第21話 再び、パーティーへ

「まず、回復士としてのテストだ。ソーニア、アルソーを攻撃しろ!」


 ハインリヒトがソーニアに声を発する。すると、ソーニアが呪文を詠唱し始める。


「なっ……」


 アルソーは声を上げ、ソーニアの方を向く。と、同時にソーニアの雷魔法がアルソーの背中に直撃し、ドンと言う音が響く。


「嘘だろ……」


 アルソーは黒焦げになり、うつ伏せに倒れる。


「よし、今だ! クレアラ、アルソーの回復を」


 ハインリヒトのその言葉に、私は呆気に取られる。そこまでするのか、私はアルソーがかわいそうになり、急いで彼の元へ駆け付ける。そして、腰に付けているカバンの中からポーションを取り出す。


「このポーションは私が開発した物だから、通常の倍くらい回復力があるわ」


 私はそう言って、アルソーにポーションを飲ませる。


「いててて、あれ?」


 アルソーは目をパチクリしながら立ち上がる。


「痛くねぇよ。治ってる。嘘だろ?」


 アルソーは驚いた表情をして私の方を見る。私は彼に笑顔で返し、ハインリヒトの方を見る。


「ふむ、よし、いいだろう。次は攻撃力のテストだ。ソーニア、頼む」


 ハインリヒトはまたソーニアに指示を送る。すると、再びソーニアが呪文を詠唱し始める。


「クレアラ、弓矢を構え給え。これから、ソーニアが魔法で生み出したモンスターと戦って貰う。これに合格すれば、君をうちのパーティーの一員として迎え入れよう」


 ハインリヒトの言葉に私は唖然とする。彼の暴君振りが一段と増している。などと考えていると、ソーニアの呪文が完成する。


 鷹の様な魔物が彼女の前に現れる。その鷹は雷を帯びていて、私の方にゆっくりと首を向ける。クエッとひと鳴きすると、空中に飛び立ち、空を旋回する。


 やるしかない。私は用意してあった弓矢を手に取り、上空の鷹に向け構える。鷹は私の位置を確認すると、私に襲い掛かって来る。


 私は集中をし、襲い来る敵に向け矢を放つ。しかし、鷹は俊敏な動きで矢を交わし、私に突進して来る。


 危ない。鷹の鋭いくちばしが私の身体をかすめる。間一髪、転がりながら私はそれを交わす事が出来た。そして、再び上空に舞い上がって行く鷹を睨む。私は体勢を立て直し、弓矢を構える。


 鷹も次の戦闘準備が整うと、再び私に向かって来る。今度は外さない様に、直前まで鷹を引き付ける。鷹が目の前まで迫る。私は再び集中し、目の前に迫った鷹に矢を放つ。


 至近距離から放たれた矢を鷹は回避出来ず、それを頭に受ける。そして、バタバタとしながら、地面に落ち、消滅する。


「素晴らしい。合格だよ、クレアラ。また、君と冒険が出来る事になってホントに嬉しいよ」


 ハインリヒトが私に近付いて来る。私は少し落ち着いて、安堵の笑みを浮かべる。


「ありがとう、ハインリヒト。私もまた貴方達のパーティーに入れて嬉しいわ」


 私はハインリヒトにそう言うと、アルソーに視線を向ける。アルソーも私の方を見て笑っている。


 良かった、やっとこの場所に戻る事が出来た。私は嬉しさのあまり泣きそうになる。しかし、もう泣かないと決めたのだ。私は涙が溢れるのを堪え、仲間達の元へゆっくりと歩いて行った。



    *    *    *    *



 次の日から、私は早速パーティーに加わり、ダリアの塔へと向かう。ハインリヒト、アルソー、ソーニアとの三人での久しぶりの探索となる。私達四人はダリアの塔の前に立つ。


 ここに来たのも一年振りだ。魔法が使えない事が判明して以来だ。感慨深い気持ちで私は塔へと足を踏み入れる。


「私がいない間にどれ位まで進んだの? 五階のボスは倒せたの?」


 先頭を歩くハインリヒトに私は尋ねる。すると、ハインリヒトの顔が引きつる。何か悪い事を聞いてしまったのか。彼の表情を見て、私は少し後悔する。


「実は、あまり進んでねぇんだよ。まだ五階のボスが倒せないんだよ」


 ハインリヒトのすぐ後ろを歩くアルソーが代わりに応える。


「新メンバーがあまり戦力にならなくてね。五階のボスの所で停滞してるんだよ」


 ハインリヒトは苦笑いを浮かべながら、言い訳に似た説明を私にして来る。自分の非を認めない、元恋人が悪いと他人に責任を押し付ける。相変わらずのナルシスト振りだ。


 確かに一年も経っているのに、全然進んでいないと言う報告はプライドの高い彼には到底出来ない事だろう。戦力外通告を直接したこの私には、特に。


「分かったわ。今日は五階のボスを倒せる様に頑張りましょ」


 私はみんなを鼓舞する。ハインリヒトは一瞬、嫌な顔をする。逆にアルソーは明るくノリノリな表情を浮かべる。ソーニアは相変わらず無表情だ。私達四人は塔の上へとドンドン突き進んで行く。


 難なく雑魚敵を蹴散らし、私達は五階のボスの間の前まで辿り着く。


「いよいよね。相手は六本腕の巨人よ。気を付けて行きましょう」


 私はみんなに声を掛ける。すると、ハインリヒトとアルソーが不思議そうな顔で私を見て来る。


「お前、ここのボスと戦った事ないのに何で知ってるんだ? アイリから奴の事を聞いてたのか?」


 アルソーが不信な目で私に聞いて来る。何を言ってるのよと私は思った。が、確かに戦ったのは魔法で過去に戻る前だ。今の私は五階のボスは初見なのだ。変に思われたら困るので、私は誤魔化す。


「そ、そうなの。アイリさんから聞いてたの。だから、みんなで頑張りましょう」


 私の返事を聞いて、ハインリヒトとアルソーは五階のボスの間の扉に手を掛ける。














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