第20話
「フレイムドラゴン討伐を祝して、カンパーイ!!」
「カンパーイ!!」
リサエルさんの仲間の髭の生えた男性冒険者、ガロンさんの掛け声を聞いて、若々しい外見の男性冒険者、メルジオさんはビールの注がれたジョッキを持って元気よく掛け声を返す。
僕が今いるのは酒屋だ。リサエルさん、ガロンさん、メルジオさんと共に、フレイムドラゴン討伐祝いをしている。
「乾杯。」
「か、乾杯……。」
それに続けてリサエルさんと僕も乾杯と呟く。でも、僕が持ってるジョッキに入ってるのは酒じゃない。
この世界での成人は18歳で、15歳の僕は当然お酒なんて飲めない。だから僕は「シュワー」と言う、炭酸ジュース的なものを飲む事にした。
ガロンさんが店員さんに「シュワー1つ!」と言った時は、「シュワーって何!?」と思ったけど、意外と口に合う飲み物で安心したな。
そしてそのガロンさんとメルジオさん、そしてリサエルさんはお酒を飲み、僕はシュワーを口にする。
「く〜っ!仕事終わりのこの1杯が堪らねぇ〜!」
「そうですね!この為にモンスターと戦ってるって思います!」
「そうだな。」
「このシュワーって飲み物、サイダーみたいで美味しいです!」
飲み物を飲んだ僕達は、一息ついた所で話を始める。
「本題に入ろう。今回は君の活躍のお陰でフレイムドラゴンに勝つ事ができた。礼を言う。」
リサエルさんは僕に対してそう言うが、僕は3人の足を引っ張ってしまったのも事実なので、それに対して浮かれること無く言葉を返す。
「でも、僕がいなかったらそもそもリサエルさんはフレイムドラゴンの攻撃を受けなかった訳で……礼を言われる事なんて僕はしてないですよ。」
「キュート、リサエルが礼を言ってるんだから素直に受け取っておけよ!S級冒険者に褒められるなんて事滅多にねぇぞ!」
僕の言ったことに対して、ガロンさんはそう返す。
なら……素直に礼を言われておこう。もう終わった話だし。
「それよりも、キュートくんが使った武器って銃ですよね?あんなもの持ってるなんて凄いです!」
「この世界で銃を持ってるのって珍しいんですか?」
僕はメルジオさんの質問にそう返す。
いや、銃を持ってるのが珍しいのは僕がいた世界でも同じなんだけど……。
「そりゃ珍しいもんだよ。1部の人にのみ使うことが許可されてるんだからな。」
じ、銃を使うのには許可が必要なのか……確かアメリカではそうだと世界史で学んだような……僕も銃を使うには許可が必要なのかな……。
でもあれはエアガンみたいなもので……うーん……。
「それはそうと、君は召喚者なんだろう?召喚者は国の戦力として国王陛下に召喚される事が多いが……君は違うのか?」
「それが……戦いには使えなさそうなスキルだと判断されて、戦力外通告されたんです。」
「あんなに便利なスキルなのにか?武器や鎧を作れるのなら最高のスキルだと思うぞ?」
「プラスチックマスターは文字通りプラスチック製の物しか作れないんです。鉄は作れません。プラスチック製の武器も鎧もモンスターとの戦いで役に立つとは思えませんし……。」
リサエルさんは僕が召喚者だという事と、僕のスキルを知った時からその事が気になってたらしく、それついて質問をしてきたので、僕はありのままの答えを説明した。
「おっ!メインディッシュが来るぞ……!」
その時、ガロンさんが厨房からこっちに向かってくる店員さんを見てそう言う。
そう言えばさっき飲み物の他に食べ物も注文してたな。
「お待たせしました!肉厚ハンバーグ2人前です!」
「おぉ〜!!」
ガロンさんとメルジオさんは、店員が運んできた肉厚ハンバーグを前にして、その食欲をそそる匂いに興奮している。
「おぉ〜!今すぐ食いてぇが……キュートとメルジオ先に食えよ。俺は後で来るのを食うからよ。」
「良いんですか?」
「若いのが遠慮するな!ほら食った食った!」
ハンバーグを頼んだのは僕とメルジオさんとガロンさんで、リサエルさんはサラダセットを頼んでいる。
だがガロンさんは、僕が先にハンバーグを食べて良いと言ってくれた。
その事に感謝し、僕は肉厚ハンバーグをナイフで切り、小さくしたハンバーグを口に運ぶ。
「美味しい!!」
「美味しいですね〜!!」
僕とメルジオさんは、肉厚ハンバーグの美味しさに舌鼓を打って、その美味しさを噛み締める。
この世界でもこんなに美味しい食べ物が食べられるなんて……前いた世界では、放課後にプラモデル同好会の仲間と一緒に行くファミレスで食べるハンバーグがすごく美味しかったのを思い出すな〜。
何よりも、この世界でも一緒にご飯を食べる関係の知人ができた事が嬉しい。
そう考えつつ僕は肉厚ハンバーグを食べ、リサエルさんとガロンさんの元にもそれぞれが注文した物が届き、皆自分の好きな食べ物を時間をかけて味わい、10数分程で僕とメルジオさんとガロンさんはハンバーグを、リサエルさんはサラダセットを食べ終えた。
◇
そうして僕達はその日は解散する事になったのだが、リサエルさんが僕を宿まで送ってくれた。
「すみません、宿まで送ってくれて。」
「なに、私も酒の酔いを覚ます為にちょっと夜風に当たりたかったのでな。」
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそありがとう。街の結界は今晩の内に王宮直属の大魔道士様が張り直すだろう。もうモンスターは街に来たりしないさ。じゃあまた。」
リサエルさんはそう言って僕に背中を向けて、帰っていこうとした。だけど……。
「リサエルさん!」
「なんだ?」
僕はリサエルさんに声をかけて引き止めた。そしてアイテムボックスから、プラスチックマスターで作ったプラモデルを取り出す。
「新しいプラモデルを作ったんですけど……。」
「随分と大きいプラモデルだな。」
リサエルさんは僕が作ったプラモデルを見てそう言う。僕が作ったのは、1/40 ギガントモデル ダンバルだ。
これがダンバルのプラモデルの中で1番大きなプラモデルだし、それを両手で持ってるのはかなりしんどい。
「僕にはこんな風にプラモデルを作る事ができます。でも、こんなに便利なスキルがあるのに、モンスターと戦う事はできません。」
「つまり……?」
「だから、戦えない僕や、この街の皆の為に……どうかリサエルさんが皆を守ってください!リサエルさんならどんなモンスターにも勝てるって信じてます!守ってもらうばかりの身で生意気かもしれませんが……。」
「……あぁ。やってみるよ。戦えない人達が安心して暮らせる世界を……実現してみせる。それと、君は守られるばかりでは無いぞ。」
「え?」
「君は私にプラモデルを作ってくれるじゃないか。その大きなプラモデルも中々いいモノに見える。それをおもちゃ屋に入荷してくれないか?すぐに買いに行くから。」
「……はい!」
そんなやり取りをした後、リサエルさんは帰っていった。
僕はリサエルさんの言葉を聞いて気付かされた。僕達は互いに助け合って生きているんだと。
僕は彼女にプラモデルを供給して、彼女は僕をモンスターから守ってくれる。
どっちも欠けちゃいけないんだ。だから……明日からもプラモデル作り頑張ろう!
リサエルさんが喜ぶような高クオリティのプラモデルを作って、リサエルさんに喜んでもらうんだ。
高クオリティのプラモデルと言ったら……アレだな!
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