第21話

フレイムドラゴンの1件から2週間後、僕はプラスチックマスターであるプラモデルを作ろうとしていた。

プラスチックマスターは、物作りにおいてかなり便利なスキルだけど、万能という訳では無さそうだ。


僕が今作ろうとしているのは、HM(ハイパーモデル) 1/155 ガンダムアストラ レッドボーン というプラモデルである。

だが、このプラモデルを作る上でかなり大変な所が一つあって、僕は既にこのプラモデルの作成に何度も挑戦していたのだが、どれも上手く作れず失敗に終わっている。


このプラモデルには、ヒノモト脅威のメカニズムと言われる程高度な技術が取り入れられている。

それが、完成済み内部フレーム「フルアクトMMフレーム」だ。

ランナーの時点で既に内部フレームとして完成されており、ランナーから切り離し、人型に組み立てるだけでフル可動のフレームとして完成するというスグレモノである。


これが、HMシリーズの作成を難航させている大きな要因と言えるだろう。


「……またダメだ……。」


僕はもう一度プラスチックマスターで、HM ダンバルアストラルレッドボーンを作ってみるが、またしても失敗してしまった。

どう失敗したのかと言うと、フレームが動かないのである。接着剤でガチガチに固められているかのように動かない。


「フレイムドラゴンの1件から2週間か……あれからリサエルさんとはおもちゃ屋でたまに会ってるけど、いい報告はできそうにないな……多分リサエルさんも僕のプラモデル作成が上手く行ってないのが分かってるかも……早くHMシリーズを完成させないと!」


とは言っても、もう30個も作ったのに、成功作は1つも無い。

と言いつつ、諦めきれずにもう1個HMシリーズを作ってみるけど、やっぱり完成するのは無可動のプラモデルだ。

スキルにもレベリングの概念があって、使い込む程高性能なスキルに成長する、とかだったら良いのに……。

と思いつつ、僕は久しぶりに自分のステータスを確認してみる。


夏児 究人


レベル 9


筋力 13

耐久 11

俊敏 10

体力 22

魔力 76


スキル[プラスチックマスター][プラスチックマスター補助スキル・スキル精密度アップ(NEW)][アイテムボックス][アイテムボックス補助スキル・容量アップ(NEW)]


「……ん?」


なんだこれ……補助スキル……?NEWって書いてる……今得たスキルなのか?習得したのはプラスチックマスター補助スキルとアイテムボックス補助スキルの2つ……スキル名でどんなスキルかはなんとなく分かるけど、一応効果も見ておくか。

そう考えながら、僕は補助スキルをタップする。


[プラスチックマスター補助スキル

・スキル精密度アップ]

スキル[プラスチックマスター]を補助する為のスキル。プラスチックマスターで生成する物の完成度が向上し、複雑な造形の物でも作れるようになる。


「……なるほど。」


もしかして、これならHMシリーズのダンプラ作れるんじゃない?絶対行ける気がする!

僕はそう確信し、再びプラスチックマスターでHM 1/155 ダンバルアストラル レッドボーン を生成しようとする。


「生成……する!」


僕はそう呟きながら、ウインドウに書かれた「生成しますか?」の文字の下の「はい」の表示を指でタップした。

そして、魔法陣の中から姿を現したプラモデルに、僕は期待を膨らませてそれを手に取る。動いてくれダンプラ……!


ググ……


「……動いた……!」


HM ダンバルアストラル レッドボーンの腕の関節は、ついに動いたのだ。ようやく完成した……完全なHMシリーズが!

こうなったらもうHMシリーズ作り放題だ!と考え、僕は勢いでHMシリーズのプラモデルを10個程作った。

そしてそれをおもちゃ屋に持っていく事にする。



「随分とゴチャゴチャした見た目のプラモデルだなー。」


「情報量が多いプラモデルと言うべきですよ。まぁそれよりも、僕はこのプラモデルを作るのに結構手こずってしまいまして……ついに今日完成させたんです!今日はこのプラモデルをこのお店に入荷させます!」


「そうか!ゴチャゴチャしてるがカッコイイとは思うぞ!こりゃ売れるんじゃないかな!で、いくらで売るんだ?」


「そうですね……僕がいた世界では、ダンバルのプラモデル以上、美プラ以下って感じだったので……銅貨200枚って所ですかね。」


「強気な価格だな!」


ゲメルさんとちょっとした小話をした後、僕はおもちゃ屋のプラモデルコーナーに10個のHMシリーズを置いて、その分の入荷料をゲメルさんから貰った。


「ありがとよ旦那!」


「HMシリーズ、もっと増産するので今後もお店に置いてください!」


「もちろんだ!」


そうして、プラモデルの入荷を終えた僕は、ゲメルさんに別れを告げて家に帰ろうとしたのだけど、おもちゃ屋の前である人物と遭遇する。


「キュート君!」


「あ、レイラさん。お久しぶりです。」


「最近調子はどう?プラモデル作り上手くいってる?私はこの通り元気いっぱいだよ!そう言えば私の友達の冒険者やってる子がね、このお店で買ったプラモデルにハマっててさ〜、でもその子物持ちは良くない方でね、その内「プラモデルが壊れたから、代わりのを買ってきた!」って言ってプラモデル買いに来るかもしれないから、その時は良いプラモデルを売ってあげてね!」


「は、はい……。」


あ、相変わらずのマシンガントークだ……。


「レ、レイラさんは何しにおもちゃ屋に?」


「もちろんプラモデルを買いに来たんだよ。今日はどんなプラモデルが入荷してるかな〜。」


「今日はいつものより良いのが入荷してますよ。じっくり選んでください!」


今日入荷した10個のHMシリーズのプラモデルは、10個全部違う種類のものだ。

種類は多いに越したことは無いからね。


「うん!いつもプラモデルをつくってくれてありがとう!あ、悪いけどキュート君はここで待っててくれない?」


「え……なんでですか?」


「後で家に来て欲しいの!キュート君に見せたい物があるんだ!」


「え……?」


と……突然のレイラさんからの、家へのお誘い……!?お、大人の女性の家に……僕が行っちゃってもいいの!?一体、何を見せられるんだ……!?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る