第3話
僕はスキルによって、プラモデルを作る事ができたので、このプラモデルの素晴らしさを、僕はこの世界の人達に享受したいと思った。
プラモデルを売るとしたらおもちゃ屋しかないよね。
と言う訳で僕は宿屋から歩いて数分の所にあるおもちゃ屋に足を運んだ。1つのプラモデルを手にして。
異世界にもおもちゃ屋はあるんだなぁ……と考えつつおもちゃ屋に入ると、そこではぬいぐるみや人形など、様々なおもちゃが売られていた。
奥の方に進んでいくとレジがあり、そこに立っている中年の男性に僕は声を掛ける。
「すみません。このお店に僕の作ったこれを商品として置く事はできませんか?」
「うん……?何だこれ?」
レジの人は僕が見せたプラモデルをまじまじと見た後、僕にこう聞いてくる。
「お兄さん、この人形?はどんな素材で作られているんだ?」
「プ、プラスチックですけど……。」
「プ……プラ……?うーん……聞いた事の無い素材だ。お兄さんはそんな物を作る事ができるのか?」
「はい。僕のスキルはプラスチックマスターと言って、プラスチックを作る事が……って、プラスチックを聞いた事が無いんですか……?」
「おう。そんな物少なくともこの国にはねぇよ?」
「そうなんですね……。」
まさかこの世界にプラスチックが存在してないなんて……このスキルの名前を聞いた国王や周りの人達が困惑してた訳だ……。
じゃあ僕はこの世界で唯一、プラスチックを作れる人である訳なのか。
「とにかく珍しい素材で作られているんだろ?そんなスゲーおもちゃは見過ごす訳にはいかねぇな!」
「え……って事は……?」
「このおもちゃ、店で売ってやろうじゃねぇか!」
「……あ、ありがとうございます店員さん!」
「店員じゃねぇ店主だ。ゲメルと呼べ!」
「はい、ゲメルさん。僕は夏児究人です。よろしくお願いします!」
「おう!キュートの旦那!」
そうして僕はゲメルさんの許可を得て、ゲメルさんのおもちゃ屋にプラモデルを置いてもらう事になった。
プラモデルはお店の出入口のすぐ近くの棚に置かれ、ゲメルさんは僕が教えた商品名が記載された木製プレートをプラモデルの足元に置いた。
僕はお店の中にしばらくい続け、プラモデルが売れるかどうかを見守っていたが、その最中にゲメルさんがある提案を僕に持ちかけてくる。
「なぁ、キュートの旦那はこのプラモデル……?って奴を量産する事はできるのか?」
「はい。スキルがあればいけると思います。」
「ならよぉ、これからもこの店にプラモデルを入荷してくれねぇか?」
「良いんですか……?」
「まぁあくまで、あれが売れればの話だがな。」
「分かりました。その時はよろ……」
「おい旦那!」
「え?」
僕とゲメルさんが話をしている時、ゲメルさんがあれを見ろと言わんばかりにプラモデルが置いてある所を指さす。
一体どうしたのかと思ってそちらを見てみると……。
女性がプラモデルを見ている!なんか物々しい服装の女性だけど……ていうか耳が……耳が長い!あれってエルフっていう人なのでは?
そういうのもいる世界なんだ……。
「買うだろうか、あの嬢ちゃん……。」
「買ってくれるといいんですが……。」
僕は女性がプラモデルを手に取るかどうかを息を飲んで見守った。
そう言えば金額を確認してなかったな……ここからじゃ遠くて何て書いてるかよく見えないし。ゲメルさんおいくらぐらいに設定したんだろう。
そう考えている内に女性がプラモデルを手に取って……!
「あ……プラモデルを手に取ったぞ!そしてレジに向かってくる!」
「そ、そうですね……!」
エルフの女性がプラモデルを手に取ってレジに向かってくる!
分かっちゃうか〜異世界人にもプラモデルの良さが〜!嬉しいな〜!
