやらんからな。いくら金貰えるとは言え"
"しかも見た感じ高校生だろこいつ?"
"この立ちんぼを買えば大量の性病ゲットだぜ!性病コンプ厨、早く買いに行けよ"
このライブ配信は大手まとめサイトにも取り上げられていた。
このライブ配信単品じゃそこまでの効果はなかったようだが、俺の件とビチ子の件で混ざりあってとんでもない炎上になっていた。
【これは酷い】先日の男子高校生が自暴自棄配信をした原因が何者かによって暴かれる【胸糞】
みたいな感じにまとめサイトで取り上げられていて。
俺は両方の配信で顔を出していたからすぐに関連性があることが分かったらしい。
そこからビチ子を特定する流れになっていってた。
ネット上ではビチ子のあまりのクソさに俺に同情してくれてる人が多かった。
「やば、俺しーらね」
自分の撒いた種だ。
あとはなんとかしてくれ。
俺はスマホをスリープにしてなにも見なかったことにした。
忘れよう。今日のことは。
俺はなにも見てない。
◇
翌日俺は早速白光で授業を受けることになった。
授業について行けるかと思ったけど、先生の教え方が上手でなんとかなりそうだ。
それに、個別指導システムというものもあって、対面で教えてくれる補講のようなシステムもあるらしい。
すごいよな。私立学園ってのは。
で、その日の昼休み。
「よっ」
ゴウに声を掛けられた。
実は同じクラスだったのだ。
「昼飯どうよ?ここの飯美味いんだよな」
そういえば食堂とかも行ってみたいな。
「行くよ」
「そう来なくっちゃな」
食堂に行った。
券売機の前に立ったけど硬貨を入れるとこがない。
「あー。聞いてない?学生証で買えるんだよここ。ってかここの食堂は基本的に無料なんだよ。この学園の授業費とかはそれ込みの値段なんだってよ」
ピッ。
学生証をかざすと食券が出てきた。
「なっ?」
「おぉ……」
俺も学生証をかざしてみた。
スルッと出てくる食券。
すげぇ、流石私立だ。
んで俺は気になってたことに聞いてみた。
「そのオレンジの髪の毛地毛じゃないよね?」
ちなみに俺の第一印象の理由がこれだ。
普通こんなド派手な髪色にしないからな。
「染めてるんだよ。ここけっこう校則ゆるいから毛染め許されてるよ」
(すげぇんだなここ)
「ほら、冒険者なんて髪の毛の色なんでもいいしな」
なるほどな。
そういうものなのか。
とは言え俺は染める気は無いけど。
でも分かったことがある。
本当に校則が緩いらしい。
そこでゴウは聞いてきた。
「そういえば、ビチ子のチャンネル知ってる?」
「いや、知らないな。初めて聞いたな」
「あいつ動画配信やってんだよ。見る?」
そうしてゴウに昨日の配信を見せてもらった。
"ブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブス"
"性病のデパート"
"性病爆弾"
"神様がいろんな性病を渡した女"
"神様が適当に作った女"
"性病の総合商社"
"すみません。梅毒が欲しいのですがおいくら万ですか?"
"↑ホ別苺らしいよ"
"HIVが欲しいです!売ってください!"
みたいなコメントがめっちゃ書かれてた。
「うわっ、どうしたのこいつ」
「知らね。めっちゃ荒らされてんな」
ビチ子はそのコメントにブチ切れて配信を終わったらしい。
まぁ、「ざまぁ」って気持ちしか出てこないや。
胸がスカッとしたな。
そうこうしてたら昼食の時間が終わった。
こうして昼からの授業が始まる。
・
・
・
放課後になった。
俺はひとりでとりあえずスマホを出してみた。
昼食の時見せられたビチ子の様子でも見に行こうかと動画アプリを起動したんだけど。
「ん?」
アプリの通知欄に99+って表示されてることに気付いた。
大量の通知が届いているみたいだった。
「なんだ、この通知」
開いて見てみると昨日の配信にコメントが来ているようだった。
内容は
"このまま配信活動を続けるつもりですか?"
"次のダンジョン配信がみたいwww"
"はやく!次のダンジョン配信を!待ちきれないよ早く出してくれ"
"鉄拳制裁配信また見たいww"
そんなコメントがついていた。
どうやらダンジョン配信が待ち望まれているようだが。
うーん。
さてどうしたものか。
元々ダンジョン配信のつもりはなかったんだけど、ダンジョンを攻略しているうちに俺もダンジョン攻略の楽しさを思い出してしまった。
昔はダンジョンが楽しくて何度も何度も潜ってレベリングしたんだよな。
で、リミッターを導入して縛りとかもやったりしてた。
今のレベルはその賜物なんだけど。
ビチ子が「ダンジョンばっか行くのつまんない」って言ってからご無沙汰だった。
久しく忘れてたなダンジョンの楽しさを。
モンスターをぶん殴る感触を。
「また、行きてぇなぁ、ダンジョン」
そのついでに配信をするのもありかもしれない。
そうとなると、また今度告知でも出してみようか。
本格的に活動を始めるっていう告知を。
だが、機材はどうしようか。
そう思ってたときだった。
「白銀くん、今いい?」
坂上に声をかけられた。
なんの用だろう。
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