13. 絶望

「今日は、二人か……」


 グドの暗くどんよりとした声調は、軍事テントの中によく響いた。


 昨日、何事もなく一緒に食事をとって、自分の部族のことを楽しそうに罵る戦友は、今日にはもうどこにもいない。


 明日は自分の番だ。そう意識すると、あまりの恐怖に気が狂いそうになる。


 いつしか僕は、本当のことを手紙に書きたくなっていた。


 嘘偽りを並べただけの明るい調子で書く手紙は、吐き気がするほどの苦痛だった。


 僕の苦痛を、ありのままの現状を、フィールにも知ってほしかった。あの日のように、静かに僕を抱きしめて欲しかった。


 それを実行しないのは、それがどうしようもなく無意味な行為だからだ。


 彼女からの返しの手紙は来ない。僕が愚痴ったところで、それは彼女を不安にさせるだけなのは明白だった。


「今日も、二人死んだよ。明日は、僕の番かもしれない。ねぇ、フィールは今何を思ってるの? 僕は、僕は……」


 白百合の花畠に向かって、僕は独り言ちる。


 少しでも苦痛を和らげようと、この絶景を彼女に投影して、手紙に隠した本音をここで晒すようになった。


 どれだけ僕が訊いても、目の前の白百合の妖精は答えてくれない。


 ただその身を風に任せて、ゆらゆらと揺れているだけだった。


 たくさんの白百合の中から数本摘み取って、手紙と共に彼女に送る。赤い糸に導かれて、僕の手元から瞬時に消えていく。


 徴兵前に抱いていた希望とか意欲とかは、とっくに僕の掌の上から零れ落ちていた。

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