1話 手紙②
目的地に着いたのは22時45分過ぎのことだ。
場所は最寄り駅の違くのいかにも地元の居酒屋という感じの居酒屋だ。
扉を開け中に入ると忘年会で騒ぐサラリーマンのお客さんでごった返していた。
テーブルに通されるとそこに先についていた西村がいた。
「おう!お疲れ!意外に早かったな。俺は先に一杯もらってるから」
そう言うと生ビールのジャッキを一気に飲み干した。
西村とは大学一年からの付き合いでこうしてサシで呑んでも気を遣わなくてもいい友人の一人だ。
席についてドリンクを頼む。
「今日バイト美沙希ちゃんと一緒だったのか?」
「ああ、そうだけど、なんかあったか?」
「なんか、あったか?じゃねぇよ羨ましすぎるだろ。」
苦笑いするしかない。だからここに櫻井を連れてきたくなかったのだ。
「大学で一二を争う美少女の美沙希ちゃんと働けるなんて幸せなことだぞ!」
「ならお前もうちのバイト先で働けよ。」
「そういう問題じゃねぇんだよ。」
西村は不機嫌そうに言う。
「そもそも何でお前なんかに美女が寄ってくんだよ。顔か?顔なのか?」
「酔ってるのか?」
「酔ってないわ!」
お酒のペースが早い。酔われてめんどくさくなる前に話を切り替えた。
「で、何で急に飲もうなんて言ったんだよ。」
「それはもちろん優奈ちゃんのことだよ。」
「お前も風の噂か?」
西村は意味がよくわからないと言う顔をして続けた。
「風の噂かどうかは知らないけど俺らの学年ではもうその話でもちきりなんだぞ。」
「俺って有名人なのか?」
「お前はともかく優奈ちゃんは有名だろ。大学の中では一番美人って言われてるんだからな。」
「あ、俺は美沙希ちゃん推しだけど?」
確かに優奈と別れてから周りの目が俺に向いていたのはわかっていた。
「なんで、別れたんだよ。あんないい子」
「それは、、」
理由を言いかけたがここで言うべきではないと思った。
「価値観の違いだよ。」
「は、価値観の違い?なんだそれ、価値観なんて違って当たり前だろ」
「こっちにも色々あるんだよ。」
「大学一の美女と別れる理由が色々ってなんだよ。」
「とにかく終わった話だから。」
「わかったよ。お前がそういうならそれでいいけどこれから大変だぞ。」
「なにがだよ。」
「その感じだとお前は少し痛い目見たほうがいいな。」
満面の笑みで西村が言う。
この言葉の意味が後になってよくわかることになるとは思いもしなかった。
この後はくだらない西村の話を聞いて時間が過ぎていった。だいたいは櫻井のことだ。
西村と解散した頃には終電はとっくに終わっていて歩いて帰る頃には1時を過ぎていた。
家につきポストを確認すると封筒のようなものが入っていた。家の中に入り、封筒を見ると母からだった。
「実家に成人式の案内状が届いていました。確認して返答お願いします。」と言う内容だ。
「成人式か。」
もうそんな年になったのかと思うのか。そんなことを思いながらあの頃を思う。
思いにふけっていると眠さもあり招待状を机に置くとベットに横になった。
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