第4話 思わぬ再会
坂上という理事長の提案で俺は【白光学園】の校門前に来ていた。
今日は平日だが現在の学校はいちおう体調不良で休むと伝えてやってきた。
「お待ちしておりました。白銀くん」
ニコニコした笑顔の坂上学園長と目が合った。
その横には
「ひゃ、ひゃうっ!しゅ、しゅーや様!本物!」
昨日の聖女らしき子がいた。
こんなところでまた会うなんて、思ってもいなかったな。
「娘なんだけど、この子がどうしても白銀くんを引き抜いて欲しいと言いましてね。いやぁ、困ったものですよ」
なるほど。
(速攻俺に連絡がきたのはそういう経緯があったわけか)
そんなことを思いながら俺は先を促す。
「学園を案内してくれるんでしたよね?」
そう聞くと学園長は頷いた。
「娘に案内させるよ。それで転校するかどうか決めるといい」
そう言われて俺は気になっていたことを聞いてみることにした。
「でも、転校ってそんなに簡単にできるんですかね?転校なんてしたことなくて分からないんですけど」
って聞いてみたら理事長はこう言った。
「そんなに難しくないよ。書類だけあればすぐにできるよ」
との事らしい。
「でも俺のことよく引き受けてくれる気になりましたね。あの行動はマナーのいいものじゃなかったし。俺のこと知ってるってことは見たんですよね?」
実際俺は厄介者だろう。
あんな自暴自棄な配信やっちゃって。
その時点で自分が落ちぶれていくのを覚悟したんだけどな。
「ははは。私はこの子の目を信じているさ。君はなにも悪くない、ってさ」
聖女を見てそう口にする学園長だった。
ここでやっと聖女が名乗る。
「坂上 結奈です。では学園を案内しますよ」
笑顔でそう言ってくれた。
それで学園内を案内してもらうことになった。
◇
学園を案内してもらったら夕方になっていた。
俺は転校することを決めた。
前の学校に執着することもないし。
あんな奴と同じ高校に通う気持ちになれないし。
それにここの学園の生徒はみんないいヤツらだった。
それで手続きをしてもらっていた時だった。
理事長が口を開いた。
「ではもう最後の手続きを進めるよ。いいね?」
そんな言葉に俺は頷いた。
「はい。お願いします」
そのまま俺は制服の採寸作業などをしてもらうことになり、転校が完全に決まった瞬間だった。
・
・
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もろもろの作業が終わり俺は学園長に寮の鍵を渡された。
ちなみに現在の学校はほとんどが寮を用意してる。
ダンジョンが出来てから親が帰ってこなくなった、とかはよくある話になったので学校側が住む場所を提供するのは当たり前なのだ。
かく言う俺も親無しだ。
今日はとりあえず渡された部屋で休むことにしよう。
なんてふうに考えをまとめてると理事長に話しかけられた。
「私としては君が今ここにいることを公表したいと考えている」
「なぜですか?公表するメリットがない気がしますけど」
今の俺のイメージを考えたら公表する意味もない気がするが。
「来年以降、君に憧れて入学してくる生徒もいるかもしれないからな。ズバリ言うと君がいいなら、活動する君の姿を配信もしたいと思っている。もちろん謝礼は払うつもりだよ」
配信か。
悪いことじゃないかもしれない。
現在はダンジョン配信や授業の配信などを行う人達は少なくない。
配信して自分の強さを世界に公表して、冒険者パーティからスカウトをもらう。
そんな流れは一般的なものになっているから。
それに謝礼がつくのか。
そして俺には学費の件などもある。
話に乗ろうか。
「分かりました。理事長がそれでいいならやりますよ」
「よし。ではとりあえず白光の生徒としての紹介動画撮影といこうか」
ちなみに現在の服は変形式のものが主流でデータさえインプットすればどんな服にでも変形する、これもダンジョンの中で入手できる素材のおかげだ。
俺は【白光学園】用の制服のイメージをインプットしてもらいそれに変形させた。
黒を基調とした公立用の制服から白を基調とした【白光】の制服へと変わった。
「おぉ……。ほんとうにあの【白光】の生徒になったんだ」
すごく、かっこいいデザインだった。
「よし、では撮影しようか」
俺は娘の方の坂上と一緒に外に出た。
グラウンドは野球部とサッカー部がほぼ使っていた。
そんな部活動風景を見ながら自己紹介のテンプレを使いながらライブ撮影を行っていく。
これをあとで切り抜いて編集して学園のチャンネルに投稿するそうだ。
坂上が口を開いた。
「得意なこととか好きな人のタイプお願いします」
「えっ?好きな人?関係ある?」
そんな会話をしていた時だった。
「ゴウ・ザ・ストライク!はっくしょん!」
バカでかい声とくしゃみが聞こえてきた。
ギュン!
【状況把握】スキルのおかげで、一瞬でなにが起きたかを理解できる。
サッカー部の奴がボールを蹴ったらしい。
そのときクシャミをしたせいで力の加減を間違ったらしい。
「えっ?」
坂上が呆然としていた。
俺たちにボールが飛んできていた。
バチッ!
防球ネットすらぶち破って俺たちに迫ってくるサッカーボール。
「す、すまん!避けてくれ!」
声が聞こえてきたけど
(俺が避けたら坂上に当たるかもしれない。やむを得ない)
俺はその場で左手を出してそのサッカーボールを止めた。
ギュルルルルルルルル。
凄まじく回転をするサッカーボールを左手だけで止めるとサッカー部が集まってきた。
「す、すげぇ。ゴウのシュートを腕一本で止めるなんて」
「プロのゴールキーパーですら止められなかったんだぞこのシュート。てかミノタウロスの腹ぶち抜くんだぞこのシュートは!」
そのときだった。
タッタッタッタ。
シュートを放った選手が俺のとこに来て口を開いた。
「はぁ……まじですまん。くしゃみ出て本気で蹴っちまった。ほんとにすまん!よく止めてくれた!助かったよ!」
そう言って前髪をかきあげた男の顔には見覚えがあった。
「あれ?君は。また会ったね」
その男も俺に気がついたらしい。
この男はこの前俺が立ちんぼのとこで見かけた、ビチ子と歩いてたオレンジ髪のヤンキー男だった。
で、この時には思ってた。
(もしかして俺が勝手にヤンキーって思ってるだけ?)
ただのヤンキーじゃ絶対に白光には入れない。
これは憶測なんだけど。
このヤンキーは俺より常識人だと思う。
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