第6話

お客さんに買われず売れ残ってしまったエルスガルド水泳部のプラモデル。

僕はそれをどうにかして売る為に、ゲメルさんから木の看板を借りて、そこに筆で宣伝文を書いて店の前に置いた。


「旦那、看板に何て書いたんだ?」


「それはずばり……「女性の貴方も虜になる!可愛いプラモデル販売中!」です!」


「可愛い……?あれって可愛いもんなのか?」


「そうですよ。可愛いんです!」


「俺は詳しい事は分からないが、旦那がそう言うなら……。」


僕は女性へ向けた宣伝文をあの看板に書いた事をゲメルさんに話す。

これであのプラモデルが売れると良いんだけど……と考えながら待つこと10数分。

ついに女性のお客さんが店に入ってきて、プラモデルコーナーの前で足を止めた!


「本当に女性の客が来たぞ!」


「よし!そのまま買ってくれ〜……!」


僕は女性がプラモデルを買ってくれるよう祈る……そして、その女性はグオンを手に取った。

そしてレジへと歩いてくる!よし!


「これください。」


「はいよ!銅貨50枚だよ。」


レジで会計をする女性。ゲメルさんは女性から銅貨50枚を受け取り、プラモデルを持って店を出る女性を見送る。

さらにそれから数分後には別の女性のお客さんも来て、ムイズを購入してくれた。


「やるなぁ旦那!女性の客層も取り込むプラモデルを作るなんて!これでこの店は繁盛するぞ!」


「そうですね!僕も嬉しいです!」


僕とゲメルさんはエルスガルド水泳部のプラモデルが売れた事を喜ぶ。

ダンバルのMM(モービルマシン)の見た目は多種多様だけど、どんな見た目のMMでもファンは必ずいる。

それがこの世界でも変わらないと知った僕は嬉しかった。


残るはベイゴー一体だけだ。だけど直ぐに売れるだろう。そう考えながら待ち続けた結果、店に来た女性のお客さんは……。


「はぁ……はぁ……。」


「リサエルさん……?」


リサエルさんだ……でもなんか服が汚れてるし、なんか血みたいなのも着いてる。

リサエルさんに一体何があったんだ……?ていうかあんな状態になってまでお店に来るなんて。

僕はリサエルさんが心配だったので、彼女の元に駆け寄る。


「リサエルさん!大丈夫ですか?」


「ッ……プラモデルを……買いに……来た……うっ……。」


「リサエルさん!?」


リサエルさんはプラモデルを買いに来た、そう言い残して力尽きて倒れてしまった……。

もしかしてこの人、冒険者ってやつなんじゃないかな?薬草を採取したり、モンスターを討伐する事を仕事とする、みたいな……。

兵隊みたいな鎧は付けてないから、王国の兵士ではないよな?今朝、今日は仕事があるって言ってたな……仕事って冒険者活動の事かな?


「おいおい!その嬢ちゃん大丈夫か?」


「なんか突然倒れちゃって……病院に連れていった方がいいんじゃないですか?」


「とりあえず2階の俺の家で休ませとこう。服を脱がして着替えさせてからベッドで寝かせといて、目が覚めたら風呂に入らせてくれ。俺には奥さんがいるんだ。着替えなら奥さんのを貸してやる。」


「分かりました。」


僕はゲメルさんと相談した結果、リサエルさんはおもちゃ屋の2階の、ゲメルさんが生活してる部屋で休ませる事にした。

リサエルさんの着替えはゲメルさんがしてくれた。ゲメルさん妻…奥さんいたのか…。


その後僕はリサエルさんが心配になって、ベッドで眠る彼女の隣にいる事にした。

目覚める……よな?そう簡単に人は死なないよな?ていうかこの人エルフっぽいし、エルフは生命力が強いって、アニメで言ってたし……。



私はこの日、街を出て東の方にある森の中に、コボルトの群れの討伐をしに行った。

仲間のメルジオとガロンの協力もあって、それ自体は簡単に終わったのだが……予想外の乱入者が現れた。


「グォォォォォォォ!!」


耳の奥まで劈く鋭い咆哮と共に現れるその乱入者は、上半身に銀色の体毛を纏い、頭部には角を、口部には鋭い牙を持つ、3m程の巨大な体躯の人型モンスター、シルバーオーガ。

東方の地域での呼び名がここにも伝わっており、それに習って「白銀将軍(しろがねしょうぐん)」と言う別称で呼ばれている。


「リサエルさん!ここは一旦撤退しましょう!奴は危険です!」


なんとかシルバーオーガに勝つ為に、敵の懐に浅い傷を付けるも、敵の攻撃を受け頭から血を流すメルジオは私に撤退を提案する。


「いや、君が命懸けで付けたあの傷は無駄にはしない。奴が人里に降りてくる前に、ここで倒さなくてはならない。」


「メルジオ……俺はリサエルに賭けるぞ。シルバーオーガの危険度はAランクだが、リサエルもそれよりも格上、冒険者のランクはSだ。」


「ガロンさん……。」


メルジオは、私よりも年上の冒険者のガロンの言葉を聞くと、私がシルバーオーガと戦う事を許してくれた。

そして私は敵を倒す為に駆け出す。敵は右手の大ぶりで私をなぎ倒そうとしてきたが、私はその攻撃を見切ってそれを回避し、敵の懐に入って腹の傷に剣を突き立てる。


「グォォォォォォォ!!」


「はぁぁぁぁぁ!!」


苦痛の声を上げるシルバーオーガ。その声によって耳が刺すような痛みに襲われながらも私は剣を振り抜け、敵の腹に大きな切り傷を付ける事に成功する。

その切り傷から大量の血を吹き出し、シルバーオーガは力尽きて地面に倒れ伏した。


「やった……!」


「流石リサエルだ!!」


そうして私達はシルバーオーガの討伐を成功させギルドに戻り、54匹のコボルトと1匹のシルバーオーガの死体と引き換えに報酬金を受け取り、そこでメルジオとガロンとは解散する事になった。



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