第18話
ヘイス国王様の1悶着から2週間が経過した。その日も僕はおもちゃ屋にプラモデルを入荷した後、家に帰り自分の趣味に打ち込む。
その日は久しぶりに組みごたえのあるプラモデルを作りたいなと思い、組むのに時間がかかりそうなボリューミーなプラモデルをスキルで生成した。
僕が作ったプラモデルは、UM(ウルトラモデル) 1/100 QQ(ダブルキュー)ゲイザーだ。
UMは大きなサイズとそれ相応のパーツ数が売りのシリーズで、中級者〜上級者向けのシリーズと言われている。
それと、QQゲイザーが出てくるアニメ「鉄騎兵ダンバルQQ」は僕にとってはダンバルシリーズの中で1番好きな作品である。
それを僕は4時間ぐらいかけて作った。僕の仕事は店にプラモデルを入荷して終わる、簡単な仕事だ。
アイテムボックスにプラモデルを入れて、店でその中からプラモデルを出せばいいだけなので時間はそんなにかからない。
故に一日のうち長い時間を持て余す事になる。だから暇な時はこうして長時間かけてプラモデルを作る事もできるんだ。
「よし、できたぞ!」
制作開始から5時間でQQゲイザーはようやく完成した。やっぱQQのMM(モービルマシン)と言えばこの先進的というか、スタイリッシュなデザインだよな〜。
QQダンバルと支援機、トップゲイザーが合体して完成するQQゲイザー……やはり合体は漢のロマンだ!
「えへへへ……ん?」
僕が完成したプラモデルを見つめて気持ち悪い笑みを浮かべていたその時、何やら外が騒がしい事に気づく。
こんな騒がしい事滅多にないし、どうしたんだろう?と思った僕は、宿の外に出てみる。
「やべぇよ……!」
「参ったな……。」
「早く避難しなくちゃ!」
街の人達は、何やらヤバいとか避難だとか言っている。一体何があったんだ……?そんなに危ない事になってるのか?
詳しい事が知りたいので、僕は街の住民に何があったのか聞いてみる。
「どうしたんですか?」
「どうしたって……出たんだよ、竜が!街中に!」
「竜……?」
竜が出た?竜ってモンスターだよね?この世界に来て全然モンスター見てなかったから、本当ににいるのか疑ってたけど、やっぱりいたんだ……。
竜ってどんな見た目なんだろう、見てみたいな……でも僕なんか簡単に殺されるかもしれないし、竜がいないここでじっとしてた方が……。
「街に竜が侵入してくるなんて……冒険者か王国騎士団は対応しているのか?」
「俺は見たぞ。たった一人のエルフの姉ちゃんが竜を相手にしてるのを!」
「その子が倒してくれるといいんだがな……。」
エルフ……?そう考えた瞬間、僕は動かずにはいられなかった。
竜は怖いし、モンスターとその人が戦っている間に割って入ろうなんて考えている訳じゃない。
僕はただ、その人が彼女ではないかと考え、彼女がモンスターと戦っている所を見たかった……。
この中央都市アルデッサは4つに区分されている。僕が泊まってる宿があるのは東区だ。
そこから北上し、北区に向かう。避難してきた人たちはその方角から来たので、そこに竜とあの人がいるんだろうと予想して僕は走った。
ほとんどの人達は竜を恐れて南に逃げてるのに、僕はその方向に向かっている。でも僕は……!
僕は好奇心を抑えきれぬまま、竜がいる場所へと来てしまった。
そこには大きな体格の竜と、それに相対する3人の冒険者がいた。2人は知らないけど、もう1人は……やっぱりリサエルさんだ……!
2人の冒険者は鎖のようなものに巻かれて地面に倒れている。あの人に状況を聞いてみるか……。
「何があったんですか!?」
「見ての通り、結界を破って街に侵入してきた竜……フレイムドラゴンとリサエルさんが戦ってるんだよ!君は危ないから逃げて!」
「……!」
倒れている人達には鎖が巻かれていて、リサエルさんは普通に戦えてる。 この拘束が竜の仕業だとして、リサエルさんは2人の男性と違ってこの鎖を逃れる方法を知っているのか?
「来る……!」
その時、リサエルさんがそう言ったのを聞いて僕は竜の方を見る。
「コォォォォォ……ゴァァァァァ!!」
すると竜は、大きく息を吸った後、勢いよく口から炎のブレスを吐いてリサエルさんを攻撃しようとした。
彼女はそれを回避し、竜の胸に斬撃を与える。
「グギャァァァ!!」
竜はダメージを受け、声をあげる。リサエルさん、あんな強そうな竜と互角に戦えるのか……凄いな。
だがその瞬間、竜は僕の存在に気づき、僕と目を合わせる。
「キュート君!?何故ここに……!!」
リサエルさんは竜が見た方向に僕がいると知り、驚いた表情を浮かべる。
竜は僕のことを新たな敵と認識したのか、僕に向けて口から吐き出す黄色い玉を発射する。
この黄色い玉は食らったら一体どうなって……
「危ない!!」
だがその時、リサエルさんが僕を庇い、玉の攻撃を受けてしまう。黄色い玉はリサエルさんの体に着弾したかと思ったら、長い鎖に変化し、彼女の体に巻き付く。
そうか、2人の男性はこの攻撃を受けてしまったのか……。
「何をしている!?早く逃げろ!!」
リサエルさんは鎖に拘束されつつも、僕に逃げるよう言う。
だけど、僕のせいでリサエルさんが……やっぱり来るんじゃなかった!
僕みたいなモンスターと戦えない奴が来た結界、リサエルさんはこんな目にあったんじゃないか!
僕が使えるスキルと言えばプラスチック製の物を作る程度の物。戦闘の役になんて立たない。
「コォォォォォ!!」
竜は動けないリサエルさんにトドメをさすために大きく空気を吸う。また炎のブレスを吐くつもりだ。
このままではリサエルさんがやられてしまう!僕にできる事は何か無いのか!?もしも僕がリサエルさんを助けられるとしたら……!
パン!
「リサエルさん……足を引っ張ってしまった落とし前はつけます……!」
僕はプラスチックマスターによって作った武器で、竜の頭を撃ち、炎のブレスを止める。
僕のスキルでリサエルさん達を助ける方法が、一つだけあった……この武器があれば、時間稼ぎぐらいはできる!
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