「これをくれ。」
「はいよ!金額16枚だ!」
っておいー!!
「ちょっと!?プラモデル1個で金額16枚!?おかしくないですか!?」
「いやでもよぉ、珍しい素材で作られてるんだろ?これ……。」
「プラモデルはですね?特にこのEMシリーズは、子供でも買えるお手頃価格なのが魅力なんですよ!お小遣いの少ない子供達の為に、低価格で売らなくちゃ……!」
「そうなのか……じゃあ嬢ちゃん、特別価格で銅貨50枚で売ってやる!」
「この世界の子供のお小遣いは銅貨50枚ぐらいなんですか?」
「まぁ平均的な金額はそれぐらいだと思うぞ。」
「それなら……。」
僕はゲメルさんを説得し、なんとか銅貨50枚まで金額を落とす事ができた。しかし……。
「いや、金貨16枚で良い。この商品にはそれだけ出す価値がある。」
「え……良いのかい嬢ちゃん?」
「あぁ。世の中良い物を買うには相応の金額が必要なものなのだからな。」
この人金持ちなのかな?金貨16枚って相当いい値段のはずなのに……。
「嬢ちゃんがそう言うなら仕方ないんだが……どうする旦那?」
「じゃあ……金貨16枚で売ります。でも次は安く売るので、貴方もお金は派手に使いすぎないようにしてくださいね。」
説教しちゃった……異世界にわかの僕が異世界人に説教しちゃったよ。
怒ってはいなさそうだから良かったけど。
「ありがとう。では金貨16枚だ。受け取ってくれ。」
「ま、毎度あり!」
そうして僕とゲメルさんは、EMダンバルを金貨16枚で買ったエルフの女性を見送って、稼いだ金貨はゲメルさん8枚、僕8枚で2等分しようとしたのだけど……僕はあの人に興味を持ってしまった。
「待ってください!」
「……?」
気がついたら僕はおもちゃ屋を出て、エルフの女性を呼び止めていた。
なんと言えばいいのかは考えていない。けど取り敢えず、僕は彼女に言うべきことを口から発した。
「その……あのプラモデルを、価値のある物だと言ってくれて、嬉しかったです!作った甲斐がありました!」
「作った……?君がこれを……?」
女性は買ったプラモデルを手に取ってそう呟く。
「はい。スキルでそれを作って…… !!」
僕がそう言いかけた時、女性が僕の方に近づいてきた。な、何なんだ……?
「金ならいくらでもやる。だから……この人形をもっと作ってくれ!」
「……はい?」
「私はこの人形の、親しみやすさとカッコ良さを併せ持つ顔に惹かれた。この人形……とても良い!だから……この人形をもっと作ってくれ!」
そんなにプラモデルが好きになったのか……ここまで褒められるとは思っていなかったから、なんか嬉しいな……。
「分かりました。1つ作る度に魔力を消費するので、1日に作れる量は限られますが、増産でき次第お店に並べていきます!価格もさっき言った通り、安くしておきますので、楽しみにしててください!」
「そうか……ありがとう。名乗るのが遅れたな。私はリサエル・ハピニスだ。見ての通りエルフだ。この国の北にある「エルフの里」と言うエルフが棲む村から来た。冒険者をやっている。宜しく頼む。」
「僕は夏児究人です。異世界から召喚された召喚者です。よろしくお願いします!」
僕はリサエルさんにプラモデルをこれからも作り続ける事を誓い、自己紹介をした後、僕はリサエルさんを見送った。
プラモデルを好きになってくれる人がこの世界にもいて良かった……。
そうと分かればやってやろうじゃないか…!僕が作るプラモデルで、この世界にプラモデルブームを起こすんだ!
こんな事僕がいた世界でやったらダメだけど、異世界だからこそできる事だよな…プラモデルの楽しさを色んな人に分かって欲しい、その為に僕はこれからプラモデルを作り続ける事を決意するのだった。
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