第8話
店にリサエルさんが来て、いきなり倒れてしまうという事があった時はかなり驚いたけど、それはもう昨日の話。
僕はその日も、店に入荷する為のプラモデルを作っていたけど、ふとある事を思いついた。
「美プラはこの世界でも需要あるのだろうか……。」
美プラとは、美少女プラモデルの事である。
僕が5日かけて作ったプラモデルは全てロボットのプラモデルだ。だからマンネリを避ける為に別のプラモデルも作りたいと思った。
僕がいた世界では、プラモデルにおいてロボットプラモデルの次に需要が高かったのが美プラだ。
美プラを主戦力として売り出す会社、アルタリスの美プラがあの世界では覇権を握っていたと言っても過言では無かった。
それはそうと、美プラの小売価格はヒノモトのEMシリーズのプラモデルよりは高めの価格である。
この世界でも売れればかなり儲けられる事ができるけど……それはこの世界での美プラ需要があればの話だ。
とりあえず作ってみるか。
「プラスチックマスター!」
僕はスキルの名を唱え、スキルウインドウを開く。
そしてウインドウの「記憶から生成」を選択、さらに「物」を選択し、選択した物の一覧の中から美プラを選んで、それの生成を決定する。
すると僕の目の前に魔法陣が現れ、その中から美プラが姿を現す。
「できた……。」
完成した美プラは、アルタリスが販売する「アクトガールシリーズ」の第1弾、月原椿(つきはらつばき)だ。
装甲を身に纏う女戦士、アクトガールがライバル達と戦い互いを高め合うという設定のアクトガールシリーズ。
椿もまた堅牢な装甲に身を包む女戦士という設定だが、その装甲の隙間からチラリと覗く綺麗な肌がセクシーだ。
美プラを作る会社はいくつかあるけど、真っ先に美プラを作る技術を確立させ、美プラにおいて他の企業より1歩先に出たのはアルタリスだ。
その甲斐あってか、この椿のクオリティはかなり高い。
「とりあえずおもちゃ屋に持っていこう!」
僕はそう決意して、アイテムボックスに椿のプラモデルを入れておもちゃ屋に向かう。
おもちゃ屋に着くなり僕はゲメルさんに美プラを見せ、相談をする。
「こいつぁ……これもプラモデルなのか?」
「はい。これは青年〜大人向けのプラモデルで、美少女プラモデル、通称「美プラ」と言うんです。」
「プラモデルって子供向けのイメージがあったんだが……そういうプラモデルもあるんだな。俺は良いと思うぜ、こういうの!」
ゲメルさんは美プラを気に入ってくれたみたいだ。
「で、これはいくらぐらいで売るつもりなんだ?」
「それは……僕のいた世界では、このプラモデルの価格は高めにれていたんですけど、この世界でもそれが通用するのかと考えていて……。」
「そうか……なら俺の知り合いに値段決めてもらうのはどうだ?一般人の意見を聞いたら決めやすくなるだろ?」
「そうですね……じゃあそうします。」
「よし!そうと決まればソイツの所に行くぞ!」
そうして、美プラの値段をどれくらいにするかと悩んでいた僕は、ゲメルさんの提案で、彼の知り合いに相談をしに行く事になった。
ゲメルさん案内の元、その人がいる場所まで連れて来られたのだけど……なんだこの建物は……まるで……。
「ここだ旦那、入るぞ。」
「あっはい。」
この建物の中かぁ。僕とは無縁な世界だと思ってたけんだけどなぁ……。
そう考えながら僕はゲメルさんと一緒に建物の中に入り、カウンターでグラスを拭いている男性の前に連れていかれる。
「おいアゼット!ツラ貸せや!」
「なんだゲメルか。昼間から女口説きに来たか?残念ながら営業時間外だ。出直してきな!」
「バカ言うんじゃねぇ。俺ァ妻子持ちなんだよ!」
そんなやり取りをするゲメルさんとアゼットさん。ん?今女を口説きにって……?建物の外観でなんとなく感じてたけど、やっぱりここって……。
「この旦那がお前さんに用があるってよ。」
「こ、こんにちは。召喚者の究人です。モンスターと戦う為の戦力として召喚されたのですが、持ってるスキルが戦闘向きじゃなくて……今はこういう物を作って販売しています。」
僕はアゼットさんに自己紹介をして、アイテムボックスの中から椿のプラモデルを取り出し、それをアゼットさんに見せる。
「ほぅ……よく出来た人形じゃねぇか。」
「これはプラモデルって言って、いつもはこういうのとは違うタイプのプラモデルを売っているんですが、こういう女の子のプラモデルを売るのは初めての試みで……これを増産すれば、この世界でも売れるでしょうか?」
「うーん……売れるんじゃないか?俺だったら買うね。だっておっぱいでけぇし!」
アゼットさんは僕の質問に、笑顔でそう答える。
「だよな!このセクシーな姉ちゃんのプラモデル、ぜってぇ売れるよな!で、値段はどれぐらいだったらお前は買う?」
「そうだな……銅貨300枚。これなら買ってやっても良いぜ。」
今度はゲメルさんがアゼットさんに質問をして、それに彼に銅貨300枚なら買うと答えてくれた。
銅貨300枚か……よし、それで行こう!僕はそう決意した。
「こんな完成度の高いプラモデルが作れるなんて、お前さんは凄いな。」
「いえ、僕は前いた世界の物を模造してるだけです。その生成もスキルのお陰ですし……。」
「お客さん?今は営業時間外ですよ〜?」
僕とアゼットさんが話をしているその時、部屋の扉を開けて女性が姿を現した。
金髪にグラマラスな体型で、正直とてもセクシーだ……この人はまさかこのお店の……お嬢?的な人?なのか……?
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