12. 友達
「セドリド、いつになったら手紙書くんだ?」
「うるさいなぁ、静かにしててよ」
グドのわざとらしい溜息が、僕が筆を執るのを鈍らせる。
配属されて一週間、僕はフィールに向けて送る手紙の内容をいまだに迷っていた。
彼女を心配させたくないために、嘘にまみれたものにするのか。
それとも全てを打ち明けるべきか。
「よし!」
悩んでも仕方ないと、僕は勢いに任せて一気に書き切った。
やっぱり僕は、彼女に嘘をつくことにした。彼女を不安にさせることだけは避けたかった。
「おっ、書けたのか。どれどれ……。ハッハッハ! いいねぇ、流石出会って数分で結ばれたことだけはあるな!」
手紙を強引に取り上げたグドは、盛大に高笑いした。
フィールとの出会いをつい話してしまったのだが、今更になって後悔する。
「うるさいなぁ! グドだって僕と初めて会った時、英雄なんて言葉使ってたじゃないか!」
「ば、ばかっ! それは忘れろって言っただろ!」
僕がグドと出会ったのは、配属された初日だった。
僕たちの部隊は、各々の部族の問題児たちが集められていた。
僕みたいに掟を破って追放された人たちばかりで、思いの外打ち解けるのは早かった。
終いには、どんな掟を破ったかの自慢大会まで開催された。
僕はそれ以外に、人間の妻がいることや、彼女との意外な出会いまで話してしまった。
グドはというと、自分の番になったら僕のことを急に指差して、お前は俺の英雄だ! なんて抜かしていた。ちょっぴりお酒も飲んでいたようだった。
その後も、グドは饒舌に語り始める。
グドには、僕と同じように人間の恋人がいるらしい。グドの部族も他種族との結婚が禁止されていて、あくまで恋人の関係で止まっていた。
だから、部族から追放されても結婚することを優先した僕を一応尊敬しているらしい。毎日からかってくるけどね。
けれど不思議と嫌な気持ちにはならなかった。むしろ心地いいぐらい。
僕は初めて友達と呼べる存在を見つけたのかもしれない。
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