第22話

僕はレイラさんに突然家に来て欲しいと言われてしまったのだけど……そう言えば僕ってレイラさんの家知らないな。


「レイラさんの家ってどこなんですか?」


「え?君来たことあるでしょ?」


「え?」


「工房の2階が私の家だよ。一緒に鍛冶師として生活しているじいちゃんと一緒に住んでるの。」


そ、そうだったのか……。


「お、おじいさまは元気ですか?」


「じいちゃんは今、この国の南にある「ハイドワーフの鍛冶屋」にいるじいちゃんの友達に呼ばれて、そこに仕事をしに行ってるよ。」


「ハイドワーフってなんですか?」


「ドワーフの中でも特に技術力が優れた人に与えられる称号の事だよ。じいちゃんはただのドワーフだけど、今回の仕事で成果を出す事ができれば正式にハイドワーフと認定されるんだって!」


それは重要な仕事だな。って待てよ?おじいさまは家を出てるって?つまり……!


「じゃあ、今家にはレイラさん1人って事……ですか?」


「そうなるね。」


いや、そうなるねって……僕はそんな所に本当に1人で行っちゃっていいのか……?


「も、もう夕方ですけど、今からレイラさんの家に行くとなると……本当に良いんですか?」


「良いよ良いよ!別に何もやましい事なんて無いんだから!」


「そうですか……なら、家に帰って準備をしますので、レイラさんは先に家に帰っててください。」


「分かったわ。私も家に帰ってお風呂入りたいし。じゃあお先!」


僕とレイラさんは、そうして1度分かれてお互い再び出会う為の準備をする事にした。

僕は今夜、大人の女性の家に1人で

……って何考えてんだ僕は!やましい事は何も無いってレイラさんも言ってたでしょ!消えろ煩悩!


なんやかんやで僕は心を平静に保ちつつレイラさんの家に向かう準備をし、夜の7時頃に彼女の家に向かった。

レイラさんは僕に何を見せるつもりなのだろうかと考えつつ僕は目的地へと向かい、ついにそこに到達した。


レイサさんはさっき「裏口から来て」と言ってたので、僕は工房の裏に回ると、そこには家の中への入口と思しき扉があった。

扉にはベルが付いてある……これを鳴らすのかな?と思い、僕は扉に付いてるベルをリンリンリンと3回ほど鳴らしてみる。


すると家の中から誰かが歩いてくる音が聞こえ、その人物が扉を開ける。まぁ誰かと言っても、家にいるのはレイラさんだけなんだけど……って!?


「キュート君いらっしゃい!さぁ上がって!」


「は……はい……!」


僕は扉を開けて現れたレイラさんの姿を見て、思わず驚いてしまった。

Tシャツに短パン……な、なんて格好なんだ……これが大人の女性の魅力か!ダメだ、僕には……!


「どうしたのキュート君?早く家に入りなよ。」


「あ、は、はい。」


まぁレイラさんが僕の心境など理解してるはずも無さそうで……彼女は僕を家に上がらせる。

扉を開けたらいきなり階段があって、そこを登っていって2階の生活スペースに入る感じなのか。


「ふ〜んふふ〜ん♪」


「……。」


その階段をレイラさんが先に上がって、僕は彼女の後ろをついて行ってるのだけど……このアングルは犯罪ですよ……!

って、さっきからなんかラブコメ主人公みたいな事しか考えてないな僕……もっと冷静にならなくちゃ。

レイラさんは僕の事なんとも思ってなさそうだけど、僕が彼女に対して変な事考えてるようじゃ失礼だし……


ドンッ


「ギャンッ!」


「大丈夫キュート君!?」


「すみません……大丈夫です……。」


レ、レイラさんを見上げないように下を向きながら階段を上がってたら、階段を上り終えた所にある壁に顔をぶつけてしまった……。

まぁ血は出てないので、レイラさんには大丈夫だと答えたけど。


「リビングはこっちだよ!来て!」


「は、はい。」


階段を上り終えた僕は、レイラさんに案内されてリビングに案内される。

建物の外観を見た時は小さな家だと思ったけど、いざ中に入ってみると、想像してたより部屋は広く感じた。


「ご飯食べた?」


「いえ、まだです。」


その時、レイラさんが僕にそんな質問をしてきたので、僕はまだだと答える。


「じゃあ家で一緒に食べよう!用意してあるんだ!」


「い、良いんですか?」


「良いよ良いよ!食べてきなって!」


「じゃあ、お言葉に甘えて……。」


レイラさんなんと僕の分も夜ご飯を作ってるそうだ。なので僕はレイラさんの家でレイラさんの手料理をありがたく食事を食べさせてもらう事にする。


「キュート君好き嫌いある?」


「いえ、特に無いです。」


「そう、良かった。」


台所に食事を取りに行ったレイラさんと、リビングで待ってる僕はそんなやり取りをする。

でも、異世界の料理はあまり知らないからな……そういう意味では僕の答えは正しくなかったのかもしれない……。

そう考えながらレイラさんを待っていると、彼女が持ってきた料理は……豚肉と野菜の炒め物と……米であった。


「え、米……?中世的な世界で米……?」


「米がどうしたの?」


い、いやでも確か米は世界の色んな所で生産されてるって世界史の授業で聞いた事ある気が……まぁ細かい事はいいや。

今はただ、手作り料理を僕に出してくれたレイラさんに感謝して、この夜ご飯を味わおう。

そう思いつつ僕は、豚肉と野菜と炒め物を口にする。


「どう?美味しい?」


「……美味しいです!」


レイラさん料理上手いんだな〜。いや上手いと言うか、まるで実家の夜ご飯を食べているような気分になると言うか……とにかくこの料理は美味しい。

僕は脳内食レポをしつつ、レイラさんの料理を黙々と食し、レイラさんも僕の前で夜ご飯を食べる。

レイラさんは確か僕に何かを見せる為に家に呼んだんだよね……と思いつつも、今はその事は置いといてレイラさんの手料理を食べる事を楽しんだ。


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