第12話
レイラさんにニッパーを作るのをお願いした後、僕は宿に帰っておもちゃ屋に入荷する為のプラモデルを作った。完成済みのプラモデルだ。
未組立状態のプラモデルは、ニッパーが無ければ作れないので、しばらくは増産する予定は無い。
そう思っていたのだけど……。
「ん?この文字は……?」
僕が9個目のプラモデルを作ろうとしたその時、スキルウインドウに文字が映し出された。
僕はその文字を読んでみたのだけど、そこに書かれていたのは……。
「未組立状態のプラモデルをタッチゲートタイプにして生成可能になりました。」
との事だった。まさかスキルが成長するなんて……スキルにレベリングは無いんだよな?と思ってステータスを確認してみるが、スキル名は変わらず「プラスチックマスター」のままだった。
このスキルが特殊な例なのか……?とも思ったが、それよりも僕はタッチゲートタイプのプラモデルを作ってみようという考えが先行し、早速それを試してみる事にする。
「作るのは……これにしよう。よし、生成!」
僕は記憶から生成を選択、その選択肢の中から、アルタリスのプラモデル、「ビーストロイド 1/35 レッドレオン」を選び、生成した。
生成はいつも通りあっという間に終わり、僕の目の前にレッドレオンの未組立状態プラモデルが現れる。
ビーストロイドとは、動物型機械生命体が活躍するTVアニメの事で、低年齢層向けのDXバージョンがホビー玩具を主戦力とするおもちゃ会社から、そして高年齢層向けのプラモデルがアルタリスから商品展開されている。
「できた……本当にタッチゲートタイプになってるのかな?」
僕はそう呟き、試しにランナーからパーツを取ってみる。すると……。
パキッ
「か……簡単に手でもぎ取れた!凄い……!」
これならニッパーが無くても、この世界の人達でも組み立てる事ができる!そう確信した僕は、早速タッチゲートタイプのプラモデルを何個か作っておもちゃ屋に持っていく。
「ゲメルさん見てください!こんな物を作ってみました!」
「なんだこりゃ……?」
僕はゲメルさんに未組立状態のダンプラを見せて、それについての説明を始める。
「これは未組立状態のプラモデルです。このランナーからパーツを外していって、組み立てるとプラモデルになるんです。いつもおもちゃ屋に置いてある感じの。」
「なるほど……でもなんか難しそうだな。一からプラモデルを組み立てるのなんて。あんな複雑な物を一から作るとなると、大変なんじゃねぇか?」
ゲメルさんの言う通り、プラモデルを作った事の無い人にプラモデルを作らせるなんて大変な事かもしれない。けど……!
「これを見てください。」
「これは……?」
僕はアイテムボックスからあるものを取り出して、それをゲメルさんに見せた。
「プラモデルの説明書です!」
「せつめいしょ……?」
「これにはプラモデルの組み立て方が載ってて、その手順通りにプラモデルを組み立てれば、誰でもプラモデルを作る事ができるんです!」
「そ、それは本当か……?」
僕がゲメルさんに見せたのは、プラモデルと一緒に作った、プラモデルの取扱説明書だ。
取扱説明書はプラスチックマスターで作れるかな?と思って試してみると、ペラペラのプラ製の取扱説明書が完成したのだった。
「一から組み立てる、それがプラモデル本来の楽しみ方なんです。僕が今まで作ってきたプラモデルは「作る」と言う過程をすっ飛ばして完成させてた物に過ぎません。ですが……本来プラモデルとは、作る楽しさと完成させる喜びを体験する為の物なんです!」
「そ、そうだったのか……でも、こんなに複雑な物作るのって時間掛かるんじゃないか?なんか大変そうだよな?」
「そ、それは……。」
確かに僕だって、プラモデルを組み立てるのが面倒な時があって積みプラをしてしまう時がある。
それにこの世界の人達はプラモデルなんて初めて見る物だろう。尚更プラモデル作りに抵抗感がある人だっているはずだ。
そう言われるだろうと思って僕は……!
「僕が作ったこの未組立状態のプラモデルは、30分で作れます!」
「な、なんだってー!?」
僕が作ってきた未組立状態のプラモデルは、BM(ビギナーズモデル)と言うシリーズのものだ。
その最大の見どころは、プラモデル初心者でも簡単に作れる点にある。
ランナーのパーツ配置は、顔パーツ、胴体パーツ、腕パーツ、脚パーツ、腰パーツ、武器パーツと部位ごとに一纏めにされており、パーツ数も少ないからサクサクと作れてしまう。
それが、ダンプラ初心者の為に作られたプラモデルの革命、BMである!
「さ、30分で作れちまうのか……!」
「はい。このプラモデル、売ってみませんか!?」
「……分かった。試しに5つ程棚に置いてみよう。」
よし!こうして僕は未組立状態のプラモデルをおもちゃ屋に仕入れる事ができた。
今日もプラモデルが売れるかどうかをお店で見守る事にしたけど、流石に店の中でずっと居座るのはマズイと思ったので、僕はゲメルさんに代わってレジで会計をしながら、プラモデルコーナーを見守る事にした。
僕は前いた世界でスーパーでバイトをしてたので、接客業の心得は理解しているつもりだ。
そうして待つ事数十分、お店にいつものお客さんとは雰囲気の違うお客さんが現れた。
その人物とは……。
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