1話 手紙④
2限の講義は西村と一緒だ。
だいたい、いつも教室の後ろに2人で座りくだらない話をしながら講義を受ける。そして気がついたら講義が終わってるというのがいつもの流れだ。
「なあ、今日って学校終わったらなにしてる?」
いつもの調子で西村が話しかけてくる。
「今日はバイトもないし家でゆっくりするかな。」
「お、なら学校終わったら映画でも見に行かないか?」
「映画?なんの?」
「これと言ってみたいやつとかないけどなんか面白そうなの見ようぜ。」
「まぁ、暇だしいいよ。その代わりドリンクは奢りな?」
「はあ?まあいいけどな」
こうして学校が終わってから予定が決まった。正直、最近バイトを入れすぎてるから家でゆっくり休みたいのもあったがせっかくの誘いを断るのもなと思い行くことにした。
「美沙希ちゃんも誘うか?」
「なんでだよ。」
「俺得だからだよ。」
「誘うか。」
「だよなー、ま、2人で行くか」
「おい、そこ私語はやめなさい。」
教授から指摘を受け、西村と知らんふりをしてやり過ごした。
「腹減ったからこの後食堂行くぞ。」
小声で西村が呟く。
それを頷きだけで応答し講義に集中することにした。
2限の時間が終了し西村と食堂へ向かう。
食堂は昼時ということもあって学生で賑わっていた。
ちょうど食べ終わった学生の席に荷物を置いて抑えて食券売り場に並ぶ。
「伊月は何にする?」
「唐揚げ丼かな。」
「リッチだなー」
「お腹空いてるからな。」
学食の唐揚げ丼は学食の中で1番高い750円だ。バイトしてお金に余裕があるためそんなに気にしないが学生からしたら高いのかもしれない。
「俺はカレーかなー。」
「俺もバイトいれないとかつかつだ。」
「映画見れんのかよ。」
「それは別だから大丈夫だよ。」
お互い食べたいものを頼み席に着く。
「で、なんの映画見るんだよ。」
「そうだなー恋愛系とか?」
「なんでお前と見ないと行けないんだよ。気持ち悪りい。」
「じゃあ、アクション系か?」
「んー無難に最近話題になってる奴でよくないか?」
「あーあれか。あれでいいか。」
そんな話をしていると番号が呼ばれて食事をとりに行く。
ようやく食事にありつけた頃には13時を過ぎていた。
「唐揚げ一個くれ。」
羨ましそうな顔をみたら断れず唐揚げをあげた。
「サンキュー」
「おう。」
久しぶりに学食の唐揚げ丼を食べたが美味しい。
唐揚げ丼も残り2割くらいのところで後ろから声がした。
「先輩。」
嫌な予感がした。
後ろを振り返るとそこには櫻井がいた。
「どうした?」
「あのーお願いがありまして。」
すごく申し訳なさそうな顔で櫻井が言う。
「お願い?」
「本当に申し訳ないのですが今日のシフト変わってもらえないですか?」
「今日サークルの飲み会だったの忘れてて、どうしても断るとあとでめんどくさいくて」
「申し訳ないけど、今日俺も予定があって難しいかも。」
「行ってやれよ。」
「俺は別に今日じゃないといけないわけじゃないしさ」
「いいのか?」
「行ってやれ」
「ほんとに大丈夫ですか?」
「西村がいいなら代わっても大丈夫だけど」
「ありがとうございます。お礼必ずします。」
そう言うと軽くお辞儀をすると友達のところへ戻って行った。
「かっこつけんなよ。」
「つけてないわ。」
「でも、本当に良かったのか?」
「全然いいよ。お礼って俺ももらえるのかな?」
「さあな。」
「でも、サークルの飲み会とか大丈夫か?確かテニサーだったろ」
「大丈夫だよ。ガチなほうのテニスサークルだから」
「ガチな方?」
「知らないのか?うちの大学の女子テニスサークルはインカレでも上位に入る実力があって櫻井はそこの期待の新人ってわけだよ。」
「よく知ってるなー」
「まあな」
あんだけバイト中にサークルの愚痴だのなんだの聞いてればいやでもわかる。
「とりあえず、バイト頑張れよ。」
「仕方ないか。」
「ぼちぼち行くか。」
2人で食堂を、後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます