第7話 私の恋愛タイプは何ですか?
同性の意見も聞きたいと思い、私は魔法使いソーニアの部屋を訪れる。
「ソーニア、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
「あら? 何かしら、クレアラ? 貴方が私に話があるって珍しいわね」
そう言えばそうだ。彼女の部屋を訪れるのは確かに初めてだ。私はソーニアの部屋の中へと通される。
彼女の部屋の間取りと家具の配置は、わたしが借りている宿屋の部屋と全く同じだ。唯一違う点があるとするならば、ソファーやテーブルに大量の本が乱雑に置かれている点くらいだ。
「それで、話って何? 出来れば、手短にお願いしたいわ。読みたい本がいっぱいあるのよ」
ソーニアはベッドに腰を掛けると、淡々と話を進める。私は慌ててソファーに座り、話を切り出す。
「実は恋愛の事で悩んでて、貴方に相談に乗って欲しくて……」
「ハインリヒトと付き合ってる事ね? それは、当然悩むはずよ」
彼女は表情も口調も変えず、事務的に話す。しかし、ハインリヒトの事をズバリ当てられた私は動揺して、声が上ずる。
「え、何で知ってるの? 彼と付き合ってる事?」
「見てたら分かるわ。人にあまり関心のない私でもね。気付かないのは、ホントに鈍いアルソーくらいね」
彼女はホントに冷静に話す。取り乱す事などないのだろうかと、私はソーニアをじっと見つめる。彼女はそんな私の表情を気にも止めず、時間節約の為、話を進める。
「それで、本題は何なの? だいたい予想は付くけど……。ハインリヒトが恋人の貴方に対して、冷たいとかでしょ?」
「え、何でそこまで分かるの?」
私は大声を出して驚いてしまう。私の心を覗いているのかと、目の前の眼鏡の女の子に私は恐れおののく。
「ハインリヒトは恋愛タイプ、回避型だからね。行動パターンはだいたい読めるわ。彼は、親密になればなるほど、恋人と距離を置きたくなるタイプだから。恋人の貴方に冷たくなるのは、当然の事なのよ」
「え、何よ、それ。恋愛タイプって何なの? 彼の行動パターンが読めるの? お願い、ソーニア。私にその恋愛タイプって言うのを教えて」
私はハインリヒトとの恋を左右する情報だと思い、食い付くように彼女に訊ねる。彼女は疲れた表情を見せ、面倒臭そうに口を開く。
「人それぞれ、恋愛における行動パターンというのを持っているの。これはだいたい4つに分類されるわ。私はこれを恋愛タイプと呼んでいるわ。他の言い方だと愛着スタイルとも言われている。この恋愛タイプによって、恋人との付き合い方が変わって来るのよ」
「なるほど、そんなものがあるのね。私は? 私の恋愛タイプは何なの?」
「あなたは、恋愛タイプ、不安型。恋人に常にくっついて依存したがるタイプよ。ちなみに、回避型のハインリヒトとは最悪の相性よ」
私はそれを訊いて愕然とする。しかし次の瞬間、いや、そんなはずはないとソーニアの言葉を、私は否定する。
「そんなの最悪だなんて分からないわ。貴方に私達の相性なんて分かるはずないもの」
「そうかな? だって今、彼との恋が上手くいってないから悩んでここに来てるんでしょ? つまり、そう言う事なんじゃないの?」
ソーニアは冷静に私の痛い所を衝いてくる。そう言われると何も言い返せない。私は無言でうつむく。
「……ねぇ、教えて。どうすれば、彼との恋が上手くいくの?」
私は泣きそうな顔を上げ、弱々しい声でソーニアに訊く。彼女は腕組みをし、首を傾げながら答える。
「正直、難しいわ。彼は恋愛において仲が深まれば、離れたくなるタイプだし、貴方は仲が深まれば、もっと側にいたいタイプだからね。相反する二人なのよ。私が貴方の立場なら、彼と別れて相性の良い別の人と付き合うけど……」
「いや! 絶対に嫌! お願い、彼と別れたくないの。力になってよ、ソーニア」
私はソーニアの両腕を掴み、すがるように泣き叫ぶ。彼女に見捨てられたら、この恋は終わりだと感じたので、私は必死になる。
ソーニアはまた面倒臭そうに、嫌な顔をして私の掴んだ手を振りほどく。ソーニアは溜め息をついて、私に諭すように言葉を返す。
「私の知っている知識を貴方に話すわ。後は、貴方の好きにしなさい。それで、いいわね? 上手くいくかいかないかは、貴方次第だから」
私は無言で頷く。そして、彼女の話に耳を傾ける。
「恋愛タイプ、回避型は、親密になってくると、恋人に批判的な態度を取る様になるわ。貴方もされたから分かるでしょ? これは、恋人と心の距離を取りたいという気持ちから、そういう行動を取るの」
「なるほど」
「ハインリヒトが、仲間の私達に付き合っているのを内緒にしたがるのも、恋人という枠に縛られるのを嫌がるからでしょうね」
「ふむふむ、そういうことだったのね」
「貴方は彼となるべく距離を取る様に心掛けなさい。とは言え、不安型の貴方にとって、それはかなり酷な事だと思うけどね」
「分かったわ、ソーニア。色々教えてくれて、ありがとう。私、やってみる。応援していてね」
「私は貴方達が上手くいこうが、別れようが関係ないわ。ただ、同じパーティー間で面倒臭い事が起きるのが嫌なだけなの。気が済んだら出て行ってよ。私は本が読みたいのよ」
私はソーニアにそう言われると、お礼を行って彼女の部屋を後にする。
何か勇気付けられたそんな気がする。早くハインリヒトに会って、この知識を生かしたい。
この時の私は希望に満ち溢れていた……。
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