第13話

僕がおもちゃ屋に入荷した未組立状態のプラモデル。それを買う最初のお客さんを待ち続ける事数十分……その時、お店に普段来るお客さんとは毛色の違うお客さんが姿を現した……。


「ふ、2人組のお客さん……?」


お店に来たのは2人組のお客さんで、どちらも女性だ。

何より特徴的なのは、1人は高身長で高そうな黒服を着こなし整えられた銀髪が特徴の女性、もう1人は僕と同じぐらいの歳のように見える、サングラスをかけた金髪の女の子で、この世界では一般的な服装の女性だ。


い、一体あの二人はどういう関係なんだろう……銀髪の女の人は女の子の使用人なのかな?でも、女の子の方は失礼ながらお金持ちの人には見えないし……。

と思ってたら、そのお客さん2人が、プラモデルコーナーで足を止めた。

けど、その女の子は何やら不満そうな事を口走って……。


「何ですかこれは……話で聞いたプラモデルと違うではないですか。」


「これは一体どういう事なのでしょう……お店の人に聞いてみましょう。」


「そうですねメルク。」


女の子はそう言って未組立状態のプラモデルを手に取って、メルクと呼んだ銀髪の女性と共にレジに向かってくる。

た、大変な事になったりしない……よね?


「店員さん。私はプラモデルの噂を耳にしてこのお店に来たのですが、これは一体何なんですか?」


「そ、それはですね……。」


僕は女の子にプラモデルについての説明をする。そのプラモデルは未組立の状態であって、買った人が一から作らなくてはならないと、手短に女の子に説明した。


「そうですか……じゃあメルクが作ってください。私には難しそうです。」


「かしこまりました。」


え……自分じゃなくてメルクさんに作らせるの……?


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「なんです?」


「そのプラモデル、誰かに作らせるんじゃなくて自分で組み立ててみるのはどうでしょうか?プラモデルを組み立てるのは楽しいですよ!」


僕は女の子を呼び止めて、そう提案した。


「私に命令をするなんて……。」


「お嬢様、今は抑えて。」


「……そうでしたわね。とにかく私はこんな作るのが難しそうなもの作りたくありません。そもそも、最初から完成した物を売ればいいだけの話ではありませんか。」


「それは違います!プラモデルは……楽しい物なんです!そりゃ初めての人は組み立てる過程で失敗もするでしょう。しかし、最後に待っている「完成」と言うゴールに到達した時、人は喜びを感じられるのです!」


僕はついそんな事を口走ってしまう。


「失敗するですって……?バカにしないでください!やろうと思えば私だって作れます!これを購入してやりますわ。これを明日までに完成させて、貴方をギャフンと言わせてみせますからね!」


「お客さん……。」


女の子はそう言って、未組立状態のBM 1/155 ネオダンバルを購入して、メルクさんと共にお店を去っていった。


「なんだったんだあの人達……。」


「キュートの旦那!留守番やってくれてありがとな!」


その時、外での用事を済ませたゲメルさんが帰ってきた。

僕がお店の接客を代わっていたのは、プラモデルが売れるかを確認する為でもあり、ゲメルさんが風邪を引いた奥さんの為に病院お薬(風邪に効くポーション的なの)を買いに行ったので、その代わりという事でもあったのだ。


「そういや、さっきスーツ姿のねぇちゃんとすれ違ったんだが、一緒にいた女の子……どこかで見たような気がするんだよなぁ……誰だったかな……?」


「知り合いかなんかですか?」


「いや、他人だっだと思うんだが……サングラスをしてて誰だか分からなかったなぁ。」


ゲメルさんは、あの女の子を見た事があるみたいだが、誰だったか思い出せないと言っている。

それはそうとあの女の子、ちゃんとプラモデル作れるかな……できればプラモデルを作るのが楽しかったと言って欲しいんだけど……。


そして、未組立状態のプラモデルはその後何人かのお客さんに買ってもらえる事ができた。

お客さんは組み立てられるかどうか不安だと言う人がほとんどだったけど、僕はその人達をなんとか説得して、プラモデルを買ってもらう事ができた。

未組立状態のプラモデルでも、売れると分かったのはかなり大きな収穫だったな。


その日は早めにおもちゃ屋から宿に帰って、明日の用事に備える事にした。

明日レイラさんからニッパーを受け取る……どんな出来のニッパーができるか、楽しみでもあり不安でもあるけど、今はとりあえずレイラさんの腕前を信じよう。

僕はそう思いつつ、明日おもちゃ屋に入荷する用のプラモデルを15個程生成した。


プラスチックマスターのスキルはたくさん使ったからか、レベルやステータスがかなり上がっているのを確認した。

でも、攻撃力とか防御力とか、今の僕にあっても仕方ない物だしな……体力は人が生きていく上で必要なステータスなので、どんな人でもレベル1の状態からある程度はあるものだと、「人体学」の本に書かれてるけど。


「とりあえず眠いし寝るか。」


その日の就寝時間はいつもよりちょっと早かった。

明日が楽しみだからワクワクして眠れないのではないかと思ったけど、僕の思惑とは関係なく身体は正直で、すぐに眠りについた……。


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