第5話

その日も僕はおもちゃ屋の中で、僕が入荷したプラモデルは売れるのかと観察する事にした。

まぁでもここはおもちゃ屋なので、周りの人達に怪しまれないような立ち振る舞いをしながらプラモデルコーナーを観察する。


「ところで店長、この世界に学校ってあるんですか?平日の昼間なのに子供が多いように見えるんですが……?」


「学校ならあるぞ?だが全ての子供が学校に行ってる訳じゃないんだ。学校の勉強は色々と知識が必要とされる仕事に就きたい子供が受けるものだからな。学校に行かない子供は家の手伝いとかして暮らしてるぞ。」


僕が気になってた事にそう返すゲメルさん。この世界には子供は学校に通わなくちゃいけない義務は無いのか。

それからしばらくプラモデルコーナーを見守る事約20分くらいの所で、子供を連れた男性がプラモデルコーナーの前で子供と一緒に足を止めた。

果たして、買うか?買わないか?


「お父さん!これ欲しい!」


6歳ぐらいの子供が父親にそう言って手に取ったのは、EM(イージーモデル)1/155 マッシャー。

鉄騎兵ダンバルのライバル機体だ。

僕のいた世界では、子供よりも大人のコアなファンに人気だったMM(モービルマシン)に目を付けるとは、あの子は将来有望だな!


「お父さんはこっちの方がカッコイイと思うんだけど、そっちで良いのか?」


子供に対して父親は、EM 1/155 ダンバルを手に取ってそちらを子供にオススメする。

お父さん……量産機やライバル機よりも、主役機の方が好きなのは分かります!でも……お子さんの好きな物も尊重してあげて……!


「僕はこれが良い!これ買って!」


よく言った少年!


「分かった、それにしよう。」


子供の熱量が父親に伝わったのか、父親は子供にマッシャーのプラモデルを買ってあげる事にした。

僕は少年が自分が好きなMMを買ってもらう事ができたのが嬉しくて、ついガッツポーズをしてしまった。


僕はプラモデルを持って店を出る親子を見送り、プラモデルが売れた事を喜ぶ。


「まずは1個売れたな。このまま14個完売すると良いんだが……。」


ゲメルさんもプラモデルが売れた事を喜んでいるみたいだ。

でもこれからだ……棚に並べたプラモデルを全て捌いて、アイテムボックスの中のプラモデルも全部店に入荷する。これが今の僕の目的だ!

あの子のお陰で、僕がいた世界のロボットの素晴らしさを分かってくれる人がこの世界にもいると分かった。きっとこの世界でもプラモデルは人気の物になるさ!


それから昼休憩を挟みつつ、その日は昼の3時まで店に居座り続けた。

僕のことを怪しむ人はいなかったのがラッキーだったな。

3時になった時点で僕はある事が、気になり、僕はそれをゲメルさんに質問した。


「ゲメルさん。学校って何時に終わるんですか?」


「確か3時ぐらいだったかな?ってもう3時じゃねぇか。」


「そうですか……じゃあ今から客が増えますね!」


「そうだな!プラモデルの残りは6個か。旦那!プラモデルの補充頼む!」


「はい!」


ゲメルさんによると、学校に通う子供達の下校時刻は昼の3時頃らしく、丁度今3時頃なので、これから客が増えると見越してゲメルさんは僕にプラモデルを棚に並べるようお願いした。

僕はアイテムボックスから8個のプラモデルを取り出して棚に並べ、ゲメルさんからその分の購入費を貰った。

今日の売上が増えて嬉しいな。そう考えているうちに店の中に何人かの子供達が現れ、彼らはプラモデルコーナーで足を止めた。


「結構子供来ますね。」


「この店はおもちゃの他にお菓子も置いてるからな。」


「なるほど……。」


店長によると、この店に置いてあるのはおもちゃだけでなく、お菓子も置いてあるらしく、それ目当てで来る客も少なくないそうだ。

まぁお菓子と言ってもあるのはガムと飴の2種類だけだとゲメルさんから聞いた。


そして、子供達が店に来てからはプラモデルが飛ぶように売れ、1時間で全てのプラモデルが完売した。


「旦那!プラモデルはまだあるんだろ?棚に並べてくれ!」


「はい!」


そうしてまた僕はプラモデルを棚に並べて、ゲメルさんから購入額をもらった。

これで今日の売上はさっきのと合わせて銅貨2500枚!やったね!


そして追加分もあっという間に売れていき、残り3個の所まで来たけど、そこでその残り3個のプラモデルは誰にも手に取られなくなってしまった。


「おかしい……プラモデルが売れなくなった……!」


「そりゃそうだろ。あのプラモデル、なんか今までの奴と毛色が違うもんな。あれは好みが分かれる見た目だろ……。」


ゲメルさんの言う通り、売れてないプラモデルは癖のある見た目が特徴のMMだ。

これは鉄騎兵ダンバルの作中の話だけど、ダンバルを操縦する主人公が所属しているのは地球の秩序を守る事を使命とする「Z同盟」で、Z同盟には敵対する組織がある。


それが宇宙コロニー独立国家「エルスガルド帝国」。エルスガルド帝国は様々な種類のMMを製造してZ同盟と戦っているんだけど……その中には、水中戦を得意とするMMの部隊「水中突撃隊」がある。

主な戦力はベイゴー、グオン、ムイズの3機。今正に売れ残っているのはこの3機だ。

僕のいた世界では「かわいい」って言われて女の人に人気……ん?


「そう言えばゲメルさん……さっきからお店に女性の客が来てないですよね?」


「そうだな。でも女性はプラモデル興味無いだろ。だっておもちゃなんだから……。」


「いえ……僕のいた世界では、プラモデルは女性にも人気だったんです!」


「な、なんだって……?」


「あのプラモデルは絶対売ります!」


そうだ、この世界で僕はプラモデルブームを巻き起こすんだ。その為にはこんな問題に困っているようじゃな。

僕はゲメルさんから木の看板を借りて、エルスガルド水泳部を売る為の手段を行使する。



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