第2話

異世界に召喚されて、モンスター退治に駆り出されるはずだった僕は、謎のスキルによって戦力外通告され、王宮を追い出される事になった。

2人の兵士が僕を外まで案内してくれて、僕は王宮の外に出た。王宮や周りの建物の外観がまさに異世界って感じだなー。


「いやーキュート殿、良いスキルを持ってなくて残念だったっスねー!でも人生何があるか分からないから、諦めちゃダメっスよ?」


「おいよせ……悪いなキュート殿。コイツ最近兵士になったばかりの新人なもんで……。」


僕の事を励ます(?)若い兵士。それと僕に謝る一緒に着いて来た髭を生やした兵士。

この世界の人の倫理観ってどんな感じなんだろう。

この人達は人柄は良さそうだけど、あまり悪い人には出会いたくないな。


「宿屋への行き方は分かるか?」


「はい。ヘイス国王様にこの街、中央都市アルデッサの地図を貰ったので。」


「そうか。気をつけて行けよ!」


「はい!」


「さよならっス〜!」


そうして僕は2人の兵士に別れを告げた後、ヘイス国王様から貰ったこの街、中央都市アルデッサの地図を頼りに宿屋へと向かった。

モンスターとの戦いはちょっと自信が無かったから、戦闘スキルを持っていなかったのは幸いとも言えるかもしれないけど、僕の持つプラスチックマスターは一体どんなスキルなんだろう……。


そう考えながら歩いている内に、僕は3階建ての宿屋に到着した。

ここが目的地だ……早速中に入ろう。

そう決意し、僕は宿の扉を開ける。中には宿屋の主がおり、僕の事はヘイス国王様の通信魔術で聞いてると、すぐに部屋に案内してくれた。


「ふぅ……。」


いきなりの異世界。おまけに1文無し。

でも1ヶ月間は無料でこの宿屋で泊まれると宿屋の主は言っていた。

それまでに、1ヶ月後に宿屋を追い出されても大丈夫なようにしないと。

その為にも自分のスキルの使い方をちゃんと理解しておかなくちゃな。


ヘイス国王様によると、この世界では「ステータス」と唱えると自分の身体値や、使えるスキル、魔術などを確認できるらしい。

でも他人のステータスを覗き見る事はできないから、人のスキルを見る時は鑑定具を使うそうだ。


「ステータス。」


他の部屋に声が聞こえないかと僕は心配したが、この世界では人がステータスを開くのは日常茶飯事なのだろう、おかしな事では無いのだろうと信じてそう唱えた。

すると僕の目の前にウインドウ的なものが現れる。

そこにステータスが記載されていて、僕のステータスは……。


夏児究人


レベル 1

筋力 7

耐久 4

俊敏 6

体力 21

魔力 43


スキル プラスチックマスター

魔術 無し


こんなものか……。文字は日本語で表示されてるけど、これもヘイス国王様の翻訳魔法のお陰なのだろう。

さっき宿屋の主から借りた「人体学」と言う本と照らし合わせてステータスを確認してみると、魔力以外はレベル1としては妥当な数字で、魔力はレベル1にしては多い方らしい。


あと、本には魔術とスキルの違いも載ってて、「努力すれば誰でも使えるようになるもの」が魔術で、「資質を持つ物が先天的に身に付けているもの」がスキルだそうだ。


体力は傷を負う事に、魔力は魔術、スキルの使用で消費する事に減っていき、0に近づくにつれて生体活動が困難になっていき、体力が0になったら意識を失い、そこから一定時間内に傷の手当や回復魔術などで回復をしなければ死んでしまうらしい。

魔力が0になった場合は24時間以内に魔力補給をしなければ死んでしまうと書かれている。


この本によると、「召喚者は天からの恩恵によって並の人間の5倍の数値のステータスを持って召喚される例がほとんどを占める」らしい。

でもステータスが5倍どころか普通の僕って一体……。

僕はプラスチックマスターの詳細は分からないのかと思い、プラスチックマスターの文字をタップしてみる。

すると望み通り、スキルの詳細が画面に映し出された。


プラスチックマスター

プラスチックを好きな形で生み出す事ができる。

一から生成する事と、記憶から生成する事が可能。


なるほど。プラ製の物を作れるって事で良いのかな?一から生成ってのは分かるけど、記憶から生成……?

一体どういう事だろう……まぁ試してみれば分かるか!スキルを使うには、スキル名を言うんだって王宮で教えてもらったな。


「プラスチックマスター!」


僕がそう唱えると、目の前にまたウインドウが現れ、そこには2つの文字が写されていた。

「1から生成」と「記憶から生成」の2つだ。

僕は気になっていた「記憶から生成」をタップしてみる。するとウインドウに僕が今まで見た物、人、動物、植物、様々な物が映し出される。

人や物など、何種類かに区分されているな。

1番端の方にある「閲覧注意(センシティブ)」「閲覧注意(グロテスク)」「閲覧注意(精神的苦痛)」の欄が気になるけど……なんか怖いから開かないようにしよう。


とにかく何か作ってみよう!何を作るかはもう決めている。僕が大好きなプラモデルだ!

そう考えながら、「物」をタップし、さらにその中からプラモデルを選び、画像をタップする。


1/155 EM ダンバル を生成しますか?

はい いいえ


画像を選ぶと画面にこのような文字が映し出されたので、僕ははいを選択する。

するとプラスチックマスターの画面が消え、代わりに宙に魔法陣が浮かび上がり、その中に段々と見慣れた姿のプラモデルが生成されていく。

これは……思い出すなぁ、子供の頃おばあちゃんに買ってもらった日の事を……。

そしてプラモデルの生成が完了すると、小さな画面が現れ、そこに「生成が完了しました。」と映し出される。


1/155 EM(イージーモデル) ダンバル……40年以上続く人気ロボットアニメ、

鉄騎兵ダンバルの主役機、ダンバルだ。

この異世界で、僕の目の前にダンバルが……プラモデルがある!こんなに嬉しい事は無い……!

ていうか……なんか合わせ目も無いし、シールでの色分けだった場所がプラによって色分けされている?


EMは初心者向けプラモデルだけど、出たのは2000年代初頭だからプラでの色分けは簡易的だし、合わせ目もガッツリ出る仕様だったけど……なんでこんな完璧に近い状態で生成されたんだ?

プラスチックマスターの力なのか……?こんな事もできるなんて、凄いなプラスチックマスター!


このスキルを上手く使ってお金を設ける事はできないだろうか……このプラモデルを売れば、良い金儲けになるのでは?

そうと決まったら……!

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