第17話
なんとかしてヘイス国王様にプラモデルを作ってもらえる事になった。
あとはヘイス国王様次第だ。プラモデルの事を彼が認めてくれれば……。
そう考えながらヘイス国王がプラモデルを組み立てる所を静観するのはかなり緊張するな……この店での今後の商売がかかってるからな。
「どうだ!頭を完成させたぞ!」
「角飾りを折らずに完成させるとは、流石です国王陛下。」
「これぐらいどうという事は無い!」
作成を開始して5分ぐらいで、ヘイス国王様はQQダンバルの頭部を完成させた。それを褒めるメルクさん。
「頭が組み上がった時点で喜ぶ気持ちも分かりますが、全身を完成させた時はかなり気持ちいいですよ?」
「そうか……それは……いや、なんでもない!作成を続ける。」
頭部を作り終えたヘイス国王様に、プラモデルを完全に完成させた時は気持ちが良いものだと伝えるロゼさん。
それを聞いた彼は何か言いかけたけど、それを撤回してプラモデル作りを再開する。
その後ヘイス国王様は胴体パーツを作っていたのだが、小さなパーツを地面に落としてしまった。
プラモデルあるあるだな。あの小ささのパーツを探すのは大変そうだけど……。
「しまった!パーツを落としてしまった……メルク、パーツを探すのを手伝ってくれ。」
「かしこまりました。」
ヘイス国王様はメルクに一緒にパーツを探すようお願いし、彼女はそれを了承した。
それから5分ほどかけてヘイス国王様はパーツを探し続け、ついにそれを見つけ出す事ができた。
「どうだ!パーツを見つけたぞ!手こずらせおって!……はっ……私とした事がこんな事で浮かれてしまうとは……!」
「無くしたパーツを見つけ出せた時は喜ぶものなのです。決して恥ずかしがる事は無いですよ。」
「そ、そういうものなのか……。」
パーツを発見したヘイス国王様に対して、再び言葉を挟むロゼさん。
ビビって何も言えない僕の代わりに色々言ってくれるのはこっちとしても助かるな……。
その後のプラモデル作成は順調に進んでいき、作成開始から1時間で、ヘイス国王様はBM 1/155 QQダンバルを完成させる事ができた。
「つ……ついに出来たぞ!長く過酷な戦いだったが……なんだろう、この達成感は……。」
「それがプラモデル作りの醍醐味なんです。どうですか?自分自身の手でプラモデルを完成させた感想は?」
「うむ……。」
ヘイス国王様はロゼさんの言葉を聞いて何かを考え出した。プラモデルをどうするか考えているんだろう。
この店での商売は続けられる事ができるのか……それを決めるのはヘイス国王様で、僕達はただその選択を待つだけ……頼む、どうか最良の決断を……!
「……とても楽しかった。悔しいが、私もプラモデルの虜になってしまったのだな。プラモデルを作るというひとつの事にここまで夢中になれるなんて、さっきまでは思いもしなかった。」
え……という事は……?
「プラモデルを作る時の父上、とても集中してましたわよ。そんなにプラモデルを作るのが楽しかったのですね。」
「そうだな。認めよう、この店でのプラモデルの販売を。」
「「やったー!!」」
国王様の判断を聞いた僕とゲメルさんは、思わずハイタッチをして大きな声を出してしまった。それ程までに嬉しかったのだ。
僕達はこれからもこの店でプラモデルの販売をして良いんだ、そう考えると喜ばずにはいられなかった。
「店主よ、この店でのプラモデルの販売を、どうかこれからも続けてくれ。」
「もちろんです!」
ヘイス国王様とゲメルさんは、固い握手と約束を交わし、こうして僕とゲメルさんの今後の生活は救われた。
その時、ヘイス国王様はメルクさんがプラモデルを持っている事に気づく。
「ところで、メルクもプラモデルを持っているではないか。お前もプラモデルに興味があるのか?」
「いえ、これはお嬢様が買ったもので、私は別に……。」
「メルクさんも初めてみませんか?プラモデル!楽しいですよ!」
自分はプラモデルに興味無いという意思を示すメルクさん。僕はそんな彼女にそう提案する。
僕の目的はこの国でプラモデルブームを巻き起こす事だ。こういう時は隙あらば布教しておかなくちゃな。
「私は……そうですね、試しに作ってみたいです。キュート殿、何か良いプラモデルはありませんか?」
「そうですね……これとかどうでしょう?」
メルクさんはロゼさんの執事って事で良いんだよね?じゃあ色々な雑務をやってると思うから手先も器用なハズ。
ならBMシリーズよりもパーツが多いプラモデルでも良いかな……と考えて、僕はメルクさんにプラモデルを渡す。
「これは……?」
「MM(マルチモデル) QQダンバルです。ヘイス国王様が組み立てたものより組みごたえのあるプラモデルですが、良いですか?」
「はい。多少難しくとも、手先の器用さには自信があるので。」
やっぱり手先が器用な人だったか。
ならこのプラモデルでも組み立てられるな。
元々は非タッチゲートタイプのプラモデルだったけど、プラスチックマスターによってタッチゲートタイプのプラモデルとして生成した。だからニッパーが無くても組み立てられるようにしてある。
「メルク!帰ったら一緒に組み立てましょうね!」
「はい、お嬢様。」
「ロゼ、その代わり魔法の練習や文学もしっかりするだぞ。」
「は、はーい。」
ロゼさん、メルクさん、ヘイス国王様の雰囲気はさっきよりも格段に良くなった気がする。
もしもそれがプラモデルのお陰だとしたら、僕がこの世界でやっている事は間違いじゃないよね?
そう考えてながら、僕は店を去る3人のお客さんの背中を見送った。
